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勇者裁判  作者: ワンワールド
名誉裁判序曲
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燃え上がるデモ

 デモ結構日朝、王都の宿屋 勇者が泊まる部屋で勇者と賢者・自由兄弟が立って話していた。

自由兄弟は”勇者に裁判を”と書かれた鉢巻を撒き、弟は魔王のコスプレをし、兄は勇者の服を真似た装備をまとった。デモの準備は整い、自由兄弟はいつ出発してもよかった。


 「決行日です。弟君。デモの進行は大丈夫ですね」賢者が真面目な顔で弟に聞いた。


 「はい。頭に入っています」緊張気味に弟が答えた。


 弟を見て勇者が喝を入れた。


 「正念場だぞ。戦ってこい。負けるなよ」と弟のケツを勇者が蹴った。


 「わあ」勇者は軽く蹴ったつもりが、自由弟は前のめりに倒れた。


 「勇者さん危ないじゃないですか」起き上ろうと弟がするも、魔王のコスプレが動きを制限した。弟は手と足をばたばたと悶えた。


 「立てません。助けて」三人が笑いながら弟を起こし上げた。


 「気合い入れすぎたな。悪い」弟に謝る勇者を、ダメですよと賢者が注意した。緊張していた弟が勇者のおかげで加減良く体と心が解れた。


 「デモで騒ぐのが待ちどうしくねえ。なあ弟」

 「そうだね。兄さん。いっぱい騒いで声を挙げよう。そして勇者さんの訴えが認められるようがんばろう」

 「騒ぎまくるぞ」気分を盛り上げ、自由兄弟がデモ集合場所(国王裁判所)に向け部屋を出て行こうとする。意気揚々となっている自由兄弟に賢者と勇者が声を掛けた。


 「私たちも後から様子を伺いに行きますんで、頼みますよ」

 「そうだ頼むぞ。自由兄弟の戦う姿、俺が見届けてやるからな」


勇者たちから勇気を貰った、旗を肩に立て掛け持っている自由弟・横断幕を背中に抱える自由兄が部屋を出て行った。


 


 自由兄弟が出て一時間三十分後、勇者と賢者はデモ会場である王城にいた。


 王城の門前ではデモが盛り上がっていた。鉢巻をした人、旗を振る人、音を出す人(太鼓・ラッパ・歌を口ずさむ)、コスプレする人など思い思いに訴えた。


 「訴えを認めろ。裁判を開け」

 「国が動け。王が動け」勇者たちが考えた言葉が叫ばれる。


 勇者と賢者は会場の最後尾に着くなり、デモの盛り上がりと人数の多さにびっくりした。


 「すごい人数がいますね」賢者は自由兄弟やるなあ。百人集まれば御の字だと思っていたのにと、期待を大きく裏切られ喜んだ。デモ会場には千人も参加者が集っていた。


 「盛り上がっているな。何だ、この熱気」デモの様子を勇者が注視していると、一番熱気がある場所に自由兄弟がいた。


 「さいばん!さいばん!」手を高く突き上げ自由兄がデモを扇動。弟は魔王のコスプレで両手を突き上げたり、デモ会場を走り回り盛り上がるようあおる。そんな熱気を目の当たりにして勇者は、

 「自由兄弟やるな・・・うお~」心に熱い物が込み上げる。


 賢者は勇者の熱気を感じ取った。勇者の肩を両手で押さえた。


 「参加しないでくださいよ」両手からは勇者の熱気が伝わった。


 その後もデモは盛り上がる。サッカーのサポーターのようにデモ参加者が縦揺れになった。


 「ゆうしゃ。パチパチゆうしゃ」手拍子をつけどんどん盛り上がる。う~お。参加したい。戦いたい。勇者の思いが膨れ上がる。賢者は勇者の顔色を伺った。


 あっ。やばい。このままではこの人参加してしまうと思い込む。


 賢者の両手は勇者の肩を離れ腰に回る。勇者を抑止する行動を強めた。


 「うっ」腰に手を回され勇者の熱気が収まる。


 「お前何してる」勇者は賢者の顔を見た。いえいえと賢者は笑っていた。気持ちわるいなこいつと勇者の熱気が別の感情に支配された。


 勇者が賢者に抱き着かれている間にデモの声が鳴りやむ。勇者と賢者の目線がデモに注がれた。デモの会場に居た人を制するように自由兄がデモ参加者に語りだした。


 「暇じゃねえのに参加してくれてありがと。今日は俺っちの親友、勇者っちのために」デモ会場が一瞬盛り上がり・・数秒でまた静かに。


 「みんな知ってるしょ。勇者が英雄なの。俺っちらを魔物から守ってくれたんだぜ。かっこよくねえ」


 「かっこいい」と黄色い歓声がデモ会場に流れた。それを聞いて勇者は笑顔になる。賢者も自由兄の話を聞くのに集中し、勇者の腰に回る手が少し緩む。


 「英雄が救ってくれたのに、みんなお礼いっただけ。何か寂しくねえ。恩返ししないと変しょ」


 会場が一気に盛り上がった。熱気はデモに参加してない人々を引き付ける、だけではなかった。猫や犬、カラスなど動物たちも何事が起きていると感じ取った。猫が駆け回り、犬は吠え、城の屋根に集団で留まり様子を見るカラスなど動物それぞれ本能で行動した。デモ会場にに居たら誰しもが何らかの気持ちを抱く。勇者もしかりだった。


 「だあ~」腰に巻かれた手を振りほどき、勇者はデモ会場の自由兄弟を目指した。


 「あ~」振りほどかれた賢者は前のめりに倒れ、

 「勇者待ってください」と手を伸ばす。借金取りに金を持って行かれる人のようだった。


 勇者はデモの群衆を掻き分け、自由兄の元へ。


 「何だ」「押すなよ」強引に勇者がデモの中に入って行くので参加者から声が漏れた。何とか人の波を乗り越自由兄の元へ辿り着き、

 

 「俺もやるぞ」勇者は自由兄に目線をチラッと合して、


 「俺に裁判させろ。王は裁判所に訴えを認めるよ、言え!」鬱憤うっぷんを勇者が叫んで晴らす。


 自由兄は目を丸くした。しかし勇者が盛り上がっているのを見ておもしろがった。


 「そうだ。さいばんさせろ」声を張り上げる自由兄がいた。魔王のコスプレの中で弟は混乱した。勇者さんがここに居るの。まずいんじゃ。と弟は突っ立ていた。


 勇者に逃げられた賢者は起き上りデモの中へ入って行った。これ以上デモに関わってはいけない。この場に居る人々に勇者の存在を知られては水の泡だ。賢者は心配したが、


 「勇者っちが来てくれたぞ」正体をばらす声がデモ会場に響いた。


 「・・・・うお~」熱気がデモ会場を突き抜けた。賢者の耳に勇者の存在を告げる声と熱気を受け、計画の終わりを悟った。


 すっとんと賢者はその場にショックで座り込んでしまった。


 正体を告げたのは自由兄で勇者を肩車し勇者の存在を報した。


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