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『オーレリア戦記』  作者: りあと
『オーレリア戦記』帝国歴303年
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第62章『狂王と王国の終焉』

ラシル軍の精鋭とともに城内に踏み込んだムジンは、血と煙に満ちた廊下を通り、まっすぐに王城の最上階

――ギジル王が座す玉座の間を目指した。

城内は地獄絵図であった。逃げ惑う側近たち、財宝を抱えて走り回る宮廷の従者たち、そして絶望のあまり

自ら命を絶つ将校たち。かつて凄絶な武威を誇った宮廷の威厳は微塵もなく、そこにあるのは無残な崩壊の光

景だけであった。

重厚な玉座の間の扉を蹴り開けた時、そこに広がる光景にムジンは息を呑んだ。

広い玉座の間には、数えるほどのおもねる側近しか残っていなかった。その中央、黄金の飾りが施された高

楼の玉座に、金杯を手にしたギジル王が深く腰を沈めていた。

「おお、来たか……。我が精鋭たちよ、ラシルを打ち滅ぼした報告か? それとも帝国軍を跳ね返した勝鬨

か?」

ギジル王の瞳は焦点を結ばず、酒の匂いと狂気に混じり合った異様な光を放っていた。目の前に立っている

のが、自国を攻め滅ぼしに来た敵将ムジン・ユシンであることすら、正しく認識できていないようであった。

「……ギジル王よ」

私は剣の柄に手をかけ、冷ややかに呼びかけた。

「我が名はムジン・ユシン。ラシル王国軍総司令官である。貴国の前線は崩壊し、黄山原のクラーク将軍も

討ち死にした。ビガンテ城は完全に落城したのだ」

「何をたわけたことを!」

ギジル王は突然立ち上がり、金杯を床に投げつけた。甲高い音が静まり返った玉座の間に響き渡る。

「我がダラーンは不滅だ! 我が武力は絶対だ! ソージュもスライロも、皆わしの偉大さが分からぬから排

したのだ! 誰か、誰かこの不遜な敵を斬り捨てよ!」

王が叫ぶが、周りに佇む側近たちはガタガタと震えるばかりで、誰一人として剣を抜こうとはしなかった。


◇

その時、背後の扉が開き、静かな足音が聞こえた。

黒い甲冑を纏い、威厳に満ちた佇まいで現れたのは、オーレリア帝国の親王、イリアードであった。殿

下は冷ややかな眼差しでギジル王を見つめると、静かに首を振った。

「哀れだな、ギジル王。お前がその狂気と猜疑心で国を苛む間、お前の臣下クラークは、妻子を殺してまで

お前のために誇りを守ろうと戦い、泥の中で果てたのだぞ」

「クラーク……? あやつもわしを裏切ったのか! なぜわしを救いに来ぬ!」

ギジル王の狂乱した叫びが空しく響く。

イリアードはムジンに視線の焦点を送った。

「ムジン・ユシン殿。この男の処分は、長年苦しめられてきたラシル王国に委ねよう。だが、国を滅ぼした

のは我が連合軍の剣ではなく、この王自身の狂気だ」

私は深く頷き、静かに命じた。

「ギジル王を拘束せよ。ラシルの民の前に引き出し、その罪を問う」

兵士たちが押し寄せ、狂叫するギジル王を取り押さえた。かつて半島の覇権を握りかけたダラーン王国は、

この瞬間、完全にその歴史の幕を閉じたのである。

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