第九話 はじめまして
「……視線が気にならないって…こんなに…楽なんだな…」
_一人暮らしは楽だった。退廃の森と呼ばれる森は、その名の通り退廃していて、人もおらず、自給自足が普通の生活。
畑耕して、寝て、起きて、畑耕して、寝て、起きての繰り返し。
「売ってみるか。この野菜共」
ちょっと下町に降りて、野菜を売ってみたり
「…うまそうだな」
買い食いしてみたり。
買って家に持ち帰ったり。ゴミは…テキトーに床に袋でまとめた。
「楽しい…!こんなに、世界は綺麗だったんだ!」
心の底から、そう思えた。
✿
「……散歩、してみるか」
前なら思えなかったが、今日は気が向いたのでこのオンボロ家から出る。
「散らかってんなぁ…まぁいいか」
ゴミ袋が散乱してゴミ屋敷と化しているが、李仁はさほど気にせず、そのまま放置。
「……」
家から出て、てくてくと歩いていく。
「……」
てくてくてくてくてくてく。
森の中を散歩し、泉を見つけて少しハッピー。
「……」
てくてくてくてくてくてく…てく。鬱蒼としている林に入っていき、足を止めた。
「…」
ガキが段ボールに入れられていたのだ。暫く見つめ合う
「寂しそうだな、お前……来るか、うちに」
なんとなく、声をかけてみた。喋れないだろうが。
「…うぁ」
まるで「行く」と言うように返事をされた。
「名前…林で見つけたから林…流石流石に安直すぎてカワイソーだから、琳にしてやるか」
ひょいと抱き上げる。首はすわっているらしく安定感がある。
「お前は今日から琳だ。よろしくね、琳」
「あう!」
意外と重たい。育てた林檎もこんな感じだった。
「林檎みてぇだな」
「あう?」
「なんでもねぇ」
家に帰るまでの道のりが、やけに長く、穏やかだったのはこの赤子のおかげ、と考えていいのだろうか
_そしてときは、現代に戻る
「…こんな感じだな」
全部、全部ぶちまけた。白玖にも、琳にも。
「「…」」
琳は少し気恥ずかしそうに、白玖は…
「…ない」
俯いて拳を震わせる。
「そんなはずない…!僕は!ねーさんを愛してるんだ!!そのねーさんが僕をキライ!?僕とねーさんは家族だろ!!?家族は!血が繋がってなくても仲がいいものだろう!?」
唾を飛ばしながら顔を赤くして激怒。初めて見た。白玖がここまで感情的になるのを。初めて見たんだ。本当に。
「白玖?」
「ねーさんは嘘つきだから!嘘なんだろ!全部!僕を愛しているよね!!?」
片手を胸において問う。必死さとこれ以上やめてくれという懇願を含めて。
「…すまない、オレはお前を…ちゃんと愛することはできない」
向き合うと決めたのだ。もう逃げないと。
「違う、チガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウ!!!」
白が暴れ狂い、全てを白く染めていく。水色街が白色に変わっていく。急速に、急激に。
住人たちはこの「漂白」に驚き、慌てふためく。
「っ…すまない…だが、もう嘘をつきたくないんだ!」
_白は狂い、黒のせいで堕ちた。黒はどうする?




