第三回名誉裁判
名誉裁判も六つ目を証魔(証人)として呼ぶ。勇者・魔物・王、一同が揃い裁判が行われる。
第二回名誉裁判一ヶ月後、次の名誉裁が開かれることになった。前回と同ようの裁判所と裁判官で執り行われた。勇者たちは前回間に合わなかった証拠を提出した。ただし、魔物の文献と魔王の首の解剖結果による魔王の証明はできなかった。原告である勇者が父の名誉を回復させるため、新たに証人ではなく、証魔を招集した。
「証魔を中へ」、裁判長の男の声が法廷に流れた。
扉が開き護送車に乗った六つ目魔物が法廷に入って来た。原告側(勇者と賢者)・被告側(白髪大臣と青の人物)が護送車をずっと見ていた。
いよいよ父の名誉が回復できると勇者は息込んだ。賢者は裁判に勝つより勇者が無理をしないよう祈った。被告側は芳しくない表情だった。
檻が中央に置かれた。裁判長が原告に命じた。
「証魔喚問をどうぞ」
椅子より賢者が立ち証魔に近付いて言葉を発した。
「証魔に見て欲しい物があります。係員さんお願いします」
法廷の扉が開き箱と台車が賢者の前に置かれた。賢者が箱を開けた。中身は魔王と思われる八つ目魔物の首だった。六つ目に八つ目の首を見せようと賢者が台車を檻の近くに置いた。
「これは魔王ですか」八つ目の首を賢者が指さした。
檻の隙間から六つ目は覗き込んだ。
八つ目の首を見た途端、
「魔王様」六つ目は手を伸ばした。檻の隙間より八つ目の首を触ろうとした。
「この首は魔王なのですね」確認を取ろうと賢者が六つ目に聞く。
「おいたわしや魔王様」無理やり六つ目は手を伸ばすが、八つ目の首には届かない。六つ目の手は震え出す。何としても八つ目の首に触れようとする行為で。檻もガタガタ揺れた。
「原告、八つ目の首を遠ざけなさい。係員は居ますか。証魔の警戒をしなさい。早く」証魔の行動に裁判長は暴れられるのを恐れて、過敏だった。
西洋甲冑に槍を持った兵士六人が檻を囲んだ。いつでも槍を突き立てる位置にいた。法廷が殺伐とした空気に包まれた。八つ目の首は係員によって原告側の椅子の横に置かれた。六つ目は八つ目の首が運ばれるのを見て、手を引っ込めた。
法廷が落ち着くのを待ち賢者は六つ目に聞いた。
「あそこにあるのは魔王の首ですか」
「魔王の首ですか?ふざけたことを聞く。あれだけ魔王・魔王しい顔があるか。人間」
「魔王と断定できるのですね」
「何度も聞くな。魔王様だ」六つ目は魔王の首らしき物を魔王と認めた。
「よし」思わず勇者は声と拳を握って机を叩いた。
「原告。静かにしなさい」と裁判長に怒られたが勇者はそんなことはどうでもよかった。
おやじ。勝てるぞと勇者は裁判に勝つことしか頭になかった。
「人間。魔王様の首を雑に扱うな。そんな粗末な箱に入れおって。もっと豪華で禍々(まがまが)しい箱に入れろ」六つ目は裁判官に注文した。
「黙りなさい。裁判進行の妨げです。被告側は意見がありますか」目から血が滲み出てる六つ目。
青の人物が立ち六つ目に近寄った。青の人物が近寄ると六つ目の血は止まる。入れ替わるように賢者は席に戻った。
「証魔に質問です。嘘を付いていませんか」兵士越しに青の人物が六つ目に聞いた。
「黙れ。魔王様の首と言っている。これ以降その質問には答えん」突っぱねる六つ目だった。
「魔王の首に触れる話はやめましょう。その代り原告とどのような交渉をして、証魔に呼ばれたのですか。証人に選ばれたら断ることは出来ませんが、人間の法では魔物には適用されません。なぜ出廷したのですか」
青の人物が尋ねると六つ目は笑い出す。
「交渉か・・・ふふふはっはっは。当たりだ。勇者と交渉した。儂が人間の裁判に出る代わりに勇者は魔王裁判に出ると契約を結んだ。だからこの場に居るのだ」六つ目の発言に裁判長が戸惑いながら尋ねた。
「証魔。それは、緑生の海裁判で物議を醸した魔王裁判ですか」
「そんな話は知らんが、魔王裁判の裁判長は儂だ。驚いたか人間」笑いながら六つ目は答えた。
裁判官九人はこそこそ話し合う間、裁判は中断していた。その時間を利用し賢者は勇者に耳打ちをした。
「本当にこのまま魔王裁判に掛かる気で」
「当たり前だ。裁判を認めてもらうため仕方ないだろう。魔物と交渉するのは嫌だがな」
勇者の強い決意を感じ賢者は弁護方針で悩んだ。被告側は戦うことを諦めているのか裁判当初の顔のままだった。
「被告側は質問を続けてください」裁判長の一言で裁判は再開した。
「原告側に聞きます。証魔の発言は真実ですか?神に誓って言えますか」
青の人物に言われ賢者が立って答えた。
「違います。証魔の発言は嘘です。原告は純粋に出るよう頼みました」法廷に居た全員が驚いた。特に驚いたのが勇者と六つ目だった。
「人間何を言う。儂はそこに居るくそゆうしゃと交渉したぞ」勇者を指さす六つ目。
「そうだ。何を言っている賢者。俺も檻に居るバカ魔物と話した」勇者は立ち六つ目を指さした。
賢者は可笑しくなったのか?六つ目の発言を認めれば終わるのに。勇者は手を下ろし、賢者を睨みつけ言った。
「お前は何を言っているんだ。宿屋の前で六つ目と話したろう」
すみません。こうするしかないんです、と心で謝りつつ賢者は勇者の怒りを鎮めようとした。
「勇者落ち着いてください。法廷ですよ」
「落ち着いていれるか。大事なことだぞ」
勇者と賢者が揉めていると裁判長が止めに入った。
「原告側落ち着きなさい」
「ほら勇者冷静に」
「可笑しいぞお前」
勇者が落ち着かないので裁判長が休廷を告げた。




