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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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うまい話には気をつけましょう

長らくお待たせいたしました。本業やラノベオフ会の関係で更新が滞っていました

エディさんに加えて凛、凪の主従も城で面倒を見る事になった。上手くいけば風属性のヒロインを自陣に加える事が出来るのだ。


(闇のユリア・水のアニエス・風の凛の三人が味方になれば心強いな)

 奇しくも俺と対立している光のマリーナ・火のヴァネッサ・土のベルの反対属性のヒロインなのだ。

これで魔王戦も安心である……って待てよ。凛を味方に加えた事が、他の貴族に知れたらまずい。

貴族の嫉妬は怖い。自分より豪華な宝石を手に入れたり、美人の妾を持ったりした奴をあからさまに敵対視する貴族も少なくない。

何故なら貴族にとって見栄や名声は、力のバロメータなのだ。俺の悪評が広まったのも、婚約者がマリーナだから悔しいと言うのが大きかった。

日本で言えば人気アイドルの婚約者が金持ちの息子(フツメン)で、アイドルは相手を嫌っている。そんな感じなのだ。

ユリアは勇者の子孫として認知されていないし、アニエスと谷の関係はまだ表沙汰になっていない。

しかし、凛はまずい。いざこざの所為で、すっかり忘れていたが凛の取り扱いは要注意なのだ。

それに下手したら光(マリーナ)を捨てて、風(りん)を手に入れたって噂が立つかも知れないのだ。

アコーギ家の先祖モブと椿のエピソードを社交界では知っている人は一定数いると思う。そして勇者の血を加える事が、アコーギ家の悲願である事も……今回は偶然に偶然が重なって、凛を庇護する事が出来た。

でも、これが嫉妬に狂った貴族の手に掛かると、凛を手に入れる算段が立ったから、マリーナとの婚約を破棄したとなってしまうのだ。

だからと言って、凛を放逐するのも悪手だ。ピラニアがいる水槽に血の滴る生肉を放り込むのと変わらない。勇者の血を欲する貴族や商人が、一斉に群がるだろう……久し振りに、胃が痛いっす。


◇


 今回、一番まずいのは凛やエディさんに嫌われるパターンだ。二人に共通しているのは、民を苦しめる権力者を嫌うという事だ。

俺が部下や民から慕われる事をアピールするには、ボーブルの現状を知ってもらうのが一番である。それには色んな人が集う社食が適している。

社食の料理は美味いので、全員の胃袋も掴めるはず。特に和食に飢えている凛主従には効果絶大だと思う。


「これがボーブル城自慢の社食になります。皆さん、好きな物を注文して下さい」

 社食は色んな人種が利用している。ここでの俺に対するみんなの態度を見たら嫌われる事はないと思う。

(そういや社食に来るの久し振りだな)

 最近はカリナのご飯を食べる事が多いので、社食を使う回数が減っているのだ。

 その所為か、社食が少しざわついた。


「ジョージ様だ。ジョージ様が社食に来られたぞ……とうとうカリナちゃんに、愛想をつかされたか」

「だからもう少し積極的になって下さいと、ご忠告したのに」

 ざわついた理由はそっちかい!確かにいつまでも気持ちを伝えない俺にも問題があると思うけど、領主(おれ)は一応恋愛経験者なんだぞ……確かにもてはしないけど。


「な、凪凄いでござるよ。お米があるでござる。焼き魚もあるでござる」

 新しい潮流が見つかったとはいえ、長い船旅で米を口にしていなかったのだろう。凛さん大興奮です。凛さんは、和定食を注文してくれました。今日の和定食はサバの味噌煮に玉子焼きが付きます。


「凛様、焼き魚の他にお刺身もございますよ。しかも味噌汁も付いてくるそうです」

 凪さんが注文してくれたのは、日替り刺身定食。ちなみに今日はイカの刺身です。


「色んな人種が同じテーブルで食事を楽しんでおるとは、珍しい光景じゃな……エルフや若い女子が集まっている所には何があるのじゃ?」

 流石はエディさん、いい所に気付いてくれました。


「サラダとフルーツのビュッフェですよ。色んな種類があるので楽しんで下さいね……私は所用があるので退席します」

 日本から持ち帰った野菜や果物は味が良く大好評なのだ。ちなみにオリゾンでバイキングが通じなかった。


「ジョージ殿は噂通り忙しいお方じゃの。とても伯爵家の嫡男とは思えん……そんな所もモブ殿に似てるがの」

 見た目でだけじゃなく、ワーカーホリックもご先祖(モブ)様似とは。少し離れた場所で、皿が落ちる音が聞こえた……気になるが今はそれどころじゃない。


◇


毎度おなじみ臨時会議です。今日はサンダ先生、ボルフ先生、ギリルさん、谷の四人に参加してもらっている。


「フライングシップを戻しに行ったと思ったら、風継の人間を連れてくるとはな。どんだけ面倒事を持ち込むんだよ。風継関係は利権が複雑なんだぞ。しかもブレイブ・アイデックの暗部まで明かすとはね」

 ボルフ先生はそう言うと深い溜め息をついた。胃だけじゃなく、耳も痛いです。

 凛の祖先椿がワノ国に帰った為、風継関連の利権はフリーになったのだ。

椿の名前を付ければ商品が飛ぶように売れると言う事で、一時期は商人達が好き放題に使いまくったらしい。コップや皿等の日用品からツバキパンやカゼツグクッキーなんてのも売られたそうだ。

 流石にまずいって事で、今は登録制になっている。その管理だけで、食っている人もいるからまずいのだ。

 凛が“こんなのはご先祖様と関係ないでござる”なんて言った日には、ちょっとしたパニックになってしまう。


「ここはアランに見つからず、ジョージ様が保護出来た事を喜ぶべきかと。あの色ボケは凛様をジョージ様の婚約者に据えるのはまだましな方で、カトリーヌ様と離縁して凛様を自分の妻に迎える可能性もある」

 ギリルさんは相変わらずアランの事を嫌っていた。特に大切な女性(クレアさん)が出来てから拍車が掛かった気がする……ユリアの正体はいつ告げよう。


「とりあえず、凛主従もエディさんも相性が良そうな人を担当にしておきました」

凛主従の接待担当はホームキーパー部門の職員にお願いした。ちなみにエディさんの接待は城で働いているエルフにお願いしてある。


「あの二人組、随分米に感激していたらしいぞ。しかし三百年経っても、勇者の威光が通じるんだな……とりあえず、アニエスにはブレイブ・アイデックのスキルは内緒にしておくぞ」

 おっ、谷君アニエスと呼び捨てにしましたね。おじさん、ブーメランを装備しちゃうよ。

……よっし、今がチャンスだ。


「日本の米の味が上がったのは、昭和四十年代からって話だからな。故郷の米よりうまくて驚いたんだろ。凛もユリアと同じく、勇者の子孫って事は秘密にしといた方が良いですよね」

 この中でユリアの正体を知らないのはギリルさんだけだ。忠臣のギリルさんなら他のみんなが頷けば、スルーしてくれるはず。


「……ジョージ様、今なんとおっしゃいました。ユリアが勇者の血を引いているですと……きちんと説明して頂けますか?」

 そうは問屋(ギリルさん)が卸してくれなかった。とりあえず、俺が知っている知識を伝える。


「これはユリア自身も知らない事ですから。下手に噂が広まったら、ナイテックがユリアの命を狙ってくる危険性があります。何よりアイン君に引け目を感じさせたくないですし」

 久し振りに言い訳スキル発動です。ポイントはあくまでユリアの事を思って秘密にしておいたって所。さらにアイン君を絡める事で、効果は絶大だと思う。


「ご配慮感謝致します……しかし、当家に闇と風が集まりましたか……魔王が復活したら他家と軋轢が生じますね。ジョージ様、どこまでお伝えになるのですか?」

 どこまで……つまり爺ちゃんやイジワール卿に言うかって事だと思う。


「とりあえず、ホートー様にはお伝えしようかと……それとエディさんからブレイブ・アイデックの最後に関する話を教えてもらえました。魔王城が消滅した後、王を初めとする男性陣の前にピュリアが現れたそうです。ピュリアは泣きながらブレイブ・アイデックの装備を地に置き“魔王シャグランは倒したよ”そう呟いたそうです。そしてブレイブの安否を聞かれると、頭(かぶり)を振りながら消えたそうですよ」

 その場にエディさんもいたって言うから、間違いなく事実だと思う。装備品だけでシャグランの魔石はなかったそうだ。


「って事は王族が緘口令を敷いたって事か。全くアサシン時代には、こんなやばい秘密に関わるなんて思ってもいなかったぜ」

 うん、確かに危険な内容です。外に漏らしたら死刑台に一直線です。


「なんで王族が緘口令を敷いたんだ?」

 谷はまだ政治に携わって、日が浅いから気付かないのだろう。


「表向きは妊娠中のヒロインにショックを与えない為さ。本音はブレイブ・アイデックの生存をあやふやにして他国を牽制したかったんだろ。その頃一番信じられていたのは、ブレイブ・アイデックは真の魔王を倒しに魔族の国に行ったって話らしいぞ」

 最初に聞いた時は、ゲームの裏ボスかよと思ったけど、多分王族が意図的に流したんだと思う。


「……待て。誰か来る」

 さすがは元アサシンのボルフ先生、誰か近づいて来たのは察知したらしい。 

 そしてドアがノックされた。

 

「凪でございます。無礼を承知でジョージ様にお願いをしに参りました」

 なんだろう。嫌な予感しかしない。


「ど、どうぞ」

 俺の返事を確認した後、凪さんが部屋に入って来た。その顔は真剣そのもの。


「ジョージ様にお願いがございます。私を側室にして下さいませぬか?なんでも致しますから……その代わり凛様には手を出さないでもらえますか?」

 ただでさえ面倒なのに、さらに厄介な展開になった。凪さん、まともだと思ってたのに。


「あ、安心して下さい。凪さんが側室にならなくても、凛様には指一本触れませんので」

 こういうのは、はっきり断る事が大事だと思う。


「なっ、私では不満だと申しますか?確かに夜伽の経験はありませんが、尽くす方なんですよ」

 なんだろう。俺って第一印象が、そんなに悪いのかな。なんで信じてくれないんだ。


「凪さん、ジョージ様には好きな女の子がいるんですよ。十五歳の獅子人です。ロリじゃなかったジョージ様は、その子を大切にしたいので、他の女性に手を出さないんです。ジョージ様は、ただのロリコンじゃないので安心して下さい」

 谷君、君は援護射撃のつもりかもしれないけど、直撃しまくりだよ。まあ、凪はロリコンがなんだか分からないと思うから、安心だ。


「そうなのですか?実は凛様はモブ様の子孫に謝りに来られたのです。許してもらう為なら、嫁いでも構わないと殿様から言われております」

 おかしい……凛ほどの少女なら、国内の有力大名に嫁がせた方が得なのに。どうやら、凛がオリゾンに来たのも、何か裏があるのかも知れない。


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