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勇者裁判  作者: ワンワールド
緑錆の海裁判/因縁
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戦え

緑錆の海の環境裁判が開始。海を汚した勇者が裁判に挑む。本業の魔物退治でも、強敵に挑む。

 「判決。被告(勇者と賢者)は原告団に賠償金を払うよう命じる。原告団の医療費、迷惑料(被害者の日当)を払ってください」



 被告席にいた勇者と賢者、それに冒険者協会弁護士が肩を落とした。原告団は全員が抱き合った。裁判所の日常、勝者と敗者が誕生する場面。勇者たちが再現した。勇者の更生より一ヶ月、緑錆の海裁判が行われ、勇者たちは無残な有様になっていた。


 「これにより閉廷する」負け犬になった勇者と賢者が冒険者裁判所を去る。去る途中、監守に慰められ心が回復するも、原告団女性代表の“勝訴労りの舞”を目撃、心の傷は悪化した。気落ちする敗け犬たちを群衆が裁判所の前で待ち構える。負け犬たちは裁判所の裏手に回った。そこには、茂みに隠された抜け穴があった。ストーカー裁判後より、秘かに協会が作っていた。今後、勇者見たいな大物の裁判で必要と判断したためだ。負け犬たちは草を除け、抜け穴の鉄扉を開け、宿屋と言う小屋に戻っていった。



 黒い森の近くの町、宿屋。裁判の後遺症で勇者と賢者がひきこもった。心配した宿主は毎日勇者の部屋を叩いた。とりあえず賢者が顔を見せ食事の受け渡しはできたが、会話などは余りなかった。勇者と宿主が対面することはなかった。そんな容体の一週間目午後、勇者たちが復活する切っ掛けを作る男が宿屋にやって来た。


 宿屋一階ロビー前。切っ掛けを作る男は勇者が滞在しているか、宿主に尋ねた。

 「どちらさまですか」不審がる宿主が勇者との関係を聞いた。男が身元と来た理由を淡々と話した。


 「二階へ」話に合点がいった宿主は、勇者の部屋に男を案内した。宿主は部屋のドアを叩く。賢者が顔を見せ何用か尋ねた。宿主はこれまでの経緯を話した。聞き終わると賢者がドアを閉めた。部屋の中で勇者と賢者が相談する声が部屋の外に響いた。数分後、声が止んだ。


 勇者たちは理解したのか、部屋のドアが開いた。男を招く賢者の声が届き、勇者たちの部屋に男は入室する。その様子を見た宿主は業務に戻っていた。

 

 

 訪問を歓迎した勇者たちは切っ掛けを作る男と抱擁(背中を互いに叩く)、握手(がっちり握る)の行為を済ませ三人は席に着き、話始めた。

 「裁判大変でしたね」

 「まあ。慣れてますから」男と賢者が話している横で勇者は口を閉ざし何か・・遠くを見つめていた。勇者は話に集中していなかった。二人は世間話を踏まえたのち本題に移った。

 

 「部屋に入る前に言っていた、緑錆の海裁判の新たな事実とは何ですか。聞かせてください」男が入室前に勇者たちへ語ったのは、この新たな事実だ。話していなかったら入室の許可も下りなかった。

 「賢者さん。魔王裁判、ご存知ですか」

 「魔王裁判ですか」賢者は勇者より聞いたことを思い出す。魔物が勝手に裁判をし、勇者に罰を与えてくる。あれか、と賢者がそんなことを考えている時分、勇者は魔王裁判の単語に細胞が活性した。ことにより、遠くを見つめていた勇者が、男に焦点を当て、口を開けた。

 「あの魔王裁判を言っているのか」三人は魔王裁判の認識を擦り合した。統一された認識を三人は共有した。


 魔王裁判の実体験を男が語った。それが、緑錆の海裁判の新たな事実だった。三人は活発に意見を交わした。夜になっても話は尽きず、朝になりようやく話が尽きた。用事を済ませ切っ掛けを作る男は、朝の陽ざしと一緒に帰った。勇者の部屋では、

 「希望がみえてきましたね」

 「ああ。ただ喜ばしい話ではなかったな」復活した二人が希望を胸に上告を決意した。



 王が住む町。金・人が集う町。政府機関のある町。王都。ここに冒険者裁判所を超える司法機関。国王裁判所があった。その裁判所に勇者たちは上告した。


 前回の緑錆の海裁判から、二カ月も経過して勇者たちの願いが実現。国王裁判所で緑錆の海裁判二審が行われた。国王裁判所は最高司法機関だけあった。内装は冒険者裁判所の作りと一緒だが、原材料が全然違った。木の椅子一つにしても最高級品を使い、古くもあり、新しくもある、影のある光沢を放つ。高貴な臭いが建物中に漂っていた。


 裁判所に招聘しょうへいされし人物は、前回の緑錆の海裁判同様、女神裁判でも戦った原告団と被告側になった。この構図も三回目だ。

 

 始め裁判の進行は変わらなかった。変化したのは被告側の要求陳述だ。要求は進化し、新たな人類を裁判所に呼んだ。呼ばれた人物は切っ掛けを作った男。語った、魔王裁判の存在を。原告団は信じなかった。裁判官三人(裁判官は、男五十歳の裁判長。女四五歳・女六三歳)も疑った。原告団は被告側に質問した。魔王裁判の存在はどう証明するのですか。男はお手上げの姿勢を勇者たちに見せた。頼むよと責任を転嫁する気持ちは勇者たちに伝わった。勇者と賢者に弁護士(魔王裁判の経験者)は協議し反論した。


 反論は“勇者かみなり事件”を引き合いに出した。魔王裁判の判決で勇者がかみなりを受けた事実を、突き付けた。議題に上がると原告団はかみなり事件も疑った。かみなりは自然現象でたまたま勇者が撃たれただけ。この主張に被告側は困った。かみなりに撃たれた事実は病院に行ったので証明できるが、撃たれたのが自然か?人工か?判別できなかった。困った被告側は新たな手を考え、良策を思いつく。賢者が。

 

 魔王裁判の存在が証明された後に、用意していた新たな証人を利用して切り抜けようと提案。三人は賢者の意見を採用し、新たな証人が裁判所に来た。被告側は証人に魔王裁判の存在を、第一証人と違う支点で話してもらった。それは同時に、勇者の刑に有利に働く事実でもあった。事実を話され、原告団・裁判官たちは深く頷いた。事実は理解されたが、肝心の魔王裁判の存在を証明するには至らなかった。ばかりか、かみなり事件に関係ない話だと、裁判官に跳ねのけられた。進行は人工・自然のかみなり問題に話が戻った。


 被告側は刑が考慮される勝利は近かった。魔王裁判の存在。これさえ証明できればよかった。しかし、答えが出ない。問題の概要が分かって、答えの名称が出てこない。できそうで、できないもどかしさが漂った。危機に賢者の頭が回転した。血液が頭に注がれる。賢者はかみなり事件に焦点を戻した。困った時には、最初に戻れの法則を使った。論点は人工・自然のかみなりの証明で揉めた。待てよ、かみなりが落ちる自然条件は・曇・・・雨雲では、と賢者は心中呟いた。賢者は結論を天気と導き出し、勇者たちに言った。結論を聞くと簡単な話だと、勇者が言って顔を緩めた。

 

 被告側は相談する賢者の天気証明説。これを証明するため勇者と弁護士(被告側)は記憶を辿る。確かに墓参りに行く時間は晴れていたと勇者は思った。その気持ちを弁護士に言ったらその通りだ、数秒で突然雲が現れたと証言。被告側は意見をまとめ原告団に希望をぶつけた。意見に対して原告団は要求してきた。証明。第三者の証明をしろと。証明するため、休廷を被告側は請求。裁判官は休廷後に証拠材料を提示することで、請求が認められた。


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