油揚げ始めました
俺は前世が日本人ってだけで、ワノ国とは無関係だ。でも、このいたたまれなさは何でしょうか?
「こちらが皆様に泊まって頂くお宿になります」
案内役のお侍さんが、どや顔で紹介してくれたけど、皆の……特に女性陣のテンションはだだ下がり。
木造平屋、土間あり。トイレはぼっとん便所で灯りは鯨油を使った行燈。これでも庶民が泊まれる最高ランクの宿屋なんだと思う。
そして周囲の目がきつい。客だけでなく従業員までもが、好奇や軽蔑の目で俺達を見ている。
ワノ国は江戸時代と同じく鎖国状態らしい。外国人ってだけでも珍しいのに、狸人以外の獣人もいる。
何より一番の問題は……。
「ジョージ、気付いているか?」
ボルフ先生が小声で話し掛けてきた。顔は笑っているけど、完全に警戒モードに入っている。
「ええ、変装して俺達を監視している人達がいます」
いわゆる隠密ってやつだろう。宿泊客に扮した奴等が俺達を盗み見している。
生侍に続いて、生忍者を見てしまった。
(この宿にしたのは、身分だけじゃなく監視の為か)
ワノ国は階級社会だ。江戸時代と同じで身分で泊まれる宿屋が違う。
俺達は国賓だから、強引に高級宿にねじ込む事も出来る筈。
でも、それだと変装が限られる。何より侍が国賓を監視するのは、信用問題に関わる。
しかし、一般客なら別。庶民は俺達を特別視するから、そこに紛れこめば監視もばれにくい。
「ああ、それに北の方から嫌な気配を感じる。ここはアウトだ」
ボルフ先生の視線の先にあるのは神社。
書かれた名前は鬼封神社……思いっきり敵地じゃん。ワノ国の役人は、俺が漢字を読める事を知らない。
凜も読めるけど、寒源が鬼と通じている事を知らない。だから、こんなあからさまな事をしたんだと思う。
「ご案内、ありがとうございます。一度、船に戻って誰が泊まるか等は、後から連絡しますね……凪さん、参考にしたいので食糧を買える店に案内してくれませんか?」
まあ、適当な理由をつけて断るんですけどね。
「分かりました……間者の質も大違いですね」
凪さんの溜息に隠密の皆様の顔色が変わる。一方、こちら組は全身素知らぬ顔。
そして、ここから俺の夢を叶える時間だ。
(今回の任務に野菜のチェックは必須……そのついでに日本刀を買うんだ)
修学旅行で木刀を買った人間としては、真剣に興味がある。ゲームにはコテツやマサムネが出て来たから、隠れた名刀がある筈。
◇
売っていた野菜 ねぎ、大根、ゴボウ、蓮根等……江戸時代と一緒で漬物に使える野菜が多い感じだ。
そして刀は売ってもらえませんでした。やはり、お侍じゃないと無理らしい。
そして全員フライングシップに帰還。俺がオリゾンの住環境を上げまくった所為で、元盗賊のユリアまで『あれはきついっす』と拒否したのだ。
「野菜は何種類か苗を献上……問題は鬼ですね。凛、鬼封神社って、どんな由来があるんだ?」
名前から察する事は出来るけど、確認は大切だ。
「昔、悪鬼を封じたと言われております……ワノ国の者が申し訳ないでござる」
ワノ国にあからさまな対応にしょげ返る凛……ドンガ、俺は責めているんじゃないから、睨むのは止めましょう。
「木を隠すなら森じゃねえけど、鬼を封じた神社に鬼を匿うってか」
この問題は、どこまで首を突っ込むべきか……鬼の強さが分からないから、あまり深入りはしたくないんだけど。
「ジョージ、ドヤ顔しているけど、使い方が違うぞ。それで、何を知っているんだ?」
谷君、同じ日本人だからって、チェックが厳しくないか?何となくで通じれば良いじゃん。
「キンウロコ様に遠視の術を使ってもらったら、寒源が鬼とお話をしている所が見えたんだよ。鬼に暴れさせて現政権の信用を無くする。それを自分が解決してってシナリオなんだと思うぞ」
証拠がないから将軍にチクれないけど、寒源は警戒しておくのが安全だ。
「あの宿に俺達を案内したのも、わざとって訳か」
六魔枢と戦った事で、俺達はかなりパワーアップしている。だから、ボルフ先生はあっさりと鬼の敵意に気付いた訳で。
「国賓に何かあれば現政権……今回で言えば風太郎さんの責任になりますからね。上手くいけば、次の将軍は自分がなれるって考えですね」
かなり甘い考えだけど、持ち上げられている事に慣れてしまうと周りが見なくなる。
「だから、海の上で待機されたんですか?」
海上待機は、相手側に失礼になるからサンダ先生には怪訝な顔をされた。でも、陸上で襲われたら逃げ場がないのだ。
「それもありますが、今回の結婚に妖狐が反対しているって話を聞きました。本当なら、何かのアクションがあると思いますし……凪さん、何か心当たりはありますか?」
多分、妖狐は飛べる筈。人目の少ない海上にいたら、これ幸いと何がしかの動きを見せる筈。
「妖狐は人心の乱れを好みます。もし、ジョージ様のお話が本当なら、風太郎様派と寒源様派に二分され、大乱になる恐れがあります。それが狙いかと」
話が大きすぎませんか?熊への嫉妬辺りだったら良かったのに……故郷からシキュウカエレって電報来ないかな?
「い、今のは、あくまで俺の予測です。きっと何もないですよ……多分」
無理だっ!一つしくじったら、大乱の原因になるじゃねえか。歴史の教科書に載りたくない。
「全員、警戒態勢をとれ。こいつの巻き込まれ体質を考えたら、十中八九、妖狐が動く。ジョージ、お前は策を練れ」
ボルフ先生の言葉に全員が頷く。俺って、そんなに信用ないの?
もう策は練ってますけど、その為には出来るだけ早く妖狐に動いて欲しいんだよな。
「油揚げでもあれば、確実に妖狐を釣れるんですけどね」
出来たら今晩にでも食いついて欲しいって言ったら、ボルフ先生がニヤリと笑った。
「妖狐を釣る為の油揚げなら、ここにいるじゃねえか。ジョージ、お前囮として甲板で寝ろ」
僕、身体弱いから風邪ひかないかな?なんで、公爵になっても囮しなきゃ駄目なんだよ!
「風邪ひきますって!俺、ひ弱なお坊ちゃまなんですよ」
僕、貴族の跡取り息子なんだもん。ひ弱なお坊ちゃまで間違いない。
「誰が、ひ弱なお坊ちゃまだ?お前にはシャイニングボディがあるし、風邪をひいたら医者がいる。それにお前くらい面の皮が厚けりゃ、、風邪の方が逃げていくよ」
ねえ、誰か俺の味方いないの?せめて面の皮の厚さを否定しようよ。
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