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愚王と呼ばれた男  作者: 中原九尾


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第二十二話 社内の女

 そんな日々を送るうち、ある日サイモンが、雑談の延長のような軽い調子で、ちょっとした話題を切り出してきた。


「そういえばさ、聞いてくれよ。愚王の奴、社内で不倫してるらしいんだよ」


「は?」


 あまりに唐突な話に、カインは一瞬言葉を失ったが、すぐに気を取り直した。


「まあ、色々突っ込みたいことはあるけど、要するに、あいつが社内の女に突っ込んじまったんだな」


「そういうことになる」


 サイモンが爆笑しながら頷いた。


「なんでそんなことになったんだよ」


「ウチの会社に入ってきた時、歓迎会やったんだよ。俺含めて男五人くらいの規模で」


「うん」


「そのとき、自己紹介で、あいつ『特技はクンニリングス、自慢は最大時18cm』って言い出してさ」


「そっちでもそのネタ使ったんだな」


「当然、その場は白けまくったよ。だけど、その話が『変な奴が入ってきた』って社内に広まって。それに、なぜか食いついた女がいたんだよ」


「それが、その不倫相手ってことか」


「そう。社内ではほとんどバレてないんだけど、あいつが俺には自慢気に話してきたから、たぶん俺しか知らない」


 サイモンは、少し呆れたようにそう続けた。


「嫁さんにバレそうなもんだけどな」


「カインもあいつの嫁さん知ってるだろ。バレるどころか、疑ってもないと思うよ」


「……ああ、それもそうか」


 あの、言っちゃ悪いが能天気な嫁の顔を思い浮かべると、カインも納得せざるを得なかった。


「まあ」


 サイモンが、話を締めくくるように言った。


「本人がそれでいいなら、俺らが関わることでもないしな」


「だな」


 その日は、それ以上、深く話を掘り下げることなく、二人の会話は終わった。


 だが、この話が、後々もっと大きな騒動に発展することを、この時のカインはまだ知らなかった。

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