尋ね魔物
第二回名誉裁判翌日、世界新聞が号外を発表。英雄対王引き分け。どちらも決定打なし。先代勇者名誉回復ならず。刑は軽くなったが、詐欺師の疑惑は消えなかったと表紙を飾った。裏面には王の謝罪文が載っていた。
「だあ~」世界新聞の号外を丸めて投げる若い男Aが王都の路地に居た。
「どうしたんす。先輩」若い男Aが投げた新聞が胸に当たる若い男Bが立って居た。新聞は下に落ちた。
「尊敬する勇者が引き分けたってよ」
「お師匠が魔物と戦ったすんか」
「違えよ。新聞に書いてるし。読んで見ろよ」若い男Aに言われ若い男Bは丸まった新聞を掴み、元の状態に直した。若い男Bは新聞を読み始めた。
十秒後、
「読めないっす」
「しかたねえな。貸してみ」若い男Bから新聞を取り上げ、若い男Aが読んだ。
「何すかそれ。まじ許せないす」新聞の内容が分かり若い男Bは若い男Aより新聞を借りた。新聞を裏面にし地面に置いた。
「せっかちのあほ王」と若い男Bはあほ王を連呼しながら、新聞を踏みつけた。
「先輩もやらないすか」
「おう。おもしろそうだ」若い男Aも一緒に踏んでいたら、自由兄が現れた。
「お前ら何してんの」若い男Aが事情を説明した。
「いいじゃん。楽しそうで。俺も仲間に入れてくんねえ」
「いいすよ」自由兄も参加して、三人は新聞を踏んだ。そのうち自由兄が、
「動こうぜ」と言い足を交互に出すようになり、それに連れられ若い男A・Bも足を動かした。リズムが出て来て新聞を踏むのを止め、三人は手を繋いで回り出した。
それを見ていた人々は何が起きたのか尋ねては、
「踊んねえ」魔法のように自由兄が唱えると人々は踊りに参加した。新聞を中心に次第に円は広がった。円は広がり過ぎて、道の端から端まで行ってしまう。これ以上円が広がらず面白くないと自由兄はもっと沢山の人が参加できることを考え付く。
「王城の前でやろうぜ。あそこは広く盛り上がるぞ」
「いいすね」
「やりましょう。連れとか集めてきますよ」
「集めろ集めろ」自由兄と若い男A・Bは王城の前でイベントを無計画で開くのだった。
翌日。新聞一面に王はやめろ。またしてもデモが起きる。切っ掛けは王の謝罪文に対する怒りを若者が新聞に叩き付ける行為が発端。それが発展してフォークダンスイベントになりデモに繋がった。逮捕者数人出ると紙面を踊った。
王城ではこの記事を破る人物がいた。王だ。王は自室で椅子に座り新聞を十文字に手で切り裂いた。大臣は記事について説教を受けていた。
「忌々しい民衆め。どうにかして、儂の信用を回復せねば。大臣いい方法を考えろ」
「はあ。考えてみます」白髪が抜ける思いの大臣だった。
新聞は勇者と賢者も王都宿屋で読み、勇気を貰っていた。
「次の裁判のためにも六つ目を探さないといけないな」勇者が投げ掛け、
「六つ目ですか。見つかりますかね」と否定的なことを賢者が返した。
「腰を折るようなこと言うなよ」怒り気味で勇者が話した。
賢者は六つ目を見つけることに反対していた。これ以上勇者に裁判をして欲しくないためだ。賢者は勇者に六つ目を探させない方法を模索した。結果、新聞に報奨金で魔物探していますと冗談のような広告を出そうと。
「お前本気か。他人に任してどうする。俺の問題だぞ」
「この広い世界、当てもなく探していたら、一生見つかりませんよ。ここを拠点に情報を集め探すのです。遠回りでも後々には近道ですよ」賢者は勇者を説得し、二人は王都宿屋を拠点に情報集めすることになった。
第二回名誉裁判二週間後、王都宿屋の勇者が泊まる部屋に赤い人物がやって来た。赤い人物は勇者が求めていた例の魔物の件で。
「勇者さん。六つ目魔物を連れて来たら、金を貰えるのは嘘じゃないだろうな」部屋の扉近くに赤い人物が立って言った。賢者は赤い人物の左隣に立つ。勇者は椅子に座り机上に両肘を付き、両指を絡ませ、手の上に顎を乗せていた。
鋭い目つきで勇者が赤い人物に言った。
「六つ目魔物だったら金を払う。ただし、俺が思っている六つ目ではなかったら一切払わないぞ。現物を見せろ。それともどこかに見に行かないといけないか」
赤の人物の右口角が上がった。
「現物を見せてもいいが先に報酬の十分の一、金を払って貰えねえか?保険として」
「分かった。払う」と勇者は椅子の後ろの木箱を空け米が三百グラム入りそうな袋を取り出した。
袋を持ち上げ赤の人物に投げた。
「どん」袋は赤の人物の目の前に落ちた。
「頂きますぜ」赤の人物は袋に手を伸ばした。袋を掴み持ち上げようとするが、賢者が赤の人物の手を掴み阻止。
「金を貰う前に先に六つ目の居る場所を言え」
「賢者さん。警戒心が強いねえ」賢者の手を払い赤の人物は懐に袋を入れた。
「早く六つ目の場所を」神経質に賢者が問い詰めた。
「はい。はい。六つ目は宿屋前に居るぜ。付いてきな」赤の人物が勇者を見て親指を立て部屋の外に出ろと合図を送った。
「ばん」垂直に勇者は立ち上がった。椅子を引かずに立ったせいで、机は勇者の太腿に弾かれ前方に倒れた。机を飛び越え、勇者は赤の人物に向かい突進。
赤の人物、賢者が驚く隙を与えず、
「行くぞ」と勇者は言って二人の首辺りに腕を叩き込んだ。
「どん」音が鳴った後、勇者は二人の首に腕を巻き付け、部屋を出て行った。勇者は急いで階段を降りるので、二人は悪路を走る馬車の中にいるような感覚を味わう。ついでに壁や柱に接触、痣が出来た。二人が勇者から解放されたのは宿屋前だった。
「どっさ」二人は投げ出され倒れた。二人ともフラフラで中々立ち上がれない。勇者が思いっ切り首を絞めたので、二人は血が上った。
「どこに居る」勇者は周りを見ながら言った。宿屋の周りを見てもそれらしき魔物はいなかった。
「おいどこに居る。嘘じゃないだろうな」フラフラで倒れている赤い人物に勇者が苛立つ。赤の人物は手を前に出し、
「待ってくれ。そこの角に居る」路地を指さす赤の人物だった。




