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勇者裁判  作者: ワンワールド
勇者裁判 女神編
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判決と招待

 裁判官による協議が終わり、原告側と被告側が法廷に召集されていた。

 「判決を言い渡す」唾を飲む一同。懲役刑を逃れたい気持ちで勇者と賢者は一杯だった。ストーカー事件とか関係なく女性代表は、勇者に冒険をさせない判決が下ることを願っていた。

 

 「被告勇者は地上の町へ入ることを禁止。これを破れば、懲役一年とする。今後の冒険者と一般市民との付き合い方を考え、更生プログラムを受けてもらう。一つ冒険者協会が主催している、犯罪をした冒険者の精神更生教室に出席すること。一つ家族との相談。被告の家族に犯罪をした経緯を話。監視してもらうこと。以上更生プログラム実施させ、報告する義務を協会に課す。協会には知る権利の改善の詰め作業と、国の承認を一年以内に済ませること。できなければ知る権利の権利剥奪」と刑罰事態は厳しくなかった。ただ更生プログラムなど条件が勇者は気に入らなかった。気持ちが声に出てしまう。

 

 「面倒な。上告してやろうか」漏れた声が女性代表に耳に入った。

 「あんた!反省してないわね」大きな声で女性代表が怒り出した。

 「上告上等。受けて立ってやろうか」と女性代表は新品の水晶を取ろうとした。原告の弁護士が水晶を先に取って阻止した。

 「おう。戦ってやる」勇者は挑発に乗ってしまった。

 「静かにしなさい」法廷に響く進行役の裁判官。熱気が上がっていく勇者と女性代表には、裁判官の声は意味がなかった。両陣営が止めに掛かった。賢者は勇者に上告すると更生プログラムより、時間が取られると耳打ちした。勇者の熱気は下がり椅子に座った。女性代表の熱気は収まらなかった。魔法の言葉を賢者は連発した。勇者に。

 

 「悪い。・・上告は冗談でした。・す・・みま・・・・せっん」嫌々だが、勇者が謝った。

 

 驚いて女性代表の熱気が無くなった。賢者は勇者に謝らないと上告されますと耳打ちしていた。進行役裁判官のありがたい説教が両陣営に待っていた。

 「被告の勇者は反省が足りていないように見えました。しっかり更生プログラムを受けてください。自分を見つめ直すいい機会になるでしょう。原告の気持ちを考なさい。被告の身勝手な気持ちが犯罪に繋がったのです。二度と犯罪が起きないことを祈ります。原告の女性代表も原告の気持ちを考えていない節がありましたよ。自分の恨みを晴らそうとしているように見えました。あげくに水晶を壊す器物破損で、訴えられてもおかしくないのです。今回は大目に見ますが反省しなさい」

原告側、被告側は静かに聞いていた。

 

 「閉廷」



 女神裁判は終わった。勇者と賢者は裁判所から帰ろうとしていた。しかし、裁判所の前には群衆が。二人は出て行きにくかった。監守がその様子を見ていた。

 「二人とも大変だね」他人事なので簡単に言う監守。

 「ふん。有名人は困るな~」開き直る勇者に賢者と看守は笑った。賢者は勇者の折れない心が好きだった。唯一尊敬できる所でもあった。

 「もうすぐ群衆が分散されるよ」意味深に看守は言った。

 

 三分後。

 「・・ほら」縦一メートル、横二八センチ、厚さ八センチの板切れを持った女性代表が、群衆に走って行った。板切れを掲げる女性代表に、群衆がおお~と声が上がった。勝訴、勝訴と群衆が連呼していた。手拍子が始まった。女性代表は原告弁護士に板切れを持たせた。弁護士は板切れの上と下を胸辺りで持っていた。女性代表が両足を肩幅ほど広げ中腰に構えた。拳を握った左手を前にした。左手を胸の横に拳を戻しつけた。


 刹那。


 「きえ~」一閃。右拳が板切れを分断。衝撃で弁護士も五メートル飛んだ。拍手が鳴り響いた。

 「あれは何だ」

 「すごい使い手だ」感嘆する勇者と賢者の肩に手を掛けて看守が一言。

 「勝訴労りの舞」

 「舞」疑問の勇者。

 「ふふふ。すごいだろう。あの女性代表」

 「ええ」頷く賢者。

 「元格闘家として、魔物と戦っていたからな。だから裁判に勝つと関係者の労をねぎらって板割りを披露するんだ。いつしか応援する人が出て来て、今じゃ恒例行事みたいでかっこいいんだ。私も魅了される一人ですよ」勇者は目を輝かせて仲間に引き込もうとした。

 

 「だめです」三人で旅したら絶対喧嘩して賢者が困ることになると思った。

 「いいじゃないか」引き下がらない勇者に裁判で起きたことを考えてと、耳打ちする賢者。勇者も引き込むのをやめた。賢者は安心した。苦労しなくて済むと。

 外の群衆が少し減っていた。逃げる機会が来た。二人は声を掛け合って走り出した。

 「じゃあな監守」二人は別れ際に監守にあいさつをした。裁判所の出入り口に二人は向かった。速度を落とさず群衆に突っ込む。

 「被告だ」の声が響く中、二人は魔法の靴を使った。一気に百五十メートル先まで飛んだ。

 「勇者だ」

 「いえ。敗者だ」

 「敗者だ。敗者だ」群衆の声が遠くに。二人は激走。宿屋に向かった。

 

 宿屋前。裁判所に行く前に比べて十人しか人はいなかった。勇者と賢者は家と家の隙間から様子を伺っていた。行けると判断。賢者は口を押え、警備Aと言って連絡を取った。

 「了解。何時でもどうぞ」と合図された。

二人は宿屋に向け走り出す。警備が配置転換する。宿屋の周囲をぐるりと警備していた配置を、裏口側警備員だけが裏口付近に集結。二人は裏口五十メートル前で三人の一般人に気付かれた。二人に近寄ってくる。警備が三人に飛びかかり抑え込んだ。二人は裏口扉前に。警備が裏口の鍵を開けて二人は無事帰還した。二人は宿屋の受付へ息を乱しながら行った。


 宿屋主人が待っていた。裁判が無事終わったことを二人は報告した。判決の中身を聞いた主人は勇者の肩を叩いた。

 「いいこともあるさ。二度も裁判をしたんだ。この経験は三度目の裁判で生きるよ」とあんまり嬉しくない、励ましの言葉だった。勇者は苦笑いしていた。三度目の裁判が待っているのかと思うと憂鬱ゆううつだった。賢者も励ましの言葉を付け加えた。

 「私もついています。次は楽勝ですよ」根拠のない励ましだった。励ます言葉を増やすほど勇者は、賢者のことを充てにしてなかった。俺がやらなくてはと決意を強めった。

 

 二人は二階の部屋に戻ろうと階段の一段目に足を掛けた。

 「あっ。待ってください」二人のことを止める主人。受付の棚から主人が手紙を持って来た。

 「賢者さん。手紙来てましたよ」手紙を賢者に渡した。宛先を見て賢者は首を傾げた。

”賢者の犬”と書かれていた。知らない宛先だった。気味が悪かったが手紙の封を開けた。手紙を見る賢者は目を疑った。

 「ありえない」手紙を読む。

 「ありえない」と同じことを繰り返し賢者は言った。手紙を服のポケットに入れた。

 「勇者。用が出来ました。更生プログラム頑張ってください。用が終わったら連絡します」と宿の外に出て行った。理由を言わずに。外は騒がしくなっていた。賢者が勝手に出て行ったことで、警備と群衆が入り乱れていた。


勇者は更生編に続きます。賢者は魔王裁判の方で賢者の犬編に展開していきます。

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