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勇者裁判  作者: ワンワールド
緑錆の海裁判/因縁
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戦え!戦え!

 被告側の控室では、慌てていた。休廷時間は二時間。

「一分一秒が命取りになるんだ。場所はどこだ」勇者は叫んでいた。焦る気持ちが言葉にも出た。叫ばれた賢者は、地図を広げていた。地図は王都の政府機関の位置が書かれた物。指をさしながら賢者は地図を凝視する。控室にはもう一人いた。魔法連絡を使い、天気観察機関に連絡している弁護士だ。勇者は魔法を足に掛ける。勇者の足は速くなった。走る仕草を勇者は二人に見せる。いつでもいけるぞと訴えていた。


 時間が経過していく。勇者の苛立ちがふつふつと上がっていく。勇者の役割は天気観察機関の建物に行って、かみなり事件日の冒険者の町周辺、天気記録の資料を持ってくることだった。待つことが我慢できなくなった、勇者が苛立ちをあらわにした。控室の椅子一脚を蹴った。強化された足の力が発揮された。椅子は壁にぶつかり、二十センチくらい壁が剥がれ落ちた。椅子は壁に当たり解体した。椅子の部品は細かい破片になり部屋に散らばった。


 だが賢者と弁護士は自分の役割を果たそうと一生懸命、勇者に構う暇はなかった。そんな馬鹿をしているキリギリス(勇者)の隣でアリ(賢者)が成果を上げる。

 「あった」賢者は建物を発見し指を、当てる。示された建物を勇者が目で確認した。賢者は服のポケットより魔法ペンを出し印をした。勇者は地図を丸め、手で持った。弁護士を見る二人。数秒、口を手で押え弁護士が親指を立てたのち、口の手を退け、

 「許可出ました」の言葉に勇者は控室のドア開けて天気観察機関に向かった。勇者が居なくなった後の控室では、脚風けんふうが流れた。


 二時間後。裁判は再開された。勇者は間に合った。被告側は天気記録を提出。裁判官が最初に見、原告団も目を通した。資料には事件当日、冒険者の町周辺は晴れ、一日中。雨が降った形跡はなかった。なおも、原告団は主張を跳ね返す。その姿はまるで飢えたハイエナだ。人工なら女神ストーカーがしたとは限らない。他人がしたのではないかと言い出す。被告側も言い返した。周りには人はいなかった。と言ってもなかなか被告側の主張は認められなかった。女神を出せと原告団が請求。被告団もその請求に答えたかったが、いかんせ生贄になる女神はいなかった。裁判前にも被告側は探したが、女神は行方不明になっていた。正直に裁判官に女神がいない事実を言った。これにより被告側の努力も水の泡になった。魔王裁判の存在が証明できなかった被告側は負けた。これ以上裁判を継続できなく、被告側は悔しかった。切り札を取っていたからだ。切り札は三人目の証人。魔王裁判が証明されれば、絶大な威力を証人の気持ちとは裏腹に、振るわれるはずだった。裁判は被告側の無念渦巻き終了した。



 

 連敗を期した勇者と賢者は切っ掛けを作る男を引き連れ、王都の宿屋に帰った。王都の宿屋は、黒い森の近くの町、宿屋主人の実家でもあった。造りは実家と分家は一緒。違うとすれば大きさだけ。実家は二倍近くデカかった。

 

 三人は勇者の泊まる部屋で、悲しい打ち上げを開いた。

 「お疲れ様」水で乾杯した。賠償金の問題を思うと酒が買えなかった。三人の気分はがた落ち。話も愚痴っぽくなる。

 「ああ負けた、負けた。村長すまん。こんなとこまで来てくれたのによ」勇者が切っ掛けを作ってくれた男を労った。

 「王都まで歩くの、大変でしたでしょう。魔物に襲われた村だと五日ぐらいですかね」切っ掛けを作ってくれた男の体を賢者は心配した。

 「いいんです。私も二人の役に立ちたかった。あんな裁判のせいで勇者さんを苦しめたくなかった」

男の愛は勇者の水を進めた。一杯。二杯。コップの水を勢い良く飲んだ。二杯飲み終わりコップを叩きつけた勇者が言った。

 

 「全部魔王裁判がいけないんだ。いつか、証明してやる。そして、三人目証人に裁判で制裁を加えてやる。俺が受けた痛み。お前のせいなんだからな」水なのに勇者の愚痴が増していった。

 「それになんだよ。あの二人目証人の道具屋親方。あいつも悪いじゃないか。魔物と三人目証人があんな物作ってるの気付いたくせして。世間にばらすぞ~て、三人目証人脅して強引に働かす悪い奴だ」勇者の肩を叩く賢者。慰めたつもりだったが、勇者は嫌そうに肩を振った。触るなと威圧していた。そして俺の話をもっと聞けと言う目つきを二人にする。


 「あ~。何で訴え認められない。三人目証人が緑錆の海汚したのは明白。俺は知らなかったんだ。あんな大きな事件になるとは思わなかった」静かに聞いていた賢者が、勇者に対する謝罪と自虐じぎゃぐが混じった話し方をした。

 「すみません。私が悪いんです。海が汚染されていたのに、勇者を止めなかった。注意していれば。海に入らないように」悪くないと男が言ったが、効果はなかった。もう止まらない賢者の懺悔ざんげ

 「は~判断をまちがえた~。報告を誤ってしまった。・・早く協会に伝えたかった」過去見たこともない賢者の姿に勇者は愚痴る気が無くなった。緑錆の海裁判は賢者にも深手を負わしていた。賠償金を半分払うことは、賢者の貧乏性には堪えた。賢者が叫んでいたので宿主のおかみさんが来て、三人は怒られた。打ち上げが空しくなる一方で、勇者が打ち上げを辞めると言い出した。賢者と男も惨めさに耐えきれず会はおひらきになった。



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