決勝トーナメント 3
主人公最強のタグでもつけた方がいいかと思ってきました。
主人公本人はつえーって感じで無双はしてないですけど
《†x†》と《マキナ》の勝負は大会の中で一番長引いた。
試合時間は十分。
《†x†》は《マキナ》の銃撃を完全に防いでいたが、流石に撃たれてから反応は辛いのか、完全に盾の裏に隠れるガードの方法だった。
そんなことをしていては距離を詰めることなど不可能であり、極わずかな削りが積み重なり、《†x†》は敗北した。
その代わり《マキナ》に色々と試行錯誤せて手札の多くを晒してくれたので感謝しかない。
地味な試合で客受けは悪かったが、多分決勝トーナメントに進出したプレイヤーや、今回はイベントの形式と相性が悪く不参加となった有名強者たちはこの試合を高く評価することだろう。
そんな試合の次が《卍魔王卍》との対戦だ。
対抗心というかなんというか、参考になるような試合を繰り広げたいと思う。
◇
『ベストフォー決定戦三戦目は、今までの試合をすべて瞬殺で進めている九尾のお狐様の《ルフレ》さんと、派手な闇魔法で圧倒する《卍魔王卍》さんです! 本トーナメント初の魔法使い同士の戦いですね! 今までとは全く違う駆け引きが見られるかも知れません。それでは、カウントダウン開始!』
「アンタのタネは分かってる。移動停止のデバフで脳筋どもは完封出来ただろうが、俺様には通用しないぜ? 前の試合が地味だったからな。派手に潰させてもらうぜ」
「それだけでここに立っているとでも? あなたこそ魔法耐性を持つ同職相手では分が悪いのでは?」
魔王様と黒華の舌戦が行われる。
ぶっちゃけプレイヤーと会話したの初めてかもしれないね。
それにしても魔王様は素なのかロールプレイなのか、随分荒っぽい感じだな。
かといってイラつく感じの荒っぽさじゃないので根は悪くなさそうってことが分かる。
ついでに二回しか見せていない【呪炎】の移動停止のデバフについて看破してるし。
強い魔法使いの例に漏れず頭脳派なのかも。
そして、試合が始まった。
黒華は作戦通りに詠唱禁止のデバフを放つが、魔王様の闇魔法に呪炎が打ち消される。
そして、魔王様は下級の魔法を連射してくる。
魔法使い同士の戦いは基本的に一発当てた方が勝ちだ。
攻撃を当てれば詠唱を中断させることが出来、詠唱を中断させれば相手は攻撃手段も防御手段も失い、動く的となるからだ。
でもさ、無詠唱で【黒炎】が使える黒華には関係がない話だよね。
黒華は下級魔法の弾幕を【黒炎】の一振で全て破壊する。
MPを注ぎ込む必要はあるが、弾幕を貼り返すよりは明らかに効率がいいだろう。
魔法の打ち合いは確実に黒華が有利だ。
MPの消費も液体呪炎銀を見えないように使っているため超高効率の変換が可能となっているため考えなくていいくらいだ。
そして、このまま行けば勝ちだと確信していたが、そうは問屋が卸さないらしい。
「……このまま負けるわけにはいかねぇ! やるなら全開だ! 【悪魔の契約】!」
魔王様が背中から悪魔の蝙蝠のような羽を生やす。
何となくそうじゃないかなって思ってたけど悪魔だったらしい。
悪魔の羽を広げ、その両端と、背中に紫色の魔方陣が出現する。
「コイツはMPを常に消費するが魔法の威力と詠唱速度に補正が掛かるスキルだ! 捌けるもんなら捌いてみやがれ!」
説明ご苦労。カッコイイですね。
多分悪魔の専用スキルだと思うんだけど、公開タイミングを探してたんだと思う。
大会でピンチになって使用、効果を説明して、さらに実際に見てもらう。
そして勝利。最高の筋書きだと思う。
――勝つことが出来ないということに目を瞑ればな。
「(黒華、こっちも液体呪炎銀を派手に展開しちゃって!)」
「(いいのですか? 精神力を気にせず全開で行けば倒せそうですが)」
「(いーのいーの。どうせ分からないだろうし、切り札をそれだと誤認させることが出来れば次から有利に運べるかもだし)」
液体呪炎銀や妖精魔銀は伏せ札だ。
切り札――と言っていいのかは微妙だが、取っておきは『バカめ! それは【使い魔】だ!』って出来たり、相手を一人だと思っている対戦相手の意表を突いて攻撃できることだ。
「(了解しました――それでは)」
黒華のスカートから液体状態の液体呪炎銀が這い出て狐のマークを背中側に形作る。
ぶっちゃけ出てきたところで意味はあんまりない。
突き刺す攻撃は見せないし、固体状態にして轟々と燃やしてそこから【黒炎】を連射するだけだ。
見た目は派手になるが、服の中に隠している時よりかは【黒炎】の燃費が良くなるくらいしかメリットはない。
しかし、派手な見た目というのが肝心だ。
「なるほど。それならば私も本気を出す他ないですね」
さすが黒華。分かってる!
相手の切り札に対してこちらも切り札を出したというポーズ。これが重要なんだよ!
それから約二分ほど魔王様と魔法の打ち合いを行い、最後は極大の黒炎弾が魔王様の身を焦がした。
『試合終了!! お互いに切り札を切った熱い魔法戦を勝ち残ったのは《ルフレ》さんです! いやー凄かったですね。もう私、何が起こってるのか全くわかりませんでした。魔法が大量に打ち出されて激突して対消滅してキラキラってなってて綺麗だなーって思いました! それでは、四回戦へ移りたいと思います!』
◇
控え室に戻ってきた。
会場は大盛り上がりだ。
「さすが黒華だね。最悪火属性の精霊魔法で手伝うことも考えてたんだけど、必要なかったみたい」
「やはり、液体呪炎銀の高効率の変換が強いですね。【黒炎】と【呪炎】だけですが最大で消費が九分の一まで減るのですから」
「まあ燃費の良さは思い切りの良さにも繋がるしね。それでも無詠唱魔法であんなに丁寧に相殺戦できるのはすごいと思うよ? 明確な呪文がある魔法と違って想像力が必要になるし。黒華がいなかったらデカいの一発で決めることになってたと思うし」
「まあ、慣れていますからね。そういう種族として生まれていますので、呪文なんてなくても普通に扱うことができます。むしろあるだけ邪魔ですね」
そう言って黒華は笑う。
多分、魚にどうやって泳いでるのって聞くのと同じなんだと思う。
水中呼吸は普通にできるのに、酸素ボンベやらシュノーケルやらフィンやらを魚に取り付けても邪魔なだけだろう。
黒華もそれと同じで、普通に無詠唱の魔法である【黒炎】と【呪炎】に慣れているから無駄に呪文がくっついてると邪魔なんだろう。
そして、それが黒華の強さだ。
ブレイヤーたちは無詠唱魔法はあまり使わない。
種類が少ないというのもあるし、強力な無詠唱で使えるからか、制約が多い。【精霊魔法】の親和性みたいなね。
そして何より大雑把になる。
例えば«ファイアボール»という魔法。
直径何センチの火の玉が、時速何キロで飛んでいくと規定されているはずだ。
それを無詠唱魔法で行うと、そこそこ大きな火の玉が結構早く飛んでいく。という感じになる。
やろうと思えば直径42.195センチメートルの火の玉が時速3.141592653589キロメートルでとんでいく。
なんて設定も可能だとは思うが、そんな正確なイメージを戦闘中に出来るかボケ! って感じである。
しかし黒華は息をするように無詠唱魔法である【黒炎】と【呪炎】が使えるので戦闘中でも行えてしまう。
こういう“そういうもの”として作られたAIの優秀さが【使い魔】をプレイヤーと遜色のないパーティメンバーとして扱える強さの秘訣なのだ。
あとデバフの延長みたいな専用テクニックもあるみたいだしね。
さて、考察もそこまでにしてバジリスクの素材を弄りながら四回戦の勇者様VS弓使いの試合でも見ましょうかね。




