第十四話 喋らなくていいから
合コン当日、待ち合わせ場所に現れたダニーの友人を見て、カインは内心で密かに天を仰いだ。
顔立ちは正直これといった特徴もなく、話しかけても反応が鈍い。背も低く、体を鍛えている様子もない。お世辞にも、モテる要素があるようには見えなかった。
(これを、どうしろと……)
カインがそんなことを考えているとは露知らず、ダニーは友人の肩を叩きながら、猛烈にアピールを始めていた。
「こいつ、めちゃくちゃいいやつなんだよ! 中身は保証する!」
その必死さに、カインは呆れを通り越して、ある種の感心すら覚えた。
「なあ、カイン」
ダニーが、妙に真剣な顔で耳打ちしてきた。
「今日、お前は顔要員だから。喋んなくていいよ。いや、できるだけ喋るな」
「は?」
「女の子の第一印象を良くしたいだけだから」
あまりにも身も蓋もない役割分担に、カインはやる気を根こそぎ失った。だが、今更断るのも面倒で、仕方なくそのまま参加することにした。
「盛り上げるのは、僕がやるから」
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ダニーがそう宣言した通り、会が始まると、一人でやたらとテンション高くはしゃぎ出した。カインは、言われた通り、極力口を開かないようにしていた。
結果、ダニーが空回りしていただけで、想像以上に場は盛り上がらなかった。ダニー一人がテンション高く喋り続ける一方、カインはただ座っているだけで、女の子たちも、その温度差にどこか困惑した様子を見せていた。ダニーの友人に至っては、話しかけられても要領を得ない返事しかできず、空気はますます重くなっていった。
*
一次会でこの合コンはお開きになるかと思いきや、ダニーが唐突に提案した。
「よし、次はみんなで海行こう!」
「は? なんで海?」
「花火買ってあるんだよ! みんなでやろう!」
「なんで海で花火なんだよ。もっと親密になれる場所、他にあるだろ」
「花火ってロマンチックじゃん!」
その理屈のよく分からなさに、カインは何も言い返せなかった。
渋々付き合った海辺での花火でも、状況は変わらなかった。ダニーが一人ではしゃぎ、カインは相変わらず口を挟まず、女の子たちは愛想笑いを浮かべながらも、明らかに帰りたそうな空気を漂わせていた。結局、ダニーの友人は、女性陣の連絡先を一つも聞けないまま、その日の会はお開きとなった。
*
後日、カインはダニーにその顛末を、遠慮なく突きつけた。
「結局、お前の友達、連絡先一つも聞けてなかったじゃねえか」
「そんな言い方しなくても……」
「事実だろうが。何のために海まで行ったんだよ、あれ」
「僕も、頑張ったんだよ……」
「お前が頑張っただけで、お前の友達が頑張れる状況が一つもなかっただろうが」
「ぐお”お”お”お”ぉぉーー」
ダニーが、盛大に泣き出した。
「頑張った方向が、全部間違ってたって話をしてんだよ」
カインがそう突き放しても、泣き声は収まる気配がなかった。
(こいつの「頑張る」、いつも見当違いの方向にしか向かわねえんだよな……)
カインは、そんなことを思いながら、いつも通り、深いため息をつくしかなかった。




