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勇者裁判  作者: ワンワールド
更生
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更生プログラム

女神裁判後の世界を描いています。勇者は判決に従い更生プログラムを受ける。勇者はいろんな人と出会い、どう成長していけるのか?いけないのか。

 女神裁判から一カ月経っていた。この一ヶ月間勇者は裁判(緑錆の海汚染)対策を賢者と講じた。ただ二人が顔を合わすことはなく、魔法連絡のみだった。理由は賢者が賢者の犬事件でお世話になった医者に借りを返すため、小さな小さな集落の手伝いをしていた。勇者は賢者と対策する以外にも大きな出来事があった。冒険者協会訴訟担当弁護士の女神裁判担当者がもたらした情報。魔王裁判という裁判の存在を打ち明けられた。勇者は初め、信用しなかったが、話を聞いていくと信憑性が高いと感じた。しかし、完全には信用しなかった。信用するとしたら弁護士が言っていた、女神の復讐の雷が落ちればと勇者は思った。


 冒険者協会内に、犯罪に手を染めた冒険者を更生する教室があった。女神裁判から一月後、その教室に勇者は参加することになった。更生プログラムを二日間受けなければならかった。教室内は椅子と小さい横机が十個ずつ円状に並んでいた。白壁には更生プログラムや名語録が書かれた掲示物が張られていた。

 

 勇者は教室に入るとすでに五人の人物がいた。椅子はあるものの、誰も座っていなかった。ぼーと立っている白髪の老人男性がいたり、筋肉質な男性が腕立て伏せをしたり、その横で話をする似た顔の男二人や、地べたに座って瞑想している、毛という毛が伸び放題になった男。全員が、別行動をとっていた。勇者はとんでもないとこに来たと実感。誰にも声を掛けずに勇者は、椅子に座り足を組んだ。五人は勇者が入って来ても興味を示さなかった。


 二分後、黒縁眼鏡をした頭のハゲた中年男性が入ってきた。手にはノートを持って、椅子の方へ。

 「席についてください。これから、更生プログラム始めます」ノートを持ち上げてハゲ中年は声を出した。全員が講師と思い、円状に並ぶ席に着いた。ハゲ中年は自己紹介をする。

 「今回の更生を任された、冒険者カウンセラーです」紹介を終え、先生が六人にノートを配った。ノートが行き届くと先生はノートを手に取り、

 「配ったノートは気になったことをメモしてください。特に強制はしませんが、プログラムの最後には作文を提出してもらいます」勇者の顔が曇った。他の犯罪者も嫌な顔をしていた。

 

 プログラムが開始された。一日目は自己紹介を兼ねた、自分の犯罪歴を話すことになった。

 「右回りに話していってください」手を付け加えて先生は右隣の筋肉質の男を指した。筋肉質の男は手を挙げた。

 「こんにちわ。私は戦士です。二カ月前にボロボロの町の用心棒(仕事)を協会から受けました。私は任務に就きましたが、魔物より町を守れませんでした。守るどころか逃げてしまいました。任務放棄です。それで住民三人が亡くなりました。業務上過失致死になってしまい、プログラムに参加することになりました」話が終わると先生が感謝を述べた。

 「戦士。よく話してくれたね。拍手をして挙げましょう」と全員が拍手した。バラバラに。

 「次の方どうぞ」進行する先生。戦士の隣にいた、似た顔の男性一人が手を挙げた。

 「ちわ~。俺は自由人です。まあ~何ていえばいいかな~。毎日楽しく、過ごしています」と言って、隣に座っていた顔が似た男の首に腕をまわした。

 「で、こいつ。俺の弟。こいつも自由人。なあ、毎日楽しくやってるよな」

 「うん。兄さん」恥ずかしそうに自由人弟は返事した。弟の首から腕を離し、兄は犯罪歴について語った。

 「俺っていうか、兄弟?二人の犯行なんだけど。詐欺。報奨金詐欺て所かな?弟」うんと弟は答えた。

 「俺たち兄弟、弱くてよ、魔物とまともに戦えねえ~んだ。笑えるだろ。なあ弟」オウム返しで弟はうんと頷いた。

 「弱いから、金が入らねえ。食べれねえ~。遊べねえ~。騙すしかね~て結論。弟が魔物のコスプレして、俺が倒した。その記憶を頭に残し報奨金を貰おうとした。そしたらよ、冒険者協会の鑑定士にばれ、兄弟そろって参加するわけ。だよな弟」弟は四回目のうんをした。

 

 話が終わると、先生が率先して拍手するので、催眠術を掛けられたように全員が続けて拍手した。魔物を倒す気がない兄弟が許せなかった勇者は、拍手したくなかった。のに我慢して拍手をする。

 

 弟の順番になった。弟は兄さんが話した通りですと、言っただけ。全員の反応も鈍く、拍手の音も小さく虚しく部屋に響いた。空気を感じ取り先生は明るい声で進行した。

 

 「次の方どうぞ」瞑想していた毛が伸びきった男が手を挙げた。

 「・・・こんにちは。拙者、侍です。・・・・拙者、人を殺しました」と言って、侍は口を閉ざした。不思議な気を放つ侍のせいで、静かな時間が流れた。先生だけが拍手とともに場の空気をさらっと流した。工場の流れ作業のように。

 

 「次の人」ついに勇者の番が回ってきた。嫌々手を挙げた。

 「こんにちは、勇者だ。俺はストーカーでここにいる。好きな女神に会いに行っただけで、訴えられた。それだけのことだ」勇者は腕組みをし、眉間にはしわを寄せて話を終えた。戦士と自由兄弟は食い入るように勇者を見ていた。先生が拍手した。続けて犯罪者たちが拍手した。そこで戦士と自由兄弟が今日一番の音を出す。残り二人は変わらない音を出していた。

 

 最後の老人の番になった。手を挙げた。ゆっくり。話す速さも一緒だった。

 「こんにちは。わしは、こういう者です」と手から白煙が出た。全員の目が白煙に注目した。すると先生が変なことを言った。

 「眼鏡がない」先生は体を触ったりして眼鏡を探していた。戦士は、老人の右手を指さした。

 「あれは、先生の眼鏡では」

 「えっどこ」笑いながら老人は右手に持っていた黒縁眼鏡を先生に返した。先生が眼鏡を嵌めると同時に、老人の話が始まった。

 「わしは、盗賊です。少々店から、武器を拝借して御用ですじゃ。わしも年を取った。取ろうとした武器が重たくて、店主に現行犯で捕まったのじゃ」話の速度が速くなっていた。先生が拍手をして自己紹介が終了した。

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