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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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139/200

ドンガと凛

いよいよ三巻発売です。少し短いですが、発売なので更新しました

エディさんは城で様子を見る事になった。平民だけど重要人物だし、なによりヘゥーボの叔父さんである。賓客としてもてなそうと思う。有名人のエディさんにボーブルを口コミでも良いから宣伝して欲しいとか、観光パンフレットに載せる紹介文を書いて欲しいとかこすい想いも多少あるけど。

 ボーブルに着いたのは丁度夕暮れ時で、城が真っ赤に染まっていた。


「それじゃ俺はフライングシップを港に移動させるから、後は頼んだぞ」

 フライングシップを操縦出来るのは、俺と谷だけだ。エディさんに何かあった時に医者(たに)がいなかったら笑えない。


「にった、にった、おっきお船。のりたい、のりたい」

可愛らしい声がしたので、振り向くとドンガが弟達を連れて散歩に来ていた。フライングシップに乗りたいと騒いでいるのは、今年三歳になる末弟ボンガ君。まだ背も小さくて、まるで動くぬいぐるみのようだ。ボンガ君は人懐っこい性格をしており、ボーブル城のアイドルである。


「ボンガ、駄目だよ。あのお船はジョージ様の大事な船なんだよ」

 ドンガは大きい身体を縮めて、必死にボンガ君をあやす。それを見守る兵士やホームキーパーの部門の職員の顔はとろとろに蕩けきっている。録画してユーチュ○ブにアップしたら、再生数が凄い数になるだろう。


「ドンガ、港まで乗ってかないか?帰りはゴーレム車が迎えに来てくれるし……ボンガ君、りょうちゅ様のおひざにのろうね」

 ホームキーパー部門の職員は、ジョージ様だけずるいと顔で訴えている。なんとでも言うが良い。今の気分は車庫に向かう電車の運転手である。オールウエイズ、ボーブルの夕陽だ。


「ボンガちゃん、ジョージは運転をしなきゃいけないから、おばちゃんと助手席に座りましょうね」

 至高の癒しタイムをさらっていったのは、マイマザー。母さんはボンガ君を抱き上げると、優しく微笑んでいる。

 運転中、膝に乗せるのは確かに危ない。仕方ない。後から思う存分、モフらせてもらおう。


「ドンガ、乗れよ。他にも乗りたい人がいたらどうぞ」

 どうぞと言っても、時間的には早番の職員しか乗れない。


「まっか、まっか、お空まっか」

 真っ赤に染まった空を見てボンガ君がはしゃぐ。フライングシップの操縦席の窓は結構大きいのだ。


「ボンガ、暴れたらカトリーヌ様にご迷惑になるだよ」

 ドンガにとって母さんは雲上人だ。その人の膝の上で弟がジタバタしていたら、気が気でないと思う……ドンガ、良く見てみろ。母さんの顔はこれでもかって、くらいに蕩けているぞ。


「ボンガ君、海に降りるよ……大型船が来てるな……何か、珍しい物を積んでないかな?」

 ワノ国を経由した船なら、俺好みの物も積んでいると思う。個人的には渋い湯呑み茶碗が欲しい。

 着水して港に近付くと、叫び声が聞こえてきた。


「か、返すでござる。それは母様の形見の櫛なのです」

 見ると武士の恰好をした少女がガラの悪い商人を相手に騒いでいる……武士の恰好って、鑑定しなくても風継凛じゃん。ここで形見の櫛を取られたら、絶対にボーブルに嫌な印象を持たれてしまう。


「お前の持っている物で値が付きそうなのは、これしかないんだよ。金がないとどこにも泊まれないし、なにも食えない……そっちの怖い顔をしてる姉ちゃん、外人がここで暴れたら国外退去だぜ」

 港が発展したのは良いけど、急成長した所為か怪しい商人も紛れ込んでいるらしい。規制強化はあまり好きじゃないけど、そろそろ罰則を厳しくしなくては……許可さえもらえれば、ある程度自由に商売が出来るのが、人気の理由だったから絶対に不満が出るよな。


「ドンガ、頼めるか?俺もフライングシップを停泊させたら合流する」

 今、フライングシップに乗っているの中で、一番頼りになるのはドンガだ。

 

「ジョージ様、任せるだよ。まずはフライングシップを港に近づけて欲しいだ」

 凛の近くまでフライングシップを近づけると、ドンガが甲板から飛び降りた。手に持っているのは、備え付けのオール。ドンガの身長は既に2mを超えている。 

2mを超えるつぶらな瞳のクマが、ガラの悪い商人に近付いていく。


「おい、熊公の癖に商売の邪魔をするつもりか?俺はボーブルの領主ジョージ様から認可を受けて商売をしてるんだぜ」

 俺を巻き込むんじゃない。何より君とは初対面だ。


(鑑定っと……マジかよ)

 鑑定結果・ボッタ・クリーヌ カッパー伯爵家御用商人クリーヌ商会三男 営業許可なし(偽造)

 ……凛には悪いが、ある意味感謝だ。許可証を偽造した商人が見つかったとなれば、規制を強化しても文句はでない。不満はクリーヌ商会かカッパー伯爵家に向けられる。


「そのジョージ様が、お前を止めろと言っただよ。大人しく捕まるだ」

 ドンガ、ナイスフォロー。ご褒美に蜂蜜をあげよう。


「ちっ……お前ら、俺を守れ」

 ……主(エロ)と同じリアクションかよ。ボッタを守るようにして数人の男が飛び出してきた。


「衛兵はまだ来ないか……母さん、ボンガ君を頼みます」

 シフトレバーをPに入れて、フライングシップを港に停泊させる。そして、甲板から港に飛び移った。


「遅いだよっ!」

 同時にドンガがオールを一閃させて男達を吹き飛ばす……ドンガ君、怪我なくて良かったよね。でも、空気も読んで欲しいな。

 ……いや、俺の出番はこれからだ。水〇黄門で言えばドンガはかく〇ん。ここでは俺は有名人。顔が印籠代わりってやつだ。


「さて、俺が発行したっていう許可証を見せてもらえますか。ドンガ、二人を守れ」

 美味しい所は俺が持って行く……美味しい所と書いておっさんと読むけど。


「でかい態度に地味顔にソバカス……まさかジョージ様?」

 うん、本当に顔(ソバカス)が印籠代わりになった。言っておく、俺がデカい態度を取れるのは、ごく一部の人だけだ。


「ああ、ジョージだ。港の平和を乱した覚悟は出来てるだろうな。許可証偽造の罪は重いぞ」

 地味顔か……谷やアインみたいなイケメンが増えて、ますます俺の地味さが際立っているんだよな。


 ここでボッタを倒せれば恰好良いんだろうけど、ボーブルの優秀な衛兵が駆けつけてきて逮捕してくれました。

ちなみにボッタの取り調べは母さんの個人的権限でオデットさんが担当する事になった。衛兵が全員ボッタに同情したのは言うまでもない。


「危ない所を助けて頂きありがとうございました。私はワノ国から来た水守凪と申します。お陰様で主が怪我をせずに済みました」

 水守凪は癒し系の和風美女である。性格は一言で言うと大和撫子。ミューエさんは女性人気が高かったけど、凪は男性人気が高かった。ちなみに俺は一歩後ろを着いて来て何でも受け入れてくれる大和撫子より、一緒に隣を歩いてくれておかしいと思ったらガンガン突っ込んでくれる女性が好きだ。

 もろにカリナなんだよな。


「いえ、こちらこそ危ない目に遭わせてしまい、申し訳ございません。お詫びにうちの城にお泊りになっていただけますか?」

 おじさん、ナイスアシストです。凪はドンガのような可愛い男の子が好きなんだと思う。


「ジ、ジョージ様、あの子さっきからこっちを睨んでいるだよ。おで、何かしただか?」

 ドンガが指さした方を見ると凛がドンガをじっと見ている。


「く、くまが喋ったでござる。しかも二本足で歩いているでござるよ……物の怪でござるか?」

 ワノ国に住んでいるのは、猿人と狸人だけだ。そして海外旅行に行ける獣人なんて殆んどいないから、凛は熊人を初めて見たのかも知れない。人語をしゃべるデカいくまがオールを持って突っ込んでくれば、びっくりするよな。


「ジョージ様、モノノケってなんだ?まだ、見てるだよー?ボンガを連れて帰ってもいいだか?」

 そりゃ、見えるさ。クマが喋ってるんだもん……しゃーない。嫌われるか。

 自分の無知を棚に上げて、助けたもらった礼を言えないとか言えば凛は謝るはず。そうしたら俺が嫌われても、ドンガが凛を嫌う事はないだろう。優しい領主様は、自分を犠牲にして配下の恋にアシストするのだ。


「凛様、凪は情けのうございます。おりぞんには色んな人が住んでいると、お教えしたではございませんか。私達を助けてくれたのは熊人の方です。この様な恥ずかしい真似をされては殿様に申し訳がたちません。凪は自分の首を切り落とし、熊人の方に捧げて許しを乞います」

 大和撫子、過激過ぎないか?誤解を解けば良いだけじゃん。


「ジ、ジョージ様、あの人怖いだよ」

 ドンガは凪に怯えまくっている。それと俺も怖いっす。


「凪、拙者が謝るから。熊殿に謝るから止めて欲しいでござる」

 領主(おれ)も血生臭いのは勘弁でござる。


「本当ですか?熊人の方と握手して仲直りしてくれますか?」

 こいつ狸だ。凛は男性と話すのも苦手な純情少女だ。見た目がクマなドンガを利用して苦手意識を克服させる気だ。


「ジョージ様、おでは堪忍して欲しいだ」

 しかし、ドンガの方に苦手意識が芽生えてしまったらしい。


「大丈夫、握手するだけだって」


「さ、さっきはありがとうでござる。お、お陰で助かったでござるよ」

 凛は恥ずかしいらしく、顔を真っ赤にしながらドンガと握手をした。それを見たドンガの顔も赤くなる……そうだ、ドンガを凛の世話役に任命しよう。


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― 新着の感想 ―
もし、このボッタ・クリーヌの一件もエロ・カッパーの仕業だとしたら、カッパー子爵家のその後が想像できますね。 悪足掻きすればするほど裏目に出て、どんどん評判が悪くなり、没落の一途をたどった可能性が高そう…
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