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愚王と呼ばれた男  作者: 中原九尾


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第十七話 俺の秘技と18cmにかかれば

 忙しさにかまけて、ダニーとの付き合いが少し疎遠になっていた、そんな二年ほどの間に、思いがけない変化が起きていた。


「久しぶり! 僕の嫁と子供紹介するよ!」


 仕事で外出していたカインを、ダニーがそう言って強引に誘ってきたのは、ある日の昼下がりのことだった。


 案内された先で待っていたのは、おっとりとした雰囲気の、なかなかの美人だった。腕には、小さな赤ん坊を大事そうに抱いている。


(こいつ、よくこんな人捕まえたな……)


 カインは、思わずそう感心せずにはいられなかった。


「子供、嫁さんに似てて可愛いな」


 赤ん坊の顔を覗き込みながら、カインがそう言うと、ダニーは嬉しそうに笑った。


「そう、ほんと天使だよ!」


 (お前に似なくてよかったなって言ったつもりだけど、まあいいか)


 カインは、内心でそう思いながらも、それ以上は突っ込まないでおいた。


「僕のクンニテクと18cmにかかれば、落とせない女はいないからね」


 なぜか誇らしげに、ダニーがそんなことを豪語してくる。


(そういえば、こいつ無駄にデカイしな……)


 妙な感心と共に、カインはその発言を、聞かなかったことにすることにした。


「そういや、お前、今どこ勤めてんだよ」


 カインがそう尋ねると、ダニーは何でもないことのように答えた。


「今、冒険者向けの保険の営業やってる。今日も、この後外回りなんだよね」


「お前が営業とか、大丈夫なのかよ、それ」


「大丈夫だって! 僕、話すの得意だし」


 その根拠のない自信に、カインは何とも言えない不安を覚えた。



 しばらくして、嫁がお花摘みに席を外したタイミングで、カインは軽く嫌味を言ってやることにした。


「俺、結婚式に呼ばれてねーぞ」


「あ、それね。授かり婚だったから、急に決まっちゃって。式も、海外で身内だけでやったんだよね」


(何も考えずに中出しして命中しちまったから、慌てて結婚することになったんだろうな……)


 カインは、内心でそう呆れながらも、口には出さないでおいた。


 だが、会話を続けていくうちに、カインはさらに別の事実に気づくことになった。嫁もまた、ダニーに匹敵するくらい、何も考えていないタイプだったのだ。



「ねえねえ、この後、ダニーと食事行くんですけど一緒に行きませんか?」


 戻ってきた嫁が、屈託のない笑顔でそう誘ってきた。


「いや、俺、仕事中なんで」


 カインが断ろうとすると、ダニーまでもが、なぜか乗り気になって割り込んできた。


「近くにいい肉と酒出す店あるんだよ! 行こうよ!」


「お前も仕事中だろうが」


「まあまあ、細かいことはいいから!」


 なおも渋るカインに、ダニーは、途端に目を潤ませ始めた。


「僕がせっかく親友のお前に嫁を紹介するためにお前誘ったのに……」


「それはともかく、またお前適当な仕事してると新しい会社も続かねーんじゃねーか。つーか仕事中の昼間から酒飲もうとすんなよ」


「ぐお”お”お”お”ぉぉーー」


 その隣で、嫁も特にダニーを止める様子もなく、むしろ一緒になって「行きましょうよぉ」と誘ってくる始末だった。


(愚王が、二人に増えた……)


 カインは、そんな理不尽な現実に、ただただ辟易するしかなかった。

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