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愚王と呼ばれた男  作者: 中原九尾


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第十二話 二度と誘わない

 ダニーが退職してからも、その連絡は途絶えなかった。むしろ、暇を持て余しているのか、以前にも増して頻繁に誘いが来るようになっていた。


「今度さ、合コンあるんだけど、来ない?」


「忙しい。無理」


「またそれ? いつも仕事仕事って」


「いつもじゃなくて、実際忙しいんだよ、お前も知ってるだろ」


 FPCの業務は相変わらず過密で、コンパに付き合っている暇など、カインにはほとんどなかった。断り続けているうちに、ダニーの誘い方も、次第に必死さを増していった。



 数日後、通話越しに、ダニーが妙に慌てた様子で話しかけてきた。


「あの、こないだの合コンの件なんだけど」


「だから、行けねえって言ったろ」


「いや、それが……もう、イケメン連れてくるって、みんなに言っちゃってて」


「は?」


「お前のこと。イケメン連れてくるからって、もう話しちゃってるんだよ」


 カインは、思わず頭を抱えた。


「なんで俺に断りもなく、そんなこと言うんだよ」


「勢いで! その場の勢いで!」


「知らねえよ、そんなの」


「頼むよ! 今更行けませんなんて言えないんだって!」


 あいにく、その日はどうしても外せない出張の予定が入っていた。


「無理なもんは無理だ。出張なんだよ、その日」


「そんな……」


 通話越しに、ダニーの声が、目に見えて沈んでいくのが分かった。


「マジで、頼むって言ってんじゃん」


「無理なものは無理だっつってんだろ」


「……もういい」


 その一言のあと、通話の向こうから、鼻を啜る音が聞こえてきた。


「お前なんか、二度と誘わない!」


「はいはい」


「ぐお”お”お”お”ぉぉーー」


 通話越しでも、はっきりと分かるくらいの音量で、ダニーが泣き出した。


「通話でそれやるのやめろ、耳が痛い」


 カインがそう突っ込んでも、泣き声は収まる気配がなかった。


「もう、絶対誘わないから! 覚えとけよ!」


 そう言い残し、ダニーは一方的に通話を切った。


(まあ、こんなの、どうせすぐ忘れるんだろうけどな)


 通信端末を置きながら、カインはそう思っていた。


 その予感は、当然のように、的中することになる。

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