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Dimensional Vibrator -Transcendencer-   作者: 小礒岳人
―Savage Land―
6/9

6

リミッター解除をしたギアにより身体能力が8倍になった猛也は、目前の男に猛然と立ち向かう…!

しかし…

2019年10月下旬 深夜


虎ノ門五丁目 廃ビル5階



リミッターを解除した猛也のギアは稼動時間があと60秒を切っていた。


猛也「クソっ…! 何でっ当たらねぇっ…!」


この身体能力が8倍になった今でも当たらないとはどういうことか、理解が出来なかった。


そう、当たらないのだ。


ガードされるでもなく、当たらない。


全て躱されるか、受け流されている。


猛也「チクッ…! ショぉッ!」


右ストレートを目前で軽やかに躱され、その余りの不条理さに怒り任せの大振りな左ハイキックを繰り出す。


黒い影がバック転でそれを躱しつつ距離を取る。


その避ける際に猛也のハイキックが頭部のフードを掠めるだけだった。


猛也「ッ! クソぉっ…!」


猛也が大声で叫ぶ。


??「…それじゃあ、当たらねーな」


その姿に、黒い影は着地しながら口を開いた。


猛也「なにィ…?!」


その余裕の在る口調が、猛也を更に苛立たせた。


蹴りが掠めたフードは大きく破け、そこから覗く顔は長い前髪で眼が覆われ、薄らと無精髭を生やしている。


その風貌から、目前のソイツは三十代を過ぎている男であろうという判断しか出来なかった。


猛也「オペレーター! データ照合しろ! コイツ(この男)は何モンだ!?」


"人"であれば何かしらのデータが在るハズ。


こんな異常な存在は何処かに情報がある。


そう思っていた。


麻妃『データ照合しても該当者無し! 対象不明!』


だが、その期待は裏切られる。


猛也「そんなバカな事があるか! 一般人にあんな…!オイ!アレはなんだ…!」


データが無い事に怒りと驚きが隠せなかったが、それ以上に驚いたのは、破けたコートの腕部分に()()()()()が見えた事だった。


麻妃『データにはありませんが、あなた方の装着しているギアのテストタイプに酷似しています』


冷静な麻妃の声がギアのスピーカーから流れると、猛也のHUDにその情報が転送され、-DVG-01 Videx Black-の表示とスペックが画面左右に現れる。


猛也「なんだと…?! じゃあ…ずっとリミッターを外しているっていうのか…!」


半ば八つ当たりに近い口調で問い返す。


そうでなければ多重次元に衝撃を逃している自分に、こんなダメージを与えられるハズがない。


??「…違うなぁ…」


麻妃『いえ! 違います! 対象からは高出力の多重次元震動は感じられません!』


帰ってきた言葉は無慈悲だった。


猛也「な…?!」


その言葉に驚きを隠せず、絶句してしまう。


??「スタンバイ、リンケージ」


AI『レディ』


その音声は外部出力なのか、猛也にも聞こえた。


??「…マーク」


黒い影の男が音声コマンドを述べると、両腕、両足、胴体を覆っているギアと身体が一体化する。


??「ギア(コイツ)を使うのはこれからだ」


これだけの事をギアの恩恵無しで行っていたというのか?


その驚きが、猛也に焦りを生ませた。


―オレはどうしたらいい?―


この状況で手持ちの武器が無くなり、猛也は精神的に追い詰められ、動揺する。


情けなくも後退りしてしまっていた。


猛也「有り得ない…!」


??「と、思うよな フツーは ま、()()()()()…」


最後の言葉は物悲しさが籠もっている様に受け取れた。


マーカス『その対象は絶対に抑えるんだ…! 捕縛しなければならないッ でなければこの技術が漏洩する!』


割って入ったマーカスの通信で、思い返す。


そうだ、逃げては被害が拡がる…自分を認めさせるチャンスも無くなってしまう…逃げるのだけはダメだ…! あんな惨めな思いは、もうしたくない…! そう…!


猛也「人を助ければ、認めて貰える…ッ!」


その思いが言葉となって口から溢れる。


??「…」


だが、そんな事にお構いなしで、黒い影の男は猛然と猛也に襲いかかった。


一歩を踏み出したかと思うと瞬時に正面に現れ、右の拳で思い切り左の顔面を殴りつけられた。


猛也「?!くぁっ!!?」


首がもげるかと思う程の衝撃を与えられ、体勢が崩れる。


続け様に左の掌打が顎に入り、上体が上がって無防備になった胴体に右の掌打をモロに食らってしまう。


猛也「ぐぁあっ!! ちゃんと痛ぇじゃねぇかよぉッ!!」


余りの衝撃で吹き飛びながら、猛也はリミッターを解除しているのにも関わらず痛みを感じる事の理不尽さに、思わず叫んでしまっていた。


数メートル吹き飛ばされたか、起き上がろうと傍にあるコンクリートに手を付いて起き上がろうとしたところ、急に身体が痛みと共に言う事を聞かなくなり、膝を床に着いてしまう。


猛也「え? ?!!…な?!」


??「時間切れだ…」


そう黒い影の男が述べる。


まさかと思って猛也がHUDの表示を見ると、リミッター時間が2秒過ぎてしまっていた。


このままでは身体が多重次元震動に晒され、体組織がバラバラに分解され、次元の狭間に消えてしまう。


??「"リミッターリリース"を解除しろ それがお前のためだ」


その言葉はとても優しいものだった。


気遣いの籠もった、優しい言葉。


猛也「ッ…くっそッ…!!」


だが、その言葉は、猛也には哀れみにしか感じられなかった。


それ程にまで、猛也は追い詰められていた。


ギアのリミッターコントロールを行いながらも。


肩で息をしながら四つん這いで倒れ込むと、ギアが一部強制解放され、余剰エネルギーが熱としてギア解放した各部から噴き出す。


??「…聞いていた以上に我が強ぇな… 昔のオレみてぇだ ま、ここまでじゃなかった…かな?」


まじまじと確認しながら男が猛也に近付く。


猛也「何…?!」


勝った人間からの哀れみに感じ、怒りに任せて聞き返す。


だが、帰ってきた言葉は、冷静だった。


??「お前…何のためにこんなことしてる…? 命懸けで」


猛也「な…? 何のため…?」


黒い影の男の問いには以外にも哀れみが無かったため、逆に頓狂な声で聞き返してしまった。


男は猛也の側まで来て屈み込んで問う。


??「上に立って他人を見下すためか?」


いや、違う。


猛也「! 違う…!」


??「じゃ、何故そんなに仲間を蔑ろにする? そこに倒れてる女だってお前の仲間だろ?」


仲間…そうだ。アドヴェルサリィを斃すっていう目的が一致している()()()()()()()。仲間。


猛也「そう…だ!」


??「んじゃなんで冷たくする?」


なんだその質問は。競争なんだから当然だろ。一番になったらなんでも許容して貰えるんだから。命懸けで人助けをすれば認めて貰えるから競争してるんだ!


猛也「競い合ってるんだから当然だろ…!」


??「競う? 誰とだ」


決まってるだろそんなのオレの一番を脅かすヤツ。


猛也「アイツとだっ…!」


そう言って猛也は首を正美の方に振る。


??「ふーん…お前がしたいのは競争なのか」


キッパリと断定した口調で述べる。


猛也「そ…!」


なんでそうなる! そうじゃない!人助けでオレが一番になるんだ!その為の競争なんだ!


??「そうだろ? それにな、オレが聞いてるのはお前がしたいのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?って聞いてんだよ」


猛也「え…?」


??「何故人を助けたい? どうして人を助けるとはいえ、こんな危険な仕事を選んだ?」


何故…? それは…父親や母親みたいな人間にならないために…誰かの気持ちを解って上げるために…自分みたいな辛い人間の気持ちを解るために…だから強く…認められる為には…その地位に就かなきゃ行けなくて…その為には人を蹴落とさなきゃ上がれなくて…それで…それで?


アレ…?


なんで戦ってるんだっけ…?


こんな痛い、恐い、辛い思いをして…


ダメだ。思考がまとまらない。


その困惑の気配を悟ったのか、黒い影の男が述べる。


??「それが、お前の答えだ… お前のやるべき事はなんだ?」


ゆっくりと猛也の傍に顔を寄せる。


??「真実を教えてやる」


そう言って、耳元で囁き始めた。


猛也「!…な…?!!」


その言葉(真実)を聴き、驚愕する。


だが、


マーカス『その男は敵だ! 耳を貸すな赤守猛也! DVG技術漏洩を防ぐためにも、絶対に逃がしてはならない! 転用される訳にはいかないんだ!』


マーカスの声がヘッドギアのスピーカーから聞こえてくる。。


猛也「ウソだッ…!」


我に返った猛也は右腕を思い切り振るい、黒い影の男を払いのける。


だが、男は軽やかに身を退き、当たらなかった。


??「…それが全てだ」


真剣且つ、重々しい口調で男は猛也に告げた。


マーカス『キミに最終コマンドを伝える それを入力するんだ』


麻妃『え?! なんですかそれは…?! カタログスペックにはそんな機能…!』


そのマーカスの予想外の言葉、流石に冷静な麻妃でも知らされていない機能はフォロー出来ない。


そのため、焦りと共に聞き返してしまう。


マーカス『これはギアを次の段階に進めるために必要な性能だったんだ…! だが、まだテストが完璧ではない…この実戦の後でテストしていく予定だったんだ…! だが、ここで君達ギア装着者が死んでは元も子もないんだ…! 一か八かの賭けだがッ…! 構わないかね?! 赤守猛也!』


その熱が籠もった言葉に、猛也は応える。


猛也「当然でしょう…! 隊長…! コマンドを!」


マーカス『解った…! 済まない…キミにぶっつけ本番でこんな事を頼んで…!』


猛也「良いですよ…!」


気遣って貰えて、その言葉を貰って…猛也は満足していた。


こうやって他人に尊重して、認めて貰える事が…


マーカス『ではコマンドを伝える!"スタンバイ、イクシードモード"だ!』


猛也「! 了解! "スタンバイ、イクシードモード"!」


AI『レディ』


AIのその音声と共にHUDに"Standby, Exceed mode READY?"と浮かぶ。


??「よせッ…」


その黒い影の男の制止も聞かず、猛也は続ける。


猛也「マァァァク!」


"Approval"の文字と共に、全身のコンダクションオービットが多重次元震動エネルギーを過剰に流出させ続け、その膨大な量のエネルギーが光として眩く発光する。


??「止めたのにな…」


黒い影の男の空しさを孕んだその言葉も、空しく夜空の闇に消えた。


それと同時に蓄積された物理エネルギーが猛也を中心として放射状に放出され、自分達のいる5階より上が、光と共に大きな衝撃となって、吹き飛んだ。

発動したイクシードモードは猛也に何を起こさせるのか…

猛也の視た世界は―

猛也の超越した―能力とは―

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