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愚王と呼ばれた男  作者: 中原九尾


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第二十一話 お前らのためを思って

賭博場:現代日本でいうパチンコ屋みたいなもの。庶民が気軽に入れる場所。

回胴機:現代日本でいうパチスロみたいなもの。

「そういや、賭博場とか行く?」


 ある日の雑談で、カインとサイモンは、お互い回胴機が趣味だという話で盛り上がっていた。


「行こうぜ、今度」


「いいね。趣味合う奴と行くの、久しぶりだわ」


 そんな軽い流れで、二人で賭博場に行く約束が決まった。



 当日、待ち合わせ場所に向かうと、なぜかそこに、呼んでもいないダニーの姿があった。


「……なんでお前がいるんだよ」


 カインが、思わずそう聞くと、ダニーは腕を組んで、得意げな顔をした。


「賭博なんかダメだよ! 僕が止める!」


「つーかなんでお前いるんだよ。お前ギャンブル嫌いっていうから誘ってないのに」


 カインがそう突き放しても、ダニーは聞く耳を持たなかった。


 隣で、サイモンが、疲れたような顔でため息をついた。


「賭博場に行くって話したら、『賭博なんかダメだ、俺が止める』とか言い出して。断り切れなくて、渋々連れてきた」


「僕、二人のこと心配で仕方ないんだよ!」


 賭博場に着くまでの間も、ダニーは空気を読まずに、そんな説教じみたことを言い続けていた。


「じゃあ付いてくんなよ」


「お前らのためを思って言ってるんだろ!」


 その言い分に、カインとサイモンは顔を見合わせ、揃ってため息をついた。


「趣味なんだから、放っといてくれ」


 カインがそう宥めて、ひとまず賭博場に到着した。


 回胴機の前に座った二人が、次々と金を溶かしていく様子を見て、ダニーは、店内であることも構わず、大声で二人を止め始めた。


「もうやめようよ! お金なくなっちゃうよ!」


「うるせえ、静かにしてろ」


「静かになんてしてられないよ! 二人とも冷静になって!」



 周りの客からも、次第に白い目で見られ始めた。耐えられなくなった二人は、勝負を切り上げ、ダニーを引きずるようにして外へ連れ出した。


「お前が嫌いなのは分かってるけど、大声で空気読めないこと言うなよ。他の客もいるんだから」


 カインがそう咎めると、ダニーは、急にしんみりとした顔になった。


「実は、僕の親戚に、賭博で身を持ち崩した人がいてさ」


「初耳なんだけど、それ」


「その人、若い頃はすごく羽振り良かったのに、賭博にはまって、最後は家族もバラバラになって……」


「お前、さっきまでそんな話一言もしてなかったじゃねえか」


「言ってなかったっけ」


「言ってねえよ」


「だから、お前らにそうなって欲しくないんだよ!」


「ぐお”お”お”お”ぉぉーー」


 ダニーが、路上で盛大に泣き出した。


「俺ら家族バラバラになるほどのめり込んでないし」


「つーかその親戚が酷かっただけで、俺らと一緒にすんなよ」


「そんなことないって! お前らもそうなるんだって!」


 なおも食い下がるダニーに、カインとサイモンは、揃って白けた顔を向けた。


(こいつ、本当に人の話聞かねえな……)


 カインは、そんなことを思いながら、いつも通り、深いため息をつくしかなかった。

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