まつり
勇者が宿屋を去って一ヶ月。王都では祭が開かれた。
「バンバン」花火が上がった。
「おいしいよ」露店が並んだ。
人々は飲み、踊り、騒ぎ、ある言葉を呪文のように叫んだ。
「ゆうしゃ!」
口々に感謝や称える言葉が町中、地域中、世界中に広まった。王都の祭に一台の馬車がやってきた。王都の主要道を通る。その馬車に人々が群がった。
「顔見せて」
「握手」
「ありがとう。勇者」など馬車に声を掛ける。馬車の中に勇者と賢者がいた。荷物の箱と一緒に。
「ふあはっはあはっは」上機嫌な勇者が人間らしからぬ、未知の生物の笑い声を出す。
賢者はそれを聞き一緒に笑った。ただし、賢者は人間の笑い声だ。
勇者は気持ちが乗り車内より半身を出す。
「どうも。勇者です。魔王を倒しました」車内の手すりを持ち片手を振った。
身が乗り出しそうになる勇者を賢者が支えた。勇者は魔王を倒し英雄になった。力いっぱい声援に答える勇者を賢者は見て、こんな言葉が言える日が来たんだと感動した。そんな気持ちを踏みにじり勇者は隣に置かれた箱を叩き、
「おい、こいつ見物人に見せてやろうか」
「ああ。そんな雑に扱ってはダメです」説教する賢者は箱を取り上げた。こいう所が直れば伝説の勇者になれるのにと嘆いた。
馬車は王城に着いた。魔王を倒した記念の式典が城であった。勇者たちはそれに呼ばれ王都に凱旋パレードをしたのだ。
式典会場は王の間。王が代々戴冠式をする場所でもあった。歴代の王の石造がずらりと並んで部屋中を囲んだ。天井はアーチ状の石造り、窓は色ガラスがはめ込まれ光が部屋の中心を照らした。
「王様の入場」
王が会場に現れた。会場で唯一ある豪華な椅子に座った。王は式典用に毛皮のマントを羽織り、赤い衣を身に纏っていた。
「英雄、勇者様と賢者様入場」ラッパが鳴った。
音楽隊が音を奏でる。音はきびきびと高く、勇者たちが着たことを人々に知らせた。式典に出席した賓客たちは、一様に勇者たちを品定めする。お近づきになりたい者、嫉妬心がある者、どちらともいえない者たちだ。
勇者たちは姿勢を正し立った。勇者の手には例の箱を持ち、部屋の真ん中で野ざらしになった。
数分後会場が静まると司会者らしき男が声を上げた。
「勇者様は王の前へ」命令を聞き勇者は王の前にいった。賢者はその場に留まった。
勇者が箱と共に王の前に行った。
「勇者様献上」と言われ、勇者は箱を降ろし開けた。
「お~」会場にどよめきが起こる。
「あれが魔王の首」箱の中身は魔王の首だった。
王は箱の中身を見、嫌そうな顔をみせた。魔王の顔は壮絶な戦いを物語る狂気じみた雰囲気があった。魔王には目が八つあった。しかし、半数が跡形もなく空洞があるだけだった。王は箱を閉じるよう勇者に手振りで知らせた。
はい。はい。怖いんだろ。ちょっとだけ王をおちょくるか。勇者は箱より魔王の首を吊り上げた。
「お~悍ましい」会場がざわめいた。
その反応にしたり顔に勇者はなる。俺がやったんだ。俺を見てくれ。と高揚した。
王は勇者に嫉妬した。注目を一身に集めていたので。進行係に目線で威圧する。
一人の従者が留め印がしてある紙を王の元へ運んだ。王は紙に施された印を解いた。丸まった紙を開き広げた。唐突に王は紙に記された文字を読み上げた。
「平和勲章授与」
「勇者殿。魔王を倒し、世界に平和を齎された」
驚き勇者は箱に魔王の首を乱暴に入れた。
「人民に代わり王として感謝を述べる」
魔王の首が箱より半分出ていた。その姿に賢者は我慢できず直そうと屈んだ。
「感謝の気持ちを表す平和勲章を贈る」
そんなことはいいからやめろと、勇者は小声で賢者に言う。
きっちり入れなければと、賢者が呟き魔王の首をしまう。
紙を閉じ丸め、王は従者に渡した。
従者は紙と平和勲章の星型章を交換。
王と勇者は接近。
入らない。でも勇者の晴れの舞台を見たい。ええい。賢者は姿勢を正し立った。
王は星型章を勇者の胸に着け、言った。
「よくやった。魔王を倒す勇気。私も見習いたい」
王は勇者の肩をポンポン叩き、握手を交わした。その手を外さず挙げる。
賓客に王と勇者は仲が良いいと見せつけた。王は笑顔で、勇者は苦笑いをする。何でお前と仲良さそうにしないといけない。手を思いっきりギュンとしてやろうかなどを勇者は考えた。
賢者は涙を流し拍手した。
魔王の首は箱からはみ出でていた。
勲章が胸に光る勇者が王の城を出た。馬車に乗り実家へ帰省する。
「おめでとう。これで立派な勇者ですね。私も嬉しいです」
親友であり、魔王を倒した仲間、兄弟見たいな勇者との関係が、賢者を泣かした。
「泣くな、泣くな。笑え。俺たちは魔王を倒し世間に認められた。まあ、王に勲章を貰うのは腹が立つがな」と言われ、賢者は涙を拭い笑顔に戻った。
「王に勲章貰うのは確かに釈然としませんでした」だろっと、勇者は共感する。
「ですが、王に復讐する機会、到来です」
「到来だな。この俺が父の無念を裁判で晴らす」
「裁判で受けた罰は裁判で返しましょう。勇者の実家に行き、お母上にも相談ですね」
「だな。お袋も喜び、美味しい料理作ってくれるぞ」
「料理楽しみです」和む二人だったが、勇者がある人物を思い出した。
「盗賊じいさん。元気にしているかな」
すっかり賢者も催事が忙しく忘れていた。
「盗賊おじいさん。魔王を倒す手伝いまでしてくれましたから」
「あの年で魔物の最高峰に挑むんだ。すげえな」
「はい。尊敬できます。私たちがあの年齢で戦うのは考えられません」
「そうか。俺は戦う。盗賊じいさんを超え永遠にだ」
目が本気な勇者を見、この人ならやり遂げると賢者は思った。
「盗賊じいさんは引退した。とりあえず俺の新たな目標ができたな」
「いいですね。私は付いていけませんが」
二人は数秒笑い、残念な顔になった。
盗賊じいさんが式典やら祝い事を拒否し、静かに暮らしたいと言っていたからだ。そんな思いを抱きつつ、馬車は勇者の実家へ向かった。
勇者は魔王を倒す目標を達成した。そして、次なる目標が出来た。父の名誉を回復すること。名誉裁判へと続きます。




