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Dimensional Vibrator -Transcendencer-   作者: 小礒岳人
―Savage Land―
5/9

5

上階に登ってきた二人―

だが、チームワークは全く無かった…

其処には…

2019年10月下旬 深夜


虎ノ門五丁目 廃ビル4―5階階段



この階に上がってくるまで然程時間も掛からず、余裕で登ってくることが出来た。この調子でいけば、良いテスト結果も残せる。またコレ(DVギア)を着て活躍出来る。


階段上の柱に身を隠しながらもそう考えると、猛也の笑みは止まらなかった。


正美「…」


しかし、それに振り回されている正美にはたまったものではない。


猛也の"大物狙い、見せ場は自分、困らなければサポートは不要、雑魚や打ち漏らしは正美"という構図が出来上がっており、それが最高に不愉快だった。


さっきの階では、『オイ、コレと同じのはさっきオレが戦ったから、コイツ等はお前が処理しろ』と言って全て押し付けてきたのだ。


しかも他の階ではVガンの性能チェックが出来るぐらいに半端に敵を寄越したり、止めを刺さずに自分に任せるから、殊更質が悪かった。


猛也「オイ、早く来い この階はヤツ等が大量だ お前も戦って良いぞ」


その心労を知りもせずに相変わらずの上から発言に辟易していた。


正美「解ってる…!」


苛立ちながらもHUDの表示を見て現状を確認しつつ、猛也の後方から階段を上る。


確かにこの階からはアドヴェルサリィの数が今までとは段違いで多い。


フロア内に二十体以上の多重次元震動反応と共に赤い敵勢マーカーが表示されている。


猛也「行くぞ 斬り漏らしたヤツはお前が処理しろよ」


そう言ってDブレードを構えると、(にわか)にアドヴェルサリィ達に向かっていった。


正美「あーッ! もーッ!」


その唐突な唯我独尊行為に辟易しながらも、もうどうにでもなれという半ば投げ遣りな状態で、正美も階段から走り出し、斬り漏らし達にVガンを放っていく。



同刻 フリングホルニ内



麻妃「! …上階のアドヴェルサリィが消滅していっています! この反応…!」


急な警告音と共に、少し焦った麻妃がマーカスに告げる。


マーカス「何? もう少し詳しく状況報告を」


麻妃「あ、…上階8階のアドヴェルサリィはほぼ消滅しました…!」


マーカス「なんだって…?」


その言葉には、冷静であるマーカスも多少の驚きが籠もっていた。


マーカス「それは自然的に消滅したのか? それとも何者かの手によってか?」


マーカスが身を乗り出して、周囲に浮かぶモニターに目を向ける。


麻妃「いえ…! 違います…!」


そう言って、麻妃は複数のモニターからの情報をまとめている。


次元震動兵装が無ければ、BBDは基本ダメージを与えられない。

それなのに消滅までさせるとなると、只事ではない。

技術漏洩、産業スパイだとしても大問題だ。

世界のパワーバランスが変わってしまう。

それどころか、表にこの化物共の情報が出てしまう。

それは絶対に避けなければならない。


マーカス「対象は絶対に捕獲するんだ」


語気を強く述べるが、麻妃は続ける。


麻妃「これは…! モニターに反映させます」


そう言うと、7階の敵勢表示が消えていく中に、5階の猛也達二人の青とは別の、新たなオレンジ色のアイコンが現れる。


ドローン三体を同時に操りながら、得られた情報を構築する麻妃のデータは、細かく立体映像に反映された。


マーカス「これは…!」


珍しく、マーカスが驚きの声を上げる。



同刻 廃ビル5階



猛也「まだまだいるな…! だけど、こんなモンか?! もっと来いよ!」


そう言って、猛也は両手を左右に拡げながらアドヴェルサリィ達に問う。


答えは勿論無い。


だが、そんなことは気にもしない。


これなら負ける事も無く勝てる。


自分が出来るっていうところを見せられる!


自分の価値を否定した家族と決別出来る!


自分を否応なく認めさせられる場が出来るんだ…!


その意識が猛也を高揚させ、挑発めいた言葉を吐くに至っていた。


だが、


猛也「足りねぇよ…! もっと歯応え無いのかよ!? なァ!」


(いささ)か高揚が過ぎたのか、まるで勝ち過ぎたゲームの様に強い相手を求め始めた。


正美「! バカッ…! そんな事言ってッ…!」


猛也「五月蠅いッ! 黙って…!」


そう正美が諭す様に発した言葉を猛也が遮って振り向いた途端、


麻妃『気を付けて下さい! 上階から何者かが来ます!』


麻妃の通信がギアのスピーカーから聞こえると同時に、正美の上の天井が音を立てて崩れ落ちた。


猛也「なッ?!」


何が起きたか解らず、両手で一瞬顔を守る形で覆ってしまう。


正美「えっ…」


急に何が起きたのか混乱した正美は、どうして良いか解らなくなった。


それが正美の記憶している最後の瞬間だった。


穴から落ちてきた()()()に急激な衝撃を与えられ吹き飛ばされた正美は、その後方にあったコンクリートの柱を粉々にしながら転倒し、起き上がる事は無かった。


猛也「なっ…! 志良川…ッ! おい! アイツは…!」


麻妃『無事です…! ライフデータでは問題ありません! 失神しているだけです!』


猛也が正美の方向を向いて麻妃に問おうとした事を、被せ気味に麻妃が答える。


猛也「そうか…チッ!」


取り敢えず死んではいない事に安堵し、その降りてきた黒い影に目線を戻す。


全身黒いコートに覆われ、人型である以外定かではない。


何者なのか…


そんな思惑を巡らせる暇も無く、その黒い影は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


猛也「?!何ッ…!?」


接近を知らせるアラートメッセージがHUDに表示されたと認識した瞬間だった。


驚きの言葉を口にしたと同時に殴られた衝撃を後ろに吹き飛んで衝撃を逃し、回転しつつ着地、体勢を整えながら黒い影のいる前方を向いた途端、左頬に右膝蹴りを食らった。


猛也「うごぉっ…!」


途轍もない衝撃で顎を揺さ振られる。


HUDにくらった衝撃から算出された身体データを、コンディションイエローの表記で知らせてくる。


ギアを着けていなかったら一発で首がもげる程の衝撃。


続けてその黒い影は猛也の両肩を掴むと、そのまま自分だけ上方向に飛び上がり、自分を軸に回転し、着地と同時に遠心力で自分を投げ飛ばした。


猛也「なにィィィっ…!? 」


激しい衝撃を背部に感じた。


猛也「ぐぉッ!!?」


それは、コンクリートの柱に背中が思い切りぶつかり、肺から空気が漏れた声だった。


()()()()()()()()()()


この、オーバーテクノロジー満載で身体能力を四倍にも高めるギアを纏っている自分を痛めつけるだなんて、常識的に有り得ない。非常識だ。なんだコイツは?


そんな思考が、猛也を支配していた。


だが、そんな疑問とは関係無く、黒い影は続け様地面に落ちる前の猛也に右拳のショートアッパーで胸部を打ち上げ、浮いたところを左フックで追撃していた


猛也「げぁっ…!」


右脇腹に激しい衝撃と痛みを受け吹き飛ばされた。


猛也「こんッ…の!」


そんな疑問よりも、圧倒的な力を有する自分が殴られ続けた事への怒りで、猛也は反撃を試みる。


右手のDブレードの刃を出すと、更に追撃をしようと突っ込んで来る黒い影に、引き付けてからブレードを思い切り振り下ろした。


この距離、この速さなら確実に当たる!


そう思った猛也は絶対の勝利を確信した。


だが、その刃を黒い影は右腕で受け流す様に弾いたのだ。


猛也「?!バカなッ…!?」


そう言うのと、猛也の顎に掌打が入るのは同じタイミングだった。


猛也「げゃッ?!」


よく解らない叫び声と共に吹き飛ばされ、猛也の心は絶望感に飲まれ始めていた。


この時点で猛也の武器は、もう一つしか残っていなかった。


ここまでが、赤守猛也がこの世界に人としていた頃のあらまし。


リミッターを解除した猛也の身体能力は凄まじいものがあった―

だが…

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