裁判記録
偽薬裁判の記録を読み賢者は次の裁判に備える。
第一回名誉裁判より二日後、王都宿屋で賢者は一人でいた。勇者は冒険者協会薬学部門に魔王を倒せる薬を分析をして貰うため出掛けていた。第二回名誉裁判は一週間後に控える。勇者は協会に着いてもとんぼ返りで帰らないと次の裁判に間に合わないほど切迫する状況だった。当初は偽薬裁判について戦うはずだったが、第一回名誉裁判で約束した資料を揃えるので手一杯に。賢者は賢者で忙しかった。偽薬裁判の裁判記録を読んで再度訴える方法が間違っていないか検討。
賢者は部屋の椅子に座り、机上に裁判記録を置き読み返した。
「え~と原告は王で弁護士が無敗弁護士、被告は勇者で弁護人は医療士?ああ冒険者カウンセラーさんのことだった」と賢者は独り言をしながら裁判記録を暗記する。
「原告。魔王を倒せる薬の成分表を見てください。薬は市販されている目薬と一緒ではないですか」
「被告。違います。薬の成分表は勇者の書に記されていのとは違い、滝の洞窟水(地下湖)が入っていないのでは」
「原告。いいえ。そんなことはないです。全て勇者の書通り入れて、この結果が導き出されたのです」
「被告。でしたら、もう一度薬を調べてください。国王医療機関が作った薬に滝の洞窟水を入れ調べるのです。更に第三者医療機関に頼んで勇者の書通りに作った薬を調べるのはどうでしょうか。裁判長」
「裁判長。却下します。時間の無駄です。原告はすでに勇者の書通りに作っているのです」
「被告。裁判長、薬の成分を多角的に見るべきです。正確なことが分かるはずです。目薬か魔王を倒せる薬か?医薬品を市場に出す折りはそうやって臨床実験をして長い年月が掛るではないですか。時間を下さい」
「裁判長。時間の無駄です。臨床実験と今回の場合では違う」
「ここまでが薬の成分表の争いと。・・何回呼んでも酷い裁判進行だ」呼んだ資料を机の端に避ける賢者は次の資料を取り読んだ。
「被告が証人を呼ぶが誰も来ず。薬の開発、関係医者は病気のため五人全員欠席。酷いな。こんなことって偶然なのかなあ。とんでもない話。被告もかなり証人が来ないことを訴えているが、裁判長は病気では仕方がない・・・勇者が偽薬裁判出たら暴れたかもしれない」
資料を分割して机上に置く賢者だった。更に別の資料を読んだ。
「原告。刑罰ですが、国を騙そうとする勇者の行為は許しがたい。よって死刑を求めます」
「被告。詐欺事件で死刑など聞いたことがありません。懲役刑の執行猶予付きが刑罰として妥当です」
「原告。いいえ。国を欺いたのです。それだけで死刑です」
「被告。他にも如何わしい情報があったと聞きましたが、その人たちはどうなりましたか?」
「原告。王が判断し、詐欺が行われる前に防がれたので、軽罰で済ましています」
「被告。被告人も軽罰に当たるのでは。詐欺は未然に防がれ金などの実害もなかった訳ですし」
「原告。裁判長、被告は詐欺を働いたことを認めています。よって死刑です」
「被告。横暴です。被告人は詐欺事件で使われる刑罰の例えを言っているので、詐欺を認めた訳ではありません。死刑が間違えと言ってるのです」
「裁判長。被告、主張が分かりにくいです。詐欺をしたのですか?してないのですか?」
「被告。詐欺を行っていません」
「裁判長。無罪を主張するのですね」
「被告。はい。それはそうですが・・」
「裁判長。分かりました。無罪を主張すると」
刑罰の争いを見て賢者は理不尽な裁判長と無茶を言う王と、権力の怖さを裁判記録から読み取っていた。最後の資料を賢者が読んだ。資料は判決について。
「裁判長。被告は詐欺を働いたのに反省もせず、無罪を主張した。何と身勝手な、被告の態度を考慮し、最も重い死刑を言い渡す。死刑執行は一週間後、方法は水中に沈め溺死とする」
「被告。裁判長、刑執行が早すぎます」
「裁判長。被告聞きなさい。世間では魔王を倒すための情報が多く流れています。真実か偽情報か?懸賞金欲しさに国は大変なことになっているのです。偽情報を無くすために、見せしめが必要です。だから被告は死刑なのです。原告もこれに懲りたら、懸賞金を廃止するよう命じます」
裁判記録を最後まで読み名誉裁判で戦う方向性を賢者は考えをまとめていた。賢者は頭を掻きながらため息が漏れた。
「証人・だめ・だめ・・・・あ~。全滅。王の仕業なのか。偶然?困るよなあ」立ち上がる賢者、部屋を忙しなく歩き回った。考えを張り巡らしていた。
何度読み返しても当初の計画では勝てない可能性が高かった。第一回名誉裁判で薬が魔王を倒せると証明できたのなら、簡単に済むのにと賢者は憂いながら模索した。しかし、答えは出ず。偽薬裁判に関わった冒険者カウンセラーに相談しようと思いつき、魔法連絡を取るのだった。




