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勇者裁判  作者: ワンワールド
緑錆の海裁判/因縁
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24/49

助太刀

 「ぐ~。ぐ~わん、わん」包帯がぐるぐる巻きの猿轡さるぐつわを嵌めた犬が吠える。その傍に小さな男の子がいた。男の子はミイラに見える犬を挑発するように右手を出し、

 「お手」ミイラ犬に小さな男の子が命令した。ミイラ犬は、男の子を鋭い眼光で見た。その口元は涎が垂れている。ミイラ犬は前脚を振り上げた。

 「よし」男の手にミイラ犬の前脚が収まった。男の子は命令を続行したミイラ犬に。おすわり・待てなどを連続。命令を実行したミイラ犬の頭を男の子は撫で、褒めた。我慢して命令を受けていたミイラ犬には、ご褒美の残飯がでた。ミイラ犬は腐った食べ物なら何でもよかった。



 「お~い」男の子とミイラ犬を呼ぶ声が遠くより聞こえた。

 「お~い。お~い。医者の子。魔黒」と人影が男の子とミイラ犬を呼んだ。

 「賢者のお兄ちゃん」人影は賢者だった。

賢者は勇者と別れ四日、小さな小さな集落に着いていた。 

 「わん~ぐ」医者の子と魔黒は賢者に抱きついた。賢者と医者の子は無事を確認し合った。賢者が来たことを医者の子は、父親に伝えに家の中へ。


 医者が家から出て来た。

 「生きていたか」賢者が死んでいないか心配し医者が言った。

 「生きてましたよ。ご無沙汰してます」礼儀正しく賢者は返した。何でこんなに心配してくれるのか、分からなかった。確かに裁判では散々だが、死刑を言い渡された訳じゃないと賢者は思考。医者は賢者の性格をよく知っていた。貧乏性の賢者が賠償金のことを悩み、自殺したのじゃないかと心配していた。

 

 賢者はすぐに本題に入ろうとした。

 「家の中で話したいことがあります」と言って、医者と賢者は家の中で話すことになった。二人は台所がある部屋に行く。


 「話はなんだい」コーヒーが入ったカップを両手に持った医者は、四角い木机の上にカップ置く。そして賢者にコーヒーを進めた。賢者はいただきますと言い、置かれたコーヒーを貰おうと、椅子から少し腰を浮かした。椅子が揺れた。カップを引き寄せ椅子に座ると、椅子が“がた”ついた。脚の寸法が微妙に違った。賢者は座りにくく、腰を揺すった。最高の座り心地の位置を探り、無理と結論づけた。コーヒーを口に含み胃に入れ、一息ついて賢者が話し始めた。


 

 「医者さん。この薬の配合できます」賢者は服の中よりA六判ぐらいの寸法本を取り出し、開いた。開かれたページには魔王を倒す薬の配合が書かれていた。医者は目が悪く、字が見えずらそうにした。

 「詳しく見せて」と賢者が手に持っている本を医者が取り上げた。猿が餌を捥ぎ取るのに似たフックに見え、賢者はあんぐりした。医者の研究心に火が付いたために起きた行動。目を近づけ隅々まで開かれたページを読み医者が集中する。



・・・・・・こと四分ぐらいで賢者が尋ねた。


 「どうです。できそうですか」

 「う~ん。何とかできると思うよ。薬が完成するのには時間はかかるけど。この材料があれば、うん。できるよ」いい返事に賢者は胸を撫で下ろし、残っていたコーヒーを一気に飲み干した。

 

 「で、この薬って本当に魔王を倒せるの」薬の成分で気になる箇所があった医者は、賢者に聞いた。

 「それが分からないのです。薬の材料を集めた人はいたんですけど、薬を完成させることはできなかったのです」不確かな薬作りに医者は本当に協力してくれるだろうか、賢者は不安になった。本を見ながら医者は言った。

 「この薬って、目薬の成分に近いな。滝の洞窟の地下湖の水を除けば、目薬になっちゃうよ」勇者の父の死について目薬のことが出て来たなと”はっ”とする賢者。それである仮説を立てた。王国の薬を配合した者たちは、目薬に成分が近くて疑ったのでは。こんなんじゃ魔王が倒せるわけないと王に吹き込んだのかもしれない。賢者は顎に手を当て考えを巡らした。ところに、医者は本の素性を聞いてきた。

 

 「この本の信憑性は高いのですか」それについては賢者の回答は早急で明快。

 「本の名は勇者の書。勇者の家に伝わる伝記書です」勇者と賢者が冒険者の墓で入手した代物だった。賢者は勇者の父の死について医者に話し、協力を要請した。医者も快く引き受けてくれた。勇者と賢者に新たな仲間が加わった。

 

 

 賢者は報告を兼ねて勇者に魔法連絡を飛ばした。

 「勇者。聞こえます。賢者です」数秒後、賢者の脳に勇者の声が飛んできた。

 「賢者。お前か。どうした」医者が協力することになった話を賢者がした。その話に勇者の声が弾む。

 「良くやった!これで薬が作れる。材料さえ集めれば。よしゃー」勇者の弾む大きい声はドラムの音に近かく、賢者の脳は震えた。き~んとした賢者が仕返しのつもりで注意した。

 「そんな大声出して、近くに監視者がいたらどうするんですか」少し間を空け、勇者の返事が音量を抑え帰ってきた。


 「いない。周りは大丈夫だ」

 「それならいいのですけど。勇者の方も上手くいきました?先ほど材料を集めるだけと言っていましたね」

 「ふふふ」勇者の笑い声が賢者の脳に漏れる。よっぽど自信があるのかと賢者は思った。

 「仲間は一人手に入れた。あとカウンセラーの先生にも頼んでおいた。材料分けてもらえることになった。材料は後日先生に小さな小さな集落に送ってもらうよう頼んでおく。お前、例の材料だけだぞ、おい。俺たちの夢が叶う」力強い言葉に賢者は燃えた。早く勇者に会って滝の洞窟の主を倒したくなった。


賢者の手は汗で湿った。


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