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愚王と呼ばれた男  作者: 中原九尾


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第十八話 ぐおうって何ですか

「今度、僕の今の相棒紹介するよ!」


 ある日、ダニーがそう言って、カインを食事に誘ってきた。


 連れてこられた先で待っていたのは、落ち着いた雰囲気の男だった。


「サイモンです。ダニーには、いつもお世話になってます」


 物腰の柔らかい、しっかりした受け答えをする男だった。カインは、こんなまともな人間が、よくダニーの「相棒」などという肩書きに耐えているものだと、内心で感心した。


 その日は、三人での食事は、特に大きな問題もなく終わった。



 問題が起きたのは、その数週間後のことだった。


 また三人での食事に誘われていたが、


「ごめん、今日急な用事入って行けなくなった! サイモンとカインの二人で行って!」


 通信端末越しに、ダニーからそんな連絡が入った。


「あいつ、急に何なんだよ」


 カインがそう漏らすと、サイモンも苦笑しながら頷いた。


「まあ、よくあることなんですよ、彼」


 仕方なく、カインとサイモンの二人だけで食事をすることになった。会話を進めるうちに、カインはふと、ダニーの話題を口にした。


「愚王がまた、こういう急な話してくるの、正直参るんですよね」


「……ぐおう?」


 サイモンが、聞き慣れない言葉に、怪訝そうな顔をした。


「あ、いや」


 カインは、しまったという顔をした。うっかり、いつもの呼び方が口から出てしまっていた。


「ぐおうって、何ですか、それ」


「……まあ、その、ダニーのあだ名です。ウチの会社で働いているときに、いつの間にかそう呼ばれるようになってて」


「へえ。どういう由来なんですか」


 カインは、少し迷ったが、隠すことでもないかと思い、素直に説明することにした。新人講習時の挨拶での奇行から始まり、彼の愚かなエピソードが多数あることと、事あるごとに「ぐお”お”お”お”ぉぉーー」と泣くことを掛け合わせて生まれた、という経緯を。


 説明を聞き終えたサイモンは、しばらく黙っていたが、やがて、深く頷いた。


「……すごくしっくりくるあだ名ですね、それ」


「でしょう」


「まさに、その通りだと思います」


 そこから、二人の会話は、堰を切ったように盛り上がっていった。


「この前なんて、契約先に僕の代わりに行かせたら、話が全然噛み合わなくて――」


「それ、こっちも似たようなことありましたよ。あいつが仕事任されて、結局僕らに丸投げしてくるんです」


 お互いの愚痴が、面白いように噛み合っていく。気づけば、その日の食事会は、当初の予定よりも、ずっと盛り上がった夜になっていた。


 この日を境に、カインとサイモンは、すっかり意気投合することになった。二人に共通する話題は、決まって一つ――愚王という、共通の悩みの種だった。

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