トーナメント予選
頑張って戦闘描写を書きました。
あとこれからしばらくはトーナメントイベントを書きます。
拙い戦闘描写と情報的優位をとるためのセコい戦いがあります。
あらかじめご了承ください。
トーナメント当日。
街の中央にある噴水から特別エリアへの転移が可能となった。
転移先で左手首の腕輪から参加申請をして準備完了だ。
参加者が何人いるかは分からないが、少なくとも四桁には届くだろう。
記念参加が多くを占めるだろうが、FOEでは生産職でも戦えるために参加人数が多くなると予想される。
そんな大量の参加者を最初に捌くために闘技場に参加者を三十二等分して押し込み、そこでの勝者たちが決勝トーナメントへ勝ち上がるという形式だ。
このトーナメントは【使い魔】禁止となっている。
ただでさえ時間がかかりそうな予選を早く終わらせるための措置だろう。
決勝トーナメントは外部の生放送サイトにも中継されるため【使い魔】ありの派手さ重視の戦いが予想される。
予選トーナメントでは隅っこの方で【魔力隠蔽】を使って隠れていようと思う。
多分まともに戦ったとしても【妖精魔法】によるステータスブーストが強く、勝てるとは思うが不意の物理攻撃にやられてしまう可能性があるからだ。
妖精以外にも小さい種族はいるが、妖精ほど小さい種族はほとんどいないため数十人単位が戦う闘技場で隅っこにいる十五センチの妖精を見つけるのは困難だろうし、見つけたとしても構うのは難しいはずだ。
同じ作戦をするプレイヤーがいないとも限らないのでそこだけを考えて最後の数人になるまでにそういう輩を排除し、残った疲弊しているプレイヤーを【精霊魔法】で一網打尽にする作戦だ。
どうせ参加するならば決勝トーナメントに出たいし、どうせ出るのなら優勝を目指したい。
ベータテスト時代のビルドではこういう類の大会では優勝を狙うのは難しかったから狙えるものは狙っていきたいのだ。
決勝トーナメントも対人戦の経験は乏しいが、開幕直後に黒華の【呪炎】で移動停止か詠唱禁止をかけて直後に燃やせばなんとかなるだろう。
当然上級者相手だと厳しくなるが、数十人単位の予選は個人的な力が強いからと言って簡単に抜けることが出来るものではない。
強いプレイヤーは当然警戒され、当然のように徒党を組んで撃破されることになるだろう。
だからといって決勝トーナメントに有名強者がいないとは思わないが。
◇
時間になり、予選トーナメント会場へ転移させられる。
【魔力察知】で数える限り、六十人ほどのプレイヤーがいるようだった。
これを三十二倍して……約二千人の参加者というわけだ。
サービス開始直後のイベントにしては参加者が少ないかもしれないが、祝日というわけでもなくただの日曜日なので十分な参加人数なのかもしれない。
転送と同時に戦闘が開始されるので踏み潰されないように気をつけながら隅へ移動する。
あとは久しぶりの徒歩での移動をしながら隠れているプレイヤーを倒していくだけだ。
激戦区の中心ではかなりの速度でプレイヤー反応が消失していく。
強者がいるのか単純に周囲を囲まれているため受けるダメージが多く倒れていくのかはわからないが、早めに傍観者を倒した方が良さそうだ。
【魔力放出】の移動を行い、四隅に嵌るように隠れていた妖精を撃破し、地面に潜っていた土竜族のプレイヤーを【採掘】で地上に露出させてから倒し、壁と一体化していた蛙人族を倒す。
ついでに空から魔法を一方的に放っている翼人族も羽を燃やして落下させる。
最後に残ったのは両手剣を持ったダークエルフとナックルガードをつけた虎人族、オーソドックスな片手剣と中盾のヒューマンだった。
……やっぱり魔法使いはいないか。
ダークエルフかヒューマンが魔法も使えるという可能性はあるが、純魔は残っていない。
大体乱戦に不利すぎるんだよね。
詠唱が必要で、詠唱を妨害される可能性もあって、ついでに体力も低ければ防御力も低い。
撃ち落とした翼人族のように乱戦を逃れる手段がなければ蹂躙されるだけだ。
その分【精霊魔法】は『親和性』を高めなければ威力が低いとはいえ、詠唱が必要でないし、妖精は一度人ゴミを抜けてしまえば補足されにくいこともあって乱戦向きの魔法種族と言える。
黒華の【黒炎】も詠唱はなく、【呪炎】も移動しながら使えないという欠点はあるものの詠唱がないためとても強い部類であると言える。
ちなみに、現在の親和性はエリミネイトで大幅に向上されている他、廃鉱山での穴掘りや鉱石の加工で土が大きく上がり一番手に、二番手に同率で【魔力循環】で普段からまとっている火と風がきて、最後に、【魔力循環】――正確には【妖精魔法】――が進化したことにより三つの属性を纏えるようになってから纏い始めた水属性となっている。
氷や雷、光や闇なども親和性が設定されているのかもしれないが、それらの属性は分からないため不明である。
さて、三人の生き残りに目を向けると、膠着状態となっているようだった。
この三人になる前は六人残っており、その六人が一対一の戦いをしていて、ほぼ同時に戦いが終わったため膠着状態はなかったが、一対一ができない今、勝つためには相手の隙を伺う必要がある。
そして、最初に動いたのはダークエルフだった。
恐らく【無音詠唱】という詠唱時間が伸びる代わりに詠唱をしていることを外部に気取らせないスキルを持っていたのだろう。
それによって火球をヒューマンに放ったダークエルフは、火球の対処によって手が塞がれており、ついでに視界も火球が埋めているであろうヒューマンに背を向けて虎人族へと攻撃を行った。
素手と両手剣。どちらが勝つかなど誰が聞いても同じ答えを返すだろう。
しかしこれはゲームである。
虎人族特有の反射速度を持って両手剣の攻撃を躱した虎人族は、右手の指をピッチリとくっつけたまま伸ばし、ダークエルフの腹を貫いた。
ダークエルフがそれにより体力を失い、会場から転送された直後、火球を処理したヒューマンが貫手を放った体勢の虎人族へ切りかかる。
それを転がって回避した虎人族は、バックステップをして距離をとると見せかけ、ヒューマンに距離を詰める行動を取らせようとした。
そして、虎人族の思惑通り距離を詰めるために駆け出したヒューマンは、その懐に突っ込んできた虎人族に殴り飛ばされる。
吹き飛ばされる直前に一太刀虎人族へ攻撃を与えていたが、あれでは致命傷にはならないだろう。
そこからは腹部に鈍痛――痛覚設定はかなり低めに設定されているが、吹き飛ばされるほどの拳を打ち込まれたら暫くは腹に何かがめり込んでいるような違和感を感じるはずである。――を覚えているだろうヒューマンと虎人族との近距離戦闘になった。
有利は虎人族かと思いきや、剣のリーチをうまく扱うヒューマンに懐へ入れてもらうことが出来ず、懐へ入れたとしても盾が邪魔をして攻撃をすることが出来ないでいた。
素手は耐久値を気にせずに戦え、指という自由度の高い機構を持っている便利な武器だが、その分拳より硬いものを殴った場合にダメージを受けるのだ。
鉄製の盾は当然拳より固く、ナックルガードを付けているとはいえダメージを受けるため、迂闊な攻撃をしては自分で自分の首を絞めることになる。
恐らくお互いに体力はあと僅か。
クリーンヒットを当てることが出来れば勝てる。
そう思っているだろう両者の近接戦闘速度はどんどん上がっていき、暫くしてヒューマンがシールドバッシュによって虎人族の体制を崩した。
そこに剣が吸い込まれるように伸びていき、しかし虎人族には当たらなかった。
«ステップ»対人戦の基本にして奥義のアーツである。
先程のように高速戦闘中に使うことは難しいが、バッシュによって流れが途切れた結果による戦闘速度の低下、さらに勝ちを確信したことによってヒューマンの脳内から【回避術】«ステップ»のことが一時的に消えていたのだろう。
虎人族の体がヒューマンの体をすり抜け、その後に背中合わせのように移動する。
ヒューマンも一瞬遅れて«ステップ»に気が付き、剣を後ろに振るが、体勢が悪ければ反応速度も遅い。ついでに素手の方が早いに決まっている。
虎人族の指から爪が伸び、ひと足早くヒューマンの体力を削りきった。
体力を全損したヒューマンは会場から転送され、虎人族は尻餅をついて息を整えていた。
そして、虎人族が首をかしげて決勝進出のアナウンスがないことを訝しむと同時に、風の刃が虎人族に迫り、その体力を全損させた。
三つ巴からタイマンになって、それでも外に意識を向けろというのは酷だけどそのおかげで決勝トーナメントに進出できた。
ありがとう。
決勝トーナメント進出者のうち数人は主人公と同じ勝ち方をしました。
開幕で囲まれなかった魔法使いが隅っこで大魔法の詠唱をして全員倒して決勝行きをしたりもしましたが、二十人以上が物理マンで、そのうち半数くらいが運良く決勝トーナメントに生き残った人たちです。
あと予選は非公開です。
その間に生放送では色々説明したりしていたと思います。




