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愚王と呼ばれた男  作者: 中原九尾


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第十五話 お前のいいところ見せようと思って

「今度また合コンやろうよ! 二対二でどう? 僕とカインで」


 その誘いに、カインは珍しく素直に頷いた。


 ブラック企業勤めの疲労と、ダニーの尻拭いで溜まりに溜まったストレスもあり、今回はカインも女性の人肌が恋しいと思っていたところであった。



(マジか、愚王どうやってこんな娘たち呼んだんだ?)


 当日会った女性二人は、意外にも、どちらもかなり可愛く、ノリも良かった。


「え、カインさんカッコイイですね!」


 開口一番、そう言われたことで、掴みは上々だった。


(今日はもしかして、いい感じになれるかもしれない……)


「今日はマジでお持ち帰り狙いにいくぞ」


 カインが、珍しくそう宣言すると、ダニーの目の色が変わった。


「マジで!? カインがそんなこと言うの珍しいじゃん!」


 普段、女性を紹介することにあまり乗り気ではないカインが、珍しく前向きな態度を見せたことで、ダニーにも妙なやる気が芽生え始めていた。


「よし、僕も今日は本気出す!」



 その言葉通り、会はほどよく盛り上がっていった。女性陣の反応も悪くなく、カインの中では、いい感触だった。


(このまま盛り上がれば、マジで行けるかもしれない……)


 だが、その空気は、思わぬ形で崩れることになった。


 店に、柄の悪い集団が入ってきて、大声で騒ぎ始めたのだ。


「ああいうの、ちょっと苦手かも……」


 女性の一人が、露骨にテンションを落としてそう漏らした。


「あいつらやっつけようぜ」


 ダニーが、その場でそう言い出した。


「は? 何言ってんのお前」


「カイン、お前強いんだから、あんなの余裕でしょ」


 カインが止める間もなく、ダニーは、柄の悪い集団の方へ、堂々と絡みに行ってしまった。


「おい、あんたらさ、うるさいんだけど」


「あ?」


 案の定、話はこじれた。相手の男たちが気色ばみ、あわや揉め事に発展しかけたところで、店員が慌てて間に入り、結局、騒ぎを起こした側として、カインとダニーの二人が店を追い出される羽目になった。


 残された女性たちも、すっかり気分を害した様子で、そそくさと帰っていってしまった。


「なんだよ、これ……」


 店の外で、カインは呆然と立ち尽くした。


「お前が余計なことしなきゃ、こうならなかっただろうが」


 カインが詰め寄ると、ダニーは、心底不思議そうな顔をした。


「え、僕、お前のいいところ見せようと思ってやったのに」


「揉め事起こす男をいいところと思う女がいると思ってたのか、お前」


「そんな……」


「お前よくそんなんでクンニが特技とか言えるよな。今までやる相手いたとは思えねぇよ」


「ぐお”お”お”お”ぉぉーー」


 ダニーが、店の前で盛大に泣き崩れた。通りすがりの人々が、何事かとちらちら振り返っていく。


「泣きたいのはこっちだよ」


 カインは、そう吐き捨てるように呟いた。せっかくの期待が、こんな形で潰えたことに、これまでにない種類の脱力感を覚えていた。


(もう愚王との合コンは行かねー……)


 カインの中で、そんな固い決意だけが、静かに積み重なっていった。

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