↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『オーレリア戦記』  作者: りあと
『オーレリア戦記』帝国歴303年
57/287

第61章『ビガンテ城包囲戦と王都の混乱』

ビガンテ城を包囲した連合軍の陣営は、まさに壮観の一言に尽きた。

北と東の陸路を埋め尽くすのは、オーレリア帝国の洗練された鉄騎兵と重装歩兵の群れ。南の海沿いには帝

国の巨大な軍船が合流し、黒々とした船体を連ねている。そして西側には、長年の恨みと祖国再興の執念に燃

えるラシル王国軍が陣を敷いた。

対するビガンテ城の守備兵は、度重なる敗戦と補給途絶により、すっかり疲弊しきっていた。城壁の上で槍

を構える兵士たちの瞳には、もはや戦意ではなく、死への諦絶が浮かんでいる。

「総司令官殿、オーレリア帝国軍より合図が出ました。全軍一斉攻撃の火蓋を切ります!」

親王イリアードの陣から打ち上げられた赤き狼煙が、黒く垂れ込めた空を切り裂いた。

「打て! 投石機、城門を打て! ラシルの勇士たちよ、今こそ長年の無念を晴らす時だ!」

ムジンの号令とともに、巨大な岩石が猛然と空を舞い、ビガンテ城の堅牢な城壁を砕いた。激しい打撃音が響き

渡り、城門の木組みが悲鳴を上げる。

ラシル軍の兵士たちは、梯子を手に城壁へと群がった。長年、ダラーン王国の圧政と侵略に苦しめられてき

た我が兵たちの情熱は、まさに狂熱と言ってよかった。矢の雨が降り注ぐ中を、身を省みずに駆け上がり、城

壁の上で凄絶な白兵戦を繰り広げる。

「押せ! 引くな! ここで攻め落とさねば、死していった若者たちに合わす顔がないぞ!」



◇

城上からは、悲痛な叫び声と鉄のぶつかり合う音が絶え間なく聞こえてくる。

だが、かつてラシル軍を震え上がらせたダラーン軍の強靭な組織力は、そこには存在しなかった。将兵をまと

めるベテランの指揮官はすでに死に絶え、あるいは獄に繋がれ、あるいは無謀な前線へと駆り出されていた。

城壁を守るのは、まともな訓練も受けていない若年兵と、飢えに喘ぐ老兵ばかりであった。

「報告! 西側の第二城門、我がラシル第一大隊が突破いたしました! 城内に雪崩れ込んでおります!」

「東側も帝国軍の鉄騎兵が突破! 城内の兵曹詰所は完全に制圧されました!」

破竹の勢いとはこのことであった。かつてラシル王国を絶体絶命の淵まで追い詰めた巨大な軍事国家・ダ

ラーンは、その中心部から脆くも崩れ去っていったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。