第十五話 お前のいいところ見せようと思って
「今度また合コンやろうよ! 二対二でどう? 僕とカインで」
その誘いに、カインは珍しく素直に頷いた。
ブラック企業勤めの疲労と、ダニーの尻拭いで溜まりに溜まったストレスもあり、今回はカインも女性の人肌が恋しいと思っていたところであった。
*
(マジか、愚王どうやってこんな娘たち呼んだんだ?)
当日会った女性二人は、意外にも、どちらもかなり可愛く、ノリも良かった。
「え、カインさんカッコイイですね!」
開口一番、そう言われたことで、掴みは上々だった。
(今日はもしかして、いい感じになれるかもしれない……)
「今日はマジでお持ち帰り狙いにいくぞ」
カインが、珍しくそう宣言すると、ダニーの目の色が変わった。
「マジで!? カインがそんなこと言うの珍しいじゃん!」
普段、女性を紹介することにあまり乗り気ではないカインが、珍しく前向きな態度を見せたことで、ダニーにも妙なやる気が芽生え始めていた。
「よし、僕も今日は本気出す!」
*
その言葉通り、会はほどよく盛り上がっていった。女性陣の反応も悪くなく、カインの中では、いい感触だった。
(このまま盛り上がれば、マジで行けるかもしれない……)
だが、その空気は、思わぬ形で崩れることになった。
店に、柄の悪い集団が入ってきて、大声で騒ぎ始めたのだ。
「ああいうの、ちょっと苦手かも……」
女性の一人が、露骨にテンションを落としてそう漏らした。
「あいつらやっつけようぜ」
ダニーが、その場でそう言い出した。
「は? 何言ってんのお前」
「カイン、お前強いんだから、あんなの余裕でしょ」
カインが止める間もなく、ダニーは、柄の悪い集団の方へ、堂々と絡みに行ってしまった。
「おい、あんたらさ、うるさいんだけど」
「あ?」
案の定、話はこじれた。相手の男たちが気色ばみ、あわや揉め事に発展しかけたところで、店員が慌てて間に入り、結局、騒ぎを起こした側として、カインとダニーの二人が店を追い出される羽目になった。
残された女性たちも、すっかり気分を害した様子で、そそくさと帰っていってしまった。
「なんだよ、これ……」
店の外で、カインは呆然と立ち尽くした。
「お前が余計なことしなきゃ、こうならなかっただろうが」
カインが詰め寄ると、ダニーは、心底不思議そうな顔をした。
「え、僕、お前のいいところ見せようと思ってやったのに」
「揉め事起こす男をいいところと思う女がいると思ってたのか、お前」
「そんな……」
「お前よくそんなんでクンニが特技とか言えるよな。今までやる相手いたとは思えねぇよ」
「ぐお”お”お”お”ぉぉーー」
ダニーが、店の前で盛大に泣き崩れた。通りすがりの人々が、何事かとちらちら振り返っていく。
「泣きたいのはこっちだよ」
カインは、そう吐き捨てるように呟いた。せっかくの期待が、こんな形で潰えたことに、これまでにない種類の脱力感を覚えていた。
(もう愚王との合コンは行かねー……)
カインの中で、そんな固い決意だけが、静かに積み重なっていった。




