第七話 綺麗な場所なんて
「いや…駄目か…駄目…だよな。ごめん、なんでもない」
白玖から離れて、廊下に出る。
思いついたはいいものの、実行に移す勇気がなかなか出ない。
「…外に出よう…いつものところに…行こうかな」
_いつものところ。高い崖があって、その下に花畑がある綺麗なところ。唯一のオアシス。唯一、誰も気にせず息ができる場所。
外に出ようと決意して、部屋から出る。
「聞いてくれよ!白玖様が!今日は花を咲かせたらしいぜ!流石、白の色通力だよな〜!」
「李仁様の黒の色通力なんてねぇ…勝てっこないよ、白玖様に」
「だって、黒なんて染める力だろう?白は弾く力。灰魔から守ってくれるんだ」
「黒なんて悍ましい。唾棄すべきものだよなー…なんで俺等はあんなんを祀ってたんだか」
「それなー」
_いつもの光景。でも、今日はとてつもなく腹が立った。
「誰が、なんだって?」
腹の底から出すドス黒い声。
李仁自身も、こんな声が出るとは思わなかった。
「「「ひぃ…!なんでもないです!!!」」」
ぴゅーっと逃げていったモブ共。
「ふん」
_母さんも、父さんも、こうやって娘が言われてるのに何も言わない。庇ってもくれない。
白玖は凄いねとボットのように繰り返すだけ。
「……」
黒い何かドロリとしたものが腹から湧き上がる。
ようやく、崖上について、座る。
下に見える花畑は綺麗で、この世はこんなに綺麗なんだよと言い聞かせてるみたいだった。
「………」
_ドロリドロリと塗りつぶされていく。怒りで、悲しみで。
【堕ちる、勇気が出た。気がした】




