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決勝トーナメント 4

 第四回戦は近接キャラ同士(片方は弓使いという名前だが)の熱い激戦が繰り広げられた。

 剣と盾の勇者様と、短剣二刀流の弓使いの戦いは、一見弓使いが攻めているかのように見えたが、その実弓使いは守りに入っていたのだ。

 まず、短剣と盾は非常に相性が悪い。

 盾で受けられるだけでダメージが激減する。

 削りダメージなどほぼ皆無だ。


 そして、勇者様の剣は明らかに短剣より長い。

 そのため懐に入り込まなければ一方的に攻撃されてしまう。

 弓があるんだからさらに距離を取ればいいじゃんと思うかもしれないが、盾持ちは弓を完封できる。

 弦を引くモーションがあるし、弾速は確実に音速には届かない程度だ。

 わかりやすいモーションさえあればガードが間に合う。

 そして連射も効きにくいので盾受けした衝撃で若干体勢が崩れているチャンスでの追撃が難しい。


 つまり、弓使いは短剣二刀流で勇者様に勝たないといけないし、その短剣二刀流ですら不利なのだ。

 勝つための攻めではなく、負けないための守り。

 弓使いの行動はそう表現できるだろう。


 そして、盾での防御に意識を向けて剣での攻撃を最小限にしていた勇者様だったが、双剣の攻撃になれたのか魔法も使い始めた。

 近接戦闘中に使うためのスキルで威力は低下しているが、隙作りには十分に魔法だった。

 反射的に魔法を躱してしまった弓使いは、その隙を突いた剣での攻撃を防ぐのではなく避けてしまう。

 しかも、反射的な行動の直後の攻撃を反射的に――何も考えずに対処してしまったのだ。

 遠近対応の弓使いは当然バックステップで回避した。

 あとはもう防戦一方だ。

 弓での攻撃は防がれ、魔法で牽制されながら短剣のレンジ外、長剣のレンジで戦われる。

 

 マルチファイターの二人の戦いだったが、勝利の女神は勇者様に微笑んだのだった。



 そんなわけで準決勝まで勝ち残ったのは以下の四人だ。


 《††》

 《マキナ》

 《ルフレ》

 《アルフレッド》


 はっきり言って辛い。

 特に《アルフレッド》以外の二人は相性が悪い気がする。

 《††》は魔法に弱いが、致命的な弱点である魔法の対策をきっちりしているだろうし、魔法をすべて打ち消す謎のアーツを持っている。

 正直なところやり合いたくない。


 《マキナ》は銃が怖い。

 妖精の十五センチサイズの体に当てることが出来るとは思わないが、黒華は普通のサイズだ。

 頭を執拗に狙うくらい自分の射撃精度に自信がある《マキナ》なら確実に当ててくるだろう。

 《†x†》戦で、拳銃だけではなくフルオートのライフル銃のようなものや、対物ライフルのようなものも使えることが明らかになっているので余計に怖い。

 まともにやれば勝てるが、黒華を【使い魔】だとばらさずに戦おうとすれば不利な戦いとなる。

 妖精として場に出れば相手からの攻撃手段がないので勝てるだろうが、決勝での不意打ちができなくなるというのは少し怖いところだ。

 

 銃を無効化することが出来るなら恐るるに足らずって感じなのだが、どうやるか確実な方法はは思い浮かばない。

 口八丁で何とか心を折りたいところだ。

 

 最後に《アルフレッド》だが、彼は魔法も使えるがその魔法ではこちら側には遠く及ばない。

 《固定砲台》がそうしたようにチェスのように追い詰めていけばいいだけだ。

 出来れば準決勝ではアルフレッドと当たって《††》と《マキナ》の試合を見て決勝に上がってくるどちらかの手札を確認しておきたい。


 が、そんな都合よくは行かないらしい。


 対戦カードはこうなった。

 

 《ルフレ》vs 《マキナ》

 《††》vs 《アルフレッド》


 仕方ないと思う。でも、割といい組み合わせだ。

 マキナに負けることを考えても意味が無いので勝つことを前提とすれば、《††》と《アルフレッド》のカードはとても良い。

 《アルフレッド》は魔法も使うので《††》には有利だ。

 そのまま《アルフレッド》が勝てば決勝では前述の通り有利に戦える。

 《††》が勝ったとしても、アルフレッドとの戦いで謎の魔法無効化アーツがもう一度見れるかもしれない。

 《アルフレッド》は確実に魔法を使うだろうからな。

 条件が分かるかは不明だが少なくとも予測は出来ると思う。


 さあ、マキナ攻略を始めよう!



『さあやってきました準決勝第一試合。九尾の《ルフレ》vs 銃使いの《マキナ》の対戦となります! 本大会において異質とも言える二名の戦いです。それでは、カウントダウンスタート!』



「随分魔法がうまいらしいけど、銃の速度に勝てる? 音速よ。魔法を使う前に額に穴を開けてやるわ」


「鉄の塊を打ち出すそうですが、炎の壁で溶かしてしまえば問題は無い。そう思いませんか?」


「だから、その壁を作り出す暇すらないって言ってんでしょ!」


 マキナのその言葉と同時にカウントが零となり、銃弾が発射された。

 それとほぼ同時に【黒炎】と【精霊魔法】の火柱が同時に上がり、しかし、銃弾をその中に収めることは出来なかった。


 そして弾丸が命中する鈍い音。


「やった! このまま蜂の巣にしてやるわ!」


 火柱を避けるように移動した《マキナ》から二発三発と発砲され、放たれるたびに鈍い命中音がなる。

 そして、火柱が消滅した時、そこには無傷の黒華と、その周辺に巻き散らかされた鈍色の塊があった。


「なるほど。自分の体を射出しているのですね。道理でリロード? が必要ないわけです。先の戦いで武器を変更するのを見ていましたが、変形するように思えました。それもそのはず、武器自体が――いいえ、あなたの体が武器なのですね」


「な……どうやって防いだんだよ……」


「話すと思いますか? 私にその玩具は通用しません。その玩具を持ったまま負けるか、別の手段で戦うか早く決めた方がいいですよ?」


 そう言って黒華は黒炎を使って攻撃を始める。


 銃撃を防げた理由?

 とっても単純でとっても明快。

 【魔力循環】で纏っている膜に体力にMPを注ぎ込んだだけ。

 二人のMPを合計して200パーセントだとすれば、170パーセントくらい注ぎました。

 どれだけやればいいのか分からないし、命中すればどれだけのダメージになるか分からないから全力だ。


 といっても特に消費が嵩んだのは妖精サイズの膜を黒華サイズまで大きくすることなんだけどね。

 黒華が自分で使う【魔力循環】はMPの消費なんて大したものじゃないのに妖精サイズから黒華サイズにするのがここまできついとは思わなかった。


 まず、水の膜を作って威力を削ぐ。

 次に黒華の黒炎の物理防御力もある膜が弾丸を溶かして、ついでに物理防御を属性で防御を試みる――が、失敗。

 最後に一番内側に置いてある風の膜が、小さくなって速度も死んだ弾丸を適当に吹き飛ばす。


 【精霊魔法】で防いでもよかったんだけど、あれは魔法を使った痕跡が残るし使用までにラグがあるから却下した。常にまとっている【魔力循環】の膜ならば大きくするだけでいいからな。

 ついでに一回膜のサイズを大きくしたからか、いまは安定している。

 暫くすれば戻るだろうが、この試合では銃撃は効かない。

 事実、黒炎への反撃としてこちらに放たれる銃弾は威力を潰されて風の膜に吹き飛ばされているからな。

 

「くそ……。やってやる! どうやって防いでるかは知らないけど、直接攻撃を防げるもんなら防いでみろ!」


 やっと銃撃の無駄さを理解してくれたらしい。

 対物ライフルみたいなのを持ってこられたら防げなかったので諦めが早いのはありがたい。


 マキナの両腕が剣に変わる。

 肘から先が剣になった感じだ。


 ――勝ちました。

 剣から銃への変形はそこそこ時間がかかることがわかっている。

 

 つまり、ここから先は決勝トーナメントの序盤と変わらないということだ。


 黒華の移動停止の【呪炎】が飛び、両腕を剣にしたマキナを縫い止める。

 そのあとは、燃やしておしまいでございます。


 機人族もマジックロストアバターよりはマシだけど魔法耐性低めの種族だからね。

 あと、多分だけど変形とか射撃のたびに体力が減ってるんだと思う。

 与えたダメージが少ない気がしたし。


『決まったー! 決勝進出は、今まで無双の強さを誇った銃を完封した《ルフレ》さんです! 私、正直に言いますけど銃が優勝するんじゃないかなーって思ってました。いやーどうやって防いだのか分かりませんが、凄いですね。感激です』


 はい、控え室に転移しましょう。

 MP回復しておかないといけないしね。


 今回の作戦、実は……というか普通に穴だらけだった。

 まず最初に防げなかったら黒華はやられて妖精としてMPがほとんどない状態で戦わないといけなかった。

 あと黒華が【黒炎】で牽制していたので可能性は低いと思っていたが、取り回しが悪くなる代わりに威力が高くなる銃器を出されてたら貫通されていただろうなってのがある。

 最後に、銃への変形が時間がかかるという予想が間違いだったら移動停止のデバフをかけた時点で威力の高い銃に持ち替えられて蜂の巣だったかもしれない。

 移動できなくなったら【黒炎】回避しながら攻撃するための動きやすい拳銃ではなく、どうせ動けないんだからと対物ライフルを持ち出されたかもしれないから。

 

 それから、何回かやってみようと思って妖精魔銀で銃弾を防ごうとしたけど無理だった。

 強度がどうなのかは分からない。だって弾丸を防ぐことが出来なかったから。

 操作練度が足りないって感じかな。

 普通に見てから防御では間に合わない。

 撃たれて、防御するために動かしたのではもう遅いって感じ?

 高速攻撃対策に自動防御機能を付けたいけどまだまだ先のアイテムが必要なのでつけられないのが残念だ。



 今回の作戦が上手くいったことで黒華=ルフレっていう思い込みが確実に埋め込まれていると思う。

 意外なことに【使い魔】を使ってる人は決勝トーナメントの初戦で軒並みやられていたし。

 

 さあ、次の試合は見逃せない。

 二人の動きを脳内に叩き込むぞ。

銃器とかいうアイテムを持て余して稀に見る糞試合にしてしまった……。

銃器の扱いってむずかしいなぁ……。

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