更生プログラム2
「お互いのことが分かった所で、自分が犯した罪について、どこが悪かったか、討論しましょう。盗賊さんから左回りに行きましょう」手を使い先生は合図した。盗賊は軽く咳払いし、気持ちを口にした。
「わしは、武器が欲しかったんじゃ。どうしても。倒したい魔物がおって・・」しばし言葉を詰まらせた。
「すまんが、過去の話しをしていいかな。カウンセラーの先生」和やかに先生は了承した。
「二十年前のことじゃ。わしは当時、盗賊団を率いていた。魔物からアイテムを盗んでは、貧しい人に分け与えていた。義賊のつもりじゃった。盗賊団の仲間は良い奴らで」老人は天井を見て言った。
「わしらは奢っていた。どんな魔物からでもアイテムを盗めると。若かった。奢りが悲劇を呼び寄せたのじゃ。わしらが滝の洞窟の主からアイテムを盗もうとした時に悲劇が起きた。主は強かった。盗む暇などなかった。普通なら逃げるのに、わしらは判断を誤り、仲間は全滅じゃ。わしは後方にいたので、命からがら逃げれた。あれから二十年間、わしは洞窟の主に挑もうとしたが、勇気がなかった。意気地なしじゃ。この年になりわしは考えた。強さのピークは今が限界じゃないかと。わしは仲間の無念を晴らすため。最後の大一番に最高の武器がほしかった。ほしかったんじゃけど、その武器は高価でわしの預金では買えんかった。入手する方法がなく、犯罪に走ってしまったのじゃ」上を向いていた老人が正面に顔を戻した。
「わしは、自己の美学を貫き通したかったのかもしれんのう」反省する老人を見て、先生が全員に意見を聞いた。
「話を聞いて、戦士さんはどう感じましたか」分厚い両腕を挙げ、頭の後ろで両手の指を絡める戦士が筋肉を際立した。全員に筋肉を見せびらかした。
「美学の追及分かります」筋肉に力を入れていた。全員の気持ちを引かした。
「ですが、人の物は盗んではいけない。自己満足に他人を巻き込んではいけないのではないでしょうか」決めていた戦士は話が終わると、普通の姿勢に戻った。先生はありきたりの感想を言った。自由兄弟も戦士の意見に似ていた。最後に勇者の番が来た。前の三人とは意見が違った。
「じいさん。お前はかっこいいぞ。俺も滝の洞窟の主と戦ったから分かる。あの強さは尋常ではなかった。武器屋から武器を盗むのは至極当然だ。提供しなかった武器屋が悪いのだ。違うか、カウンセラー」別意見が出たとこで先生は問い返した。
「提供しなかったのが悪いと言ったけど、武器屋は武器を売っているのですよ。生活のためにしているのです」
「それはそうだが、しかし、魔物を倒すことに協力するのは一般人の義務だ」
「そうですね。義務ですね。盗賊さんは武器屋に協力を求めた方が、よかったのかもしれませんね」
勇者は盗賊に疑問を投げかける。
「協力頼んだのかじいさん」
「いいやせんよ。そんなこと言っても信用されんじゃろう」
「そうだ。カウンセラー。協力しても拒否されるに決まっている」
「協力してくれるかは別です。協力を求める行為が大事なんです」勇者は痛い所を突かれた。問題になっていた、盗賊本人にも言葉は響いた。
二分ほど時間が経ち、先生は全員の顔を見た。
「みなさん。いろいろ考えましたか」と先生は言いい、話を区切る拍手をした。続いて全員が拍手をした。盗賊に感謝の言葉を述べて、先生は勇者に話を振った。
「俺は・・・。カウンセラー時間をくれ。考えがまとまらない」優柔不断が似合わない勇者が考え込んだ。進行は侍に移った。先生は勇者のために融通を利かした。
侍も語ろうとしなかった。先生がどうぞと聞いても反応しない。間を開けてどうぞと先生が聞いたが侍の口は閉ざされたままだった。それ以上先生は踏み込まなかった。
話す権利は自由兄弟に渡った。語り出しのは自由兄からだ。
「俺たちは、まっとうに魔物と戦えばよかたんじゃね~かな。遊ぶ金のために詐欺を働いたわけだし。遊ばなきゃよかった。弟もそうだよな」本日五回目のうんを弟は繰り出した。
「だけど、俺たち弱いんだし、まっとうてどうなん。詐欺やらなきゃ俺たち生きられねえ~。冒険者協会が悪くねえ。弱い冒険者を助けてもいいんじゃ。思うよな弟」六回目。従順な弟。先生は弟に目を向けた。
「弟さんはどう思った。自分の犯罪について、悪いとこはどこ」弟の意見が先生は聞きたかった。
「兄さんと一緒の気持ちです」どこまでも自由弟は兄に追従した。本音が聞きたい先生はさらに突っ込んで聞くが弟の答えは変わらなかった。進行は意見交換になる。積極的に勇者が手を挙げた。意気込みを感じて先生が当てた。
「おい弟。お前には意思がないのか?何もかも兄と一緒か」貯め込んでいたものを勇者は吐き出した。この意見に弟は困り、ゆるゆる話した。
「う~ん、兄さんの意見は~正しい~。間違っちゃいない。自分も協会が悪いと思う。兄さんは悪くない」気持ちよさそうに自由兄はしていた。熱が上がって来る勇者は意見した。
「お前らが弱いのを協会のせいにするな。魔物を倒せないならやめちまえ!」
語尾を強く勇者は言った。
自由兄が立ち上がり勇者に食ってかかった。弱い自由兄が勇者にぶつかっていた。体と体が当たった瞬間自由兄だけ飛ばされた。弟が飛ばされる兄を受け止めた。二組の間に先生は立つ。口で仲裁した。
「落ち着こう。勇者さん言い過ぎです。自由兄も手をだしてはいけません。お互いに冷静になれないのが一番悪いことですよ」荒い呼吸の自由兄。呼吸が整うのを見て先生は戦士に意見を求めた。
「そうですね。私は協会を攻める気持ちも分かります。だけど詐欺をする工夫を、魔物を倒すことに使えればよかたのでは」戦士の意見に同意する先生は盗賊にも聞いた。
「わしは、協会の問題じゃと思うが。自由兄弟見たいな似た弱い者をたくさん見てきたしのう」盗賊の意見を頷きながら先生はまとめた。
「話しを聞くと協会が悪いか悪くないかになっていますが、違いますよ。詐欺が悪いんです。相手を騙す行為は気持ちいいですか」先生の目が弟に向いた。意見を求める眼だった。重圧から弟は目を背けた。
兄が声を先に出した。
「気持ちは」
「待って、それ以上話さないでください」兄を制止した先生の目は、まだ弟を見ている。
「あなたの意見が聞きたいのです。一言でいいのです。弟さんどう感じました」背けていた弟の目が先生に向いた。先生と弟は心を対峙した。真剣な先生の圧力に負け、弟は自分の意思を伝えた。
「自分は気持ち良くなかったです」意見を聞いて自由兄以外は拍手した。兄は不機嫌な顔が現れていた。先生は褒めた。がんばったと。今までと違う笑顔を弟は放つ。勇者のもやもや感も取れ、自分も話す気になった。話す順番が勇者に回ってきた。
「俺が悪かった部分は」ついに勇者から反省の弁が出た。
「女神の気持ちに配慮しなかった。俺は魔物を倒す男はかっこいい、だれからもモテると思っていた。だから好きになった女神は、俺と同じ気持ちだと勘違いしていたのかもしれない」全員に指をさし、
「お前らの、犯罪と言い訳を聞くと不思議な気持ちになって、あ~これ以上は言えねえ」お前らのせいと言わんばかりに指を振りぬき、勇者は顔を赤くした。魔物一辺倒の勇者が他人のことを思いある言葉だった。全員が拍手する、高い音を立てて。勇者の心は高揚した。拍手が止むと先生が侍に意見を求めた。侍にも心を開いてほしくて。
「侍さん、どう思いましたか。何でもいいので意見を聞かせてもらいませんか」プログラムで一番心を開いていない侍。勇者の告白で侍の心も揺れ動いた。一言、
「自と他は違う」分かりにくかったので、先生が聞き直す。
「すみません。侍さん。私たちに分かるよう言い換えてもらえませんか」
「自分と他人が思っていることは違うことを理解した勇者殿は立派」解説した侍はまた口を閉ざした。
感謝の言葉を先生は発して進行した。盗賊は勇者を褒め、自由兄弟は褒めるついでに、例の緑錆の海問題について聞こうとした。が先生が阻止した。更生プログラムとは関係ない理由で。次に意見を求められた戦士も褒めた。あと自由兄弟とは微妙な違いの言葉で、緑錆の海問題について聞こうとするが先生が止めた。
最後に侍の気持ちを聞きだそうと先生はしたが、侍は拒絶。結局侍の気持ちは聞けずに、プログラムは作文を書く段階に移行した。部屋は静かになった。カリカリ。魔法ペンが鳴っていた。
一時間後、作文を最初に提出する者が出た。それは盗賊だった。特技から来るものか、誰よりも早く書き上げ帰っていった。作文提出者から更生プログラム一日目が終了していった。次に書き上げたのは戦士と自由兄弟。ほぼ同時に提出した。十分後に侍も書き終えた。どんじりになった勇者は、なかなか作文が仕上がらなかった。勉強とは縁遠く、魔物を倒すことしかできない勇者は苦戦した。作文が完成したのは全員から遅れること一時間経っていた。勇者は作文提出後帰ろうとした。
「待った。勇者さん。魔法連絡の契約しませんか」教室を跡にしようとする勇者を先生が引き留めた。
「契約か、いいぞ」特別断る理由がなかった勇者が右手を挙げ、先生の耳を覆い隠した。勇者と同じ動きをする先生。二人は互いの耳を覆ったまま、相手の名前を呼んだ。魔法連絡の契約が勇者と先生に結ばれた。




