第十七話 俺の秘技と18cmにかかれば
忙しさにかまけて、ダニーとの付き合いが少し疎遠になっていた、そんな二年ほどの間に、思いがけない変化が起きていた。
「久しぶり! 僕の嫁と子供紹介するよ!」
仕事で外出していたカインを、ダニーがそう言って強引に誘ってきたのは、ある日の昼下がりのことだった。
案内された先で待っていたのは、おっとりとした雰囲気の、なかなかの美人だった。腕には、小さな赤ん坊を大事そうに抱いている。
(こいつ、よくこんな人捕まえたな……)
カインは、思わずそう感心せずにはいられなかった。
「子供、嫁さんに似てて可愛いな」
赤ん坊の顔を覗き込みながら、カインがそう言うと、ダニーは嬉しそうに笑った。
「そう、ほんと天使だよ!」
(お前に似なくてよかったなって言ったつもりだけど、まあいいか)
カインは、内心でそう思いながらも、それ以上は突っ込まないでおいた。
「僕のクンニテクと18cmにかかれば、落とせない女はいないからね」
なぜか誇らしげに、ダニーがそんなことを豪語してくる。
(そういえば、こいつ無駄にデカイしな……)
妙な感心と共に、カインはその発言を、聞かなかったことにすることにした。
「そういや、お前、今どこ勤めてんだよ」
カインがそう尋ねると、ダニーは何でもないことのように答えた。
「今、冒険者向けの保険の営業やってる。今日も、この後外回りなんだよね」
「お前が営業とか、大丈夫なのかよ、それ」
「大丈夫だって! 僕、話すの得意だし」
その根拠のない自信に、カインは何とも言えない不安を覚えた。
*
しばらくして、嫁がお花摘みに席を外したタイミングで、カインは軽く嫌味を言ってやることにした。
「俺、結婚式に呼ばれてねーぞ」
「あ、それね。授かり婚だったから、急に決まっちゃって。式も、海外で身内だけでやったんだよね」
(何も考えずに中出しして命中しちまったから、慌てて結婚することになったんだろうな……)
カインは、内心でそう呆れながらも、口には出さないでおいた。
だが、会話を続けていくうちに、カインはさらに別の事実に気づくことになった。嫁もまた、ダニーに匹敵するくらい、何も考えていないタイプだったのだ。
*
「ねえねえ、この後、ダニーと食事行くんですけど一緒に行きませんか?」
戻ってきた嫁が、屈託のない笑顔でそう誘ってきた。
「いや、俺、仕事中なんで」
カインが断ろうとすると、ダニーまでもが、なぜか乗り気になって割り込んできた。
「近くにいい肉と酒出す店あるんだよ! 行こうよ!」
「お前も仕事中だろうが」
「まあまあ、細かいことはいいから!」
なおも渋るカインに、ダニーは、途端に目を潤ませ始めた。
「僕がせっかく親友のお前に嫁を紹介するためにお前誘ったのに……」
「それはともかく、またお前適当な仕事してると新しい会社も続かねーんじゃねーか。つーか仕事中の昼間から酒飲もうとすんなよ」
「ぐお”お”お”お”ぉぉーー」
その隣で、嫁も特にダニーを止める様子もなく、むしろ一緒になって「行きましょうよぉ」と誘ってくる始末だった。
(愚王が、二人に増えた……)
カインは、そんな理不尽な現実に、ただただ辟易するしかなかった。




