自由を求めるデモ2
デモ開始日一週間前、王都の宿屋に勇者・賢者・自由兄弟が集まった。デモの打ち合わせを勇者の泊まっている部屋でした。
「衣装かっこいいしょ。ほれここ。この目八つかっこよくねえ」デモのため自由兄弟は衣装を持参。魔王のぬいぐるみと勇者の服装二点。
「賢者っち。その目は弟に自分の衣装つくってほしかたなあ」
自由兄が賢者の肩に手を掛け頬を指で突く。
「ははは。いいえ。いいですから」苦笑いで賢者は断った。
「そんな謙遜しちゃって。作ちゃうよ。ただし~ただじゃねえ~」一人で自由兄が笑っていた。
弟はすみませんと言う顔をした。
勇者も蹴って炎系魔法をかます。と頭の中で実行する。しかし現実はデモの主催者。我慢だ。自分に言い聞かせた。
自由兄がいたら勇者が切れてしまうと賢者は思い、デモのビラを配るよう自由兄に頼んだ。勇者と賢者は自由兄弟と会う前にデモのビラを作っていた。
「ビラ配るのおもしろそうじゃん。配るの初体験。おもろくねえ弟。高速ビラ配り魅してやる。しゅっしゅっ」ビラを持って手裏剣のように飛ばす自由兄。弟がビラを広い、兄と一緒にビラ配りに行こうとした。
「弟君は残って、デモの打ち合わせするので」部屋より出ようとする弟の足が止まった。
それを自由兄が見て、
「行かないわけ」
「兄さんごめん。一人で配って来て」
「弟こねえのか。おもしろさ半減じゃん」とビラを持ち自由兄は寂しく出て行った。
三人になると弟は、
「兄が迷惑かけて申し訳ないです」
「気にすんな」
「そうですよ」勇者と賢者は自由兄の言動に慣れが生じつつあった。
「デモの進行と趣旨を確認しときますよ」
「はい。お願いします」
「しっかり弟に教えろよ」デモ担当のはずの勇者が賢者にデモの説明を任した。
「任せてください」手で賢者は胸を叩く。
「進行ルートは、集合場所を国王裁判所。そこで一時間声を上げ、王城に移動。移動中声を上げ続けること」弟は紙に賢者の話をメモる。
「王城に付いたら一時間声ね。で、解散。分かった流れは」
「国王裁判所。王城・・はい。いけます」
「うん。じゃあ趣旨を説明するよ」
メモする紙を変え弟は聞いた。
「勇者は魔王を倒した英雄。人類に多大なる貢献をしてくれた。その勇者の願いを国が聞き届けても。新聞に書かれた訴えは誰もが裁判を開けないのは裁判所の間違いだ。国の間違えだ。ここが大事だよ。訴えは正当だと強く声を上げてください」メモに訴えは正当と太く重要と弟は書いた。
「ようは、勇者は英雄。国は願いを叶えろ。訴えは正当だからでよいでしょうか」
「うん。理解できたみたいだね」
賢者と弟の会話を聞いた勇者は口を挿む。
「弟。メモしとくんだぞ。勇者は英雄。魔王を倒した英雄だぞ」英雄の響きに勇者はご満悦。
弟は軽く頷き、賢者は進行の邪魔をしないでくださいと忠告。
「悪い。進行してくれ」賢者に説明を任せた手前勇者は無理を言わなかった。
「デモの時、使う単語?言葉?フレーズというものですか。それを決めましょう」勇者も話に入り三人はデモで叫ぶ言葉を考えた。
「訴えを認めろ。裁判を開け」勇者が提案した。
「まあ定番ですね」
「いいと思います」と賢者と弟は勇者の案を受け入れた。まず一つ決まった。
「新聞を見たぞ!裁判所は不当だ。訴えは正当だ」意見を述べる賢者。
「語尾がいいな」
「正当・不当は分かりやすいです」賢者の意見も採用された。
「英雄の願いを叶えろ。国は動け。人類の貢献者を救え。人類を救った英雄を今度は自分たちが救う番だ」自信な下げに弟は提案した。
「長い、長すぎだ」
「まとまりがないですね。一つ一つは使えますよ」
「確かにな。短く使い回せばいける」修正され弟の意見も採用。
他にもデモで使われる楽器や旗、鉢巻など道具類も決めた。そして賢者は最も重要なことを弟に話した。
「デモは恐ろしいよ。勝手に暴走したら、自分たちの意図と違う方向に行くからね」
びくついた顔で弟は尋ねた。
「暴動ですか」
「うん。怪我人が出たり運が悪かったら死人も出る。他にも建物破壊もあるし、強盗だって起きるかも。何が起きるか分からないよ。あっ、放火もあった」
「うわ~やる自信ないです」殺伐とした賢者の言い方に弟は心配になった。
「デモできるかなあ・・・不安になってきました」
弟だけでなく勇者も不安に。自由兄弟にデモの主催が出来るのか。俺の選択は間違いだったかも。その気持ちを賢者に告げようと、
「弟、ちょっと待っていろ。おい。外にデモの道具の買い出しにいくぞ」宿屋を後にする賢者と勇者だった。
生地屋へ勇者と賢者は旗、鉢巻、横断幕に使う無地の布を探しに行った。その途中、
「お前言い過ぎたぞ。弟をあそこまで怖がらせて、らしくないな」
「まあ、怖がらせ過ぎたと思いますけど。あれぐらい言って丁度いいですよ。実際のデモをやるのは大変ですから。覚悟が必要ですので、弟君には分かって欲しかったのです」
「覚悟か・・・自由兄弟には・・無いな」
「ないでしょうね」
「デモやれるか。俺が出るしかないな」
「趣旨が変わりますのでおやめください」お店で暴れる客を注意する店員のように、賢者が振舞った。
「分かった。あ~もどかしい」弟を気遣いつつも、勇者は前に出たかった。
勇者と賢者は布を買い、宿屋の泊まっている部屋に戻った。
「帰ったぞ」
部屋の扉を勇者が開けると、誰も居なかった。
「弟?」
周りを確かめながら勇者は部屋の中へ。続けて賢者も部屋に入る。
「うん。弟君」賢者も自由弟を探した。
二人は数秒部屋の中を見、目線が合った。
「いないぞ」
「いませんね」はっ、と勇者は思った。
「逃げたな」
「えっ」びっくりした顔に賢者がなる。
一間空け、
「ありえませんよ」と勇者の飛躍的想像だと言わん顔に賢者の表情が変わった。
「だといいがな。探しに行くぞ!」勢いで勇者が出て行こうとした。
そこを冷静に賢者が止めた。
「魔法連絡かけましょう。用事があったのかもしれません。帰って来るかも」
「そうだな」出て行くのを勇者は止め、自由弟に魔法連絡をした。
「弟。何している。部屋を抜け、どこにいるんだ」勇者はイライラする。
落ち着いてくださいと小声で賢者が言う。
黙ってろと勇者の顔が言っているように、賢者を見た。その顔に賢者も静かに経緯を見守った。
「・・・何・・・兄といる」賢者の心配は消えつつあった。
「ビラ配りを手伝っている。・・・いいんだ。気にするな」魔法連絡を切り、勇者は賢者に弟は自由兄のビラ配りを手伝いに行っただけと事情を説明。話を聞き賢者の心配がどっかに飛び、弾けて消えた。
「逃げてないだろ」と勇者が自分の発言を否定した。
「はいはい」軽く賢者も勇者を否した。
数時間後の宿屋、勇者の部屋に自由兄弟が揃い、勇者と賢者を合わせた四人がいた。食事をし、今日あった出来事を楽しく話た。
「逃げた何て、勇者っち。ひどいんじゃねえ?」
「悪かった。俺の早とちりだ」
「勇者はせっかちなんです」
「そうですよ。自信はないですけどがんばりますんで」
「俺ばっかり悪者にするな」四人は勇者をつまみに食事した。
食事も済、夜になった。
「どっか酒飲みにいかねえ」夜の歓楽街に遊びに自由兄が三人を誘う。
「気分になれるか。訴えが認められないのに、飲めん」きつく勇者は誘いを蹴った。
「誘いはうれしいのですが、私も勇者の考えと一緒で、・・すみません」やんわりと賢者はかわした。
「ちっ。乗りわる。弟遊びに行くぞ~」自由兄は勇者と賢者に断られ、やけっぱちに弟を誘った。
嫌そうな顔で弟は言った。
「兄さん。自分は行かないよ」
弟なら絶対来てくれるものと思っていた自由兄がびっくりし、確認がてら誘った。
「来ねえの」
「うん。更生プログラムで言ったじゃないか。遊ぶ金欲しさに犯罪をしたって。だから、遊ぶのやめてまっとうになろうって言ったはずだよ」
弟の正論に自由兄は言い返せずに、
「ふん。一人寂しくいくよ。ああ~楽しいことが待ってるのに~」扉を開け、自由兄は出て行った。
「あきれたやつ」勇者は自由兄が嫌いだと言う度合いが大きくなる。
「すみません。あれでも」弟が勇者たちに謝っていると、
「たのしいのになあ~」部屋の外より自由兄が吠える声が部屋に響いてきた。
「迷惑な。一発蹴って、燃やすぞ」目をぎらつかせる勇者。
落ち着かせようと賢者と弟は取り繕う。
「お客様大きな声を」と宿主の声が部屋に聞こえてきた。勇者の目の光が薄れ、いい気味と笑みがこぼれた。
「飲みにいかねえ。おばちゃん」自由兄の声が続け様に聞こえた。三人は吹き出す。
「あいつバカだ。だがめげないな」
「本当に」
「兄が迷惑かけます」
勇者の機嫌は直った。前向きなバカさはいいな。俺がデモの主催者に選んだ理由、ここを気に入っていたのかもと分析するのだった。
自由兄が出て行き、弟は兄弟で一緒に泊まっている部屋に戻った。弟が行くと勇者と賢者は寝た。
その晩自由兄は帰ってこなかった。




