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勇者裁判  作者: ワンワールド
名誉裁判序曲
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やるの、やらないの

 デモ一カ月前。前裁判所が訴えを受理するまで、黒い森の近くの町、宿屋で待つことになった。


 魔王を倒しに宿屋を出て以来、ここに来るのはひさしぶりだった。再開を懐かしむ勇者と賢者と宿主の光景が花開いた。後、宿主は勇者にある人物が残した伝言を告げた。


 伝言を聞くと勇者は宿主に聞き返した。

 

 「えっ。更生プログラムに参加した侍だって」勇者に伝言を残していたのは侍だった。


 宿主が伝言を繰り返した。伝言は勇者に会って話がしたい。冒険者協会に連絡を入れてください。冒険者番号千百十ですだった。


 「ふ~ん、伝言確かに受け取った」


 仲が良かったわけもなく、深い関係でもない。どうして伝言を残していたのだろう。と勇者は不思議に感じた。のは一時で、部屋に向かう頃にはすっかり訴えで頭が一杯になっていた。


 


 デモ開催三週間前。勇者の元に裁判所から通知が来た。


 勇者の泊まる部屋。


 「開けていいですか」鋏を持った賢者。


 「開けてくれ」落ち着かない様子の勇者が立っている。


 賢者が裁判所の通知が入った封筒を切る。封筒より通知の紙を出し、

 「勇者読みますか」と通知を賢者が勇者に渡そうとした。


 「お前が呼んでくれ」通知を見るのが怖く、勇者は合格通知を受ける受験生のように振る舞った。


 「勇者様」通知内容を賢者が読み上げた。


 通知は“訴えは認められません”一言書いているだけだった。


 勇者は通知を聞き終えると寝台を蹴った。


 「どん」中途半端な音が鳴る。大きい音でもなく小さな音でもない音。

 

 「くそ」勇者は無念を吐き捨て、「あ~~~」更に鬱屈とした気持ちも吐き出した。


 気持ちを表している間、勇者は両手の拳を握り中腰で踏ん張った。下を向いて。


 勇者は顔を上げ中腰のまま賢者を見た。

 どっきとする賢者、鋭い眼光で勇者が見るので。

 勇者は中腰を止め賢者に近寄ってきた。

 寄ってくる勇者を見て、賢者は固まってしまった。肉食動物に襲われる獲物がごとく。

 賢者に向かい手を伸ばす勇者が言った。


 「手紙をよこせ」


 賢者から通知を奪い両手で持ち勇者は目を通す。


 蹴られなくてよかった。宿屋壊すのかと思ったけど、何もなくて本当によかった。賢者はほっとした。


 読めば読むほど勇者は怒りが込み上げ、手紙が震えだす。

  

 「ホノオ」


 炎系魔法を使い右手に炎が出ると同時に通知を焼却。


 通知は散り一つ残らなかった。


 「ああ・・・あ。もう勇者は」賢者は呆れた。またかと。




 勇者と賢者は次の手を考えるため、魔法連絡を使い冒険者カウンセラーに相談した。

 

 「先生。・・・言う訳だ」寝台の縁に座り勇者が言った。


 賢者は椅子に座って勇者を見る。


 「裁判所に提出した訴状に変な所はない」勇者は頷いて、魔法連絡を一時解いた。


 「訴状の紙の写し」訴状の紙を賢者に探すよう、勇者が頼んだ。


 持ち物を探し賢者はすぐに見つけた。


 「貸してくれ」訴状は賢者より勇者に渡った。


 口を押え勇者が魔法連絡を使う。


 「先生。訴状には・・・」勇者は訴状を読み上げた。


 読み終えると寝台の上に置いた。


 「訴状に間違いはない・・うん・・うん・・弁護士に頼め?・・・分かった。聞いてみる」


 勇者は口を押え魔法連絡を切った。賢者に冒険者カウンセラーと話した内容を教えた。


 「弁護士に訴状を見てもらい。間違っていないか確かめるのですね」内容を理解した賢者が言った。


 「専門家に任せろと先生はな。初めからそうしていれば、面倒はなかった。お前がお金がもったいない。任せてくれ~と言うから」


 「すみません」賢者は嫌味を言われ謝罪。裁判の経験で訴状ぐらい一人でやれると思っていた。



 訴えの通知を受け次の日、冒険者協会訴訟担当部門のある協会五階に勇者と賢者は居た。裁判でお世話になった、冒険者協会訴訟担当弁護士の元に向かったらだ。

  

 訴訟担当部門の部屋は、裁判関係の資料と本が整然と詰まった棚が並び、部屋の中は、一人ひとり仕事場の空間を区切られてあった。


 「お掛けになってください」勇者と賢者は椅子に座って担当者を待っていた。


 五分後、お盆を持った担当者が来た。お盆上には、コーヒーが入ったコップが三つあった。担当者は二人にコーヒーを配った。勇者はブラック。賢者はコーヒーの横に付いていた砂糖とクリームを使いマイルドで飲んだ。


 担当者も椅子に座り訴状について相談した。


 「訴状ですか。訴えたと聞いていましたが、まさか私の元に話が来るとは思いませんでした」


 苦笑いする二人。


 顎を一度触り訴訟担当は訴状を求めた。


 「訴状持ってます」


 賢者は頷き訴状の写しを担当者に見せた。


 真剣な顔で担当者は見る。眉間には皺が寄っていた。


 二人は不安に結果を待った。


 眉間の皺が無くなり担当者が結果を述べた。

 

 「訴状に間違いは無さそうです」

 

 「よし」と勇者が言う、途端に二人は手と手をぶつけた。目線を確認せずに。

 

 「ばちん」と部屋中に響く。


 勇者と賢者は喜びの感情が条件反射で出てしまう。


 加えて拳を揺らしながら、よし・よし・を勇者は立って連発する。


 「静かにお願いします」担当者が二人に説教した。


 勇者は椅子へ座りムスッとした顔に、すいませんと賢者は立って頭を下げ、二人は静かにした。


 静かになると、

 「魔王を倒し英雄になっても変わらないですね」チクリと担当者が刺した。


 勇者裁判での記憶を思い出し、毒づきたくなり担当者言ってしまう。


 雰囲気が悪くなるかと思えたが、担当者が軽く言い過ぎましたと謝った。


 二人も気にせず話は進んだ。


 「訴えが受理されてもいい」と担当者が言ったら、二人は断られた理由を聞く。


 担当者の答えはこうだった。

 「分からない。審議した裁判官に聞かないと」普通の返しで、二人も拍子抜けで、体が緩んだ。


 勇者はそりゃあ超能力者じゃないんだと考え。賢者は専門家の視点から話が出ると期待を抱いていた。だから裏切られた気持ちになるが収穫はあった。冒険者裁判所がいけなくても、国王裁判所に訴えてみたらどうだと担当者が言い、訴状が認められる方法まで教えた。


 「条件は難しいです。世間の注目を浴びている訴えで筋が通っている。この点に勇者の訴える気持ちが裁判所に伝われば裁判は開けるでしょう」


 賢者は担当者に聞いた話を紙に書いた。一生懸命賢者が書いている横で勇者は担当者に礼を言った。


 「世話になった。訴えがなったら礼に来る」


 「気にしないでください」勇者と関わりたくないと担当者は思いつつ、笑顔で二人を追い返した。



 部屋に戻るとさっそく二人は冒険者カウンセラーに魔法連絡した。訴訟担当弁護士との経過を冒険者カウンセラーに知らせた。


 「先生の意見は」訴えを認めさせる策を勇者が求めた。


 冒険者カウンセラーはこう助言した。世間に知ってもらうため、新聞を利用した宣伝。次にデモを王立裁判所・王城でする案。世間が勇者の裁判を求めているのだと、裁判所に知ってもらう効果があるはず。


 「すごい手だ」勇者は感動。その助言を賢者に教えた。


 「使えますね」頷き賢者の目は輝いた。


二人は助言に従って行動を起こす。勇者と賢者は担当を決めることにした。


 「新聞に宣伝を頼むのはどっちがする」


 「私がします」自ら賢者は積極的に志願した。訳は勇者では新聞社に乗り込んだら、暴れそうだと想像。それに、裁判の取材で勇者がボロを出てしまい、誤解が生まれるのが怖くもあった。


 賢者の積極性を勇者は買った。深く考えず。新聞に宣伝を頼むのは賢者が担当に。


 「デモの船頭は俺がする訳だ」

 「ああその言い方。デモに思いっきり参加する気ですね。いけませんよ」デモの仕方で勇者と賢者は違うことに賢者が気付いた。


 勇者は自分が表立ってデモを指揮し、訴える姿を浮かべていた。


 賢者はデモの裏方になり、世間が勇者に裁判を開かせてやってくれ見たいな映像を浮かべた。


 「俺は全面に出た方がいいぞ」

 「出る訳は」

 「かっこよく。目立つ」勇者の意見は安かった。


 呆れて目を覆う賢者は、論理的に自分の考えを述べた。


 「世間が求めていると言うのが大事です。自分たちが表に立ってやったら、裁判官に良い印象を与えられないのです。それにデモ後、国王裁判所に訴える手順はですね。新聞にデモの談話を乗せ、感謝と訴えた胸を世間に知らし裁判所に圧力を掛け訴状を出す。どうですか」話してる内に賢者は裁判への筋書きが見えた。勇者も漠然と先が見えたので賢者の意見通りに動くことを決めた。


 デモを担当するのは勇者に決まり二人は別行動をとった。




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