薬は本物?
デモをしたり、魔王を倒せる薬・勇者の書を調べるなど沢山の人に助けてもらいながら、裁判に向け準備は整った。第一回名誉裁判が開廷する。
勇者と賢者は名誉裁判のために原告側の椅子に座り裁判が開かれるのを待っていた。
「始まるんだな。父の名誉を回復させる裁判が」
「長く険しい道でしたね」等と言っていると被告側が国王裁判所の法廷に来た。被告側を見て勇者が賢者に言った。
「あの二人が敵か。王は来ないようだな」
「それはそうでしょう。一国の王が召集されたらこんな数の聴衆では済まされないでしょう」注目度が高い裁判となり法廷には記者だけでなく、関係者と民衆が入った。自由弟・侍・母・盗賊じいさんなどが聴衆席に座った。五分前には自由兄も居たが、騒いで法廷を追い出されていた。
「にしても顔色悪そうだぞ、被告側の大金で雇われた弁護士。見たことないぞあんな青い顔」勇者が青い人物を気に掛けた。青い人物は、青の背広に青の帽子を着け、顔は真っ青を越え体調を表す度合いではない。明らかに法廷で浮く濃い青であった。
「気にしないでください。肌の色など関係ないのです。裁判に集中しましょう勇者」賢者の言葉に勇者は頷き目を瞑った。
十分後、
「開廷。名誉裁判を始めます」法廷に居た全員が立った。原告と被告は宣言書を読み、両者は主張し合う。
「原告訴えをどうぞ」裁判長が勇者を指びさす。勇者は立ち上がり訴えった。
「先代勇者が魔王を倒せる薬を開発。現在の王が薬の開発に関与する。その薬を作る過程で、魔王を倒せる薬ではなく、目薬ではないかと疑惑が上がる。王は先代勇者が偽薬を作り国を欺く者として、裁判に訴えた。偽薬裁判が開かれ、先代勇者は死刑判決を受けた。その先代勇者の名誉回復と王の謝罪、事件に関与した者たちを刑事訴訟したい」勇ましい顔で勇者は読み上げた。その顔は魔物と戦っている時分に出すものだった。
勇者が椅子に座ると、
「被告弁護どうぞ」被告を指さす裁判長。白髪の大臣は立ち上がり主張した。
「すでに偽薬裁判で判決は下されているのです。これ以上争う必要があるでしょうか。被告側は偽薬裁判の判決を主張します」被告が座り、お互いの意見が飛び交う戦いに。
「原告は訴える根拠を提示してください」
賢者は机に置かれた本を持ち主張した。
「私が持っている本は勇者の書です。この本には魔王を倒せる薬の記述があります。これを参考に先代勇者と王は薬の共同開発をしています。ですが、王が作った薬には一つ致命的欠陥がありました。滝の洞窟の地下湖の水が含まれてないのです」聴衆、裁判官は固唾を飲んで聞いている。
「前の偽薬裁判では、魔王が倒せる薬は偽物と証明されたのですが、この度原告が勇者の書通り魔王を倒せる薬を使い魔王を見事に倒し、立証されたのです。これにより偽薬裁判の偽薬の判決は違います」賢者は言い切った後、勇者の書を置き、紙を掲げた。
「次に原告が魔王を倒した折に使った薬を調べた成分表です。ここに書かれた成分は勇者の書に記された成分と一致しました」手に持っていた成分表を勇者に渡し、別の紙を賢者が持ち上げた。
「これは成分表を調べた冒険者協会薬学部門主任の鑑定書です。勇者紙を」勇者は立ち上がり裁判官に資料の複製を渡した。
「どうぞ」嫌味を込め勇者は被告側にも渡し、椅子に座った。
資料に軽く目を通す裁判官・被告側。原告側が根拠を提示が終わると、
「被告側は意見をどうぞ」裁判長に言われ被告側(青の人物)が原告の根拠を崩しに掛かった。
「勇者の書に記された薬は本当に魔王に効きましたか。魔王を倒した状況は我々には分かりません。誰が証明できます。勇者出来ます?賢者はどうです」青の人物は原告側を手でさす。
「意見があります」賢者は手を上げる。
「原告はどうぞ」裁判官は賢者を指さす。
「はい。勇者の戦った記憶は冒険者協会魔法鑑定士に鑑定を受け証明されています」
「いえ。それは不確かだ。魔法鑑定士しか分からないのでは。誰でも分かる明確な証拠がないと薬が効くか分かりません。原告は示せますか」
「原告は示せますか」裁判官が声を掛けた。
勇者と賢者は互いの顔を見た。勇者は待っていましたと言わんばかりの顔で賢者に、
「出番が来たな」と言った。賢者は頷いた。
「すみません係りの方頼みます」ドアに居た監守に賢者が言うと、法廷のドアが開き箱と小瓶が入場した。係員は議場中央に縦横六十センチの机を置き、その上に箱と小瓶を置いた。勇者が立ちあがり、机の傍に行った。
机の上にある箱に手を掛け勇者が開けると、法廷にどよめきが、
「お~」流れた。
「静粛に」裁判官の一言で静かになる。箱の中身は魔王の首だった。勇者は小瓶を手に取り、賢者に目線を送った。勇者の目線を受け賢者は言った。
「これより魔王の首実験を始めます。勇者が手に持ちます小瓶は魔王を倒せる薬が入っています。この薬を魔王の目に掛けると目は溶けます。勇者お願いします」法廷の注目が勇者に集まる。注目されている勇者は自信に満ちた顔で小瓶の蓋を取り持ち上げた。
小瓶はゆっくりと傾き薬が一滴魔王の目に流れた。
「ぽちゃん」
八つ目魔王の目に薬(魔王が倒せる薬)が注がれた。勇者と賢者、白髪の大臣と青の人物が見つめる。
「するん」魔王が倒せる薬は目を流れ下に落ちた。目にはこれといった外傷がなかった。
裁判官九人が疑問そうな顔で見る。
「原告これはどういうことですか」裁判官の一人、裁判長の男が勇者に聞いた。
「ちょっと待ってくれ」手に持つ小瓶の薬を勇者が机上に置かれた魔王の首、四つある目の先程と違う目に注いだ。
「するん」薬は下に落ちた。
「原告」裁判長は何が起きているのか説明を求めた。目には傷一つない。勇者は小瓶を見た。
何だ。何が起きてるんだ。勇者は理解できずにいた。賢者も小瓶を見、魔王の目に視線を移し、立ち上がった。
「勇者。ちゃんと注ぎましたか」と言って賢者は勇者の傍に行き、小瓶を取り上げた。
「するん」賢者は別の目に注ぐが結果は同じだった。
魔王の倒せる薬が効かない。可笑しい。賢者は勇者の顔を見た。勇者も賢者を見、お互いに目線を合す。
「原告。魔王の目に薬は効いているのですか」追い込まれ原告側は苦渋な顔が自然に出た。
それを被告側(大臣と青の人物)は苦笑いで見ていた。




