第十三話 そんなこと言うわけない
あの通話から数ヶ月が経った、ある日のことだった。
「今度さ、合コンあるんだけど、来ない?」
何事もなかったかのように、ダニーがそう誘ってきた。
カインは、思わず耳を疑った。
「お前、二度と俺を誘わないって言ってなかったか」
「え、いつ?」
「この前だよ。通話で、泣きながら言ってただろうが」
ダニーは、心底不思議そうな顔をした。
「僕がそんなこと言うわけないじゃん。親友のお前に」
あまりの記憶の改竄っぷりに、カインは開いた口が塞がらなかった。
「お前、はっきり『二度と誘わない』って言ったんだよ。俺、しっかり覚えてるからな」
「そんなこと言った覚え、全然ないんだけど」
「都合の悪いことだけ、綺麗さっぱり忘れんなよ」
「覚えてないもんは覚えてないんだって」
悪びれる様子もなく、そう言い切るダニーに、カインはもう、突っ込む気力すら湧かなかった。
「まあ、いいけどよ。それより、今回の合コン、何なんだよ」
話を変えるようにそう尋ねると、ダニーは急に真剣な顔になった。
「実はさ、どうしても彼女作ってやりたい友達がいて」
「友達?」
「うん。ずっと彼女いなくて、可哀想でさ。今回は、そいつのために、絶対成功させたい合コンなんだよ」
その言葉には、いつになく強い意気込みが感じられた。カインは、なんとなく嫌な予感を覚えた。
「お前が本気出すと、大体ろくなことにならない気がするんだけど」
「そんなことないって! 今回は本当に頑張るから!」
あまりにも自信満々なその態度に、カインは、これ以上何を言っても無駄だろうと悟った。
「……まあ、一回くらいなら、付き合ってやってもいいけど」
「マジで!? ありがとう!」
ダニーが、満面の笑みでそう言った。
この時のカインは、まだ知らなかった。この「絶対成功させたい合コン」が、後にどれほど無残な結末を迎えることになるのかを。




