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勇者裁判  作者: ワンワールド
勇者裁判 女神編
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宿屋からの脱出

 緑青の海が汚染され一ヶ月、海の汚染は改善されたが、甚大な被害を出した。健康被害者六千人。内訳は、臭いで千人が失神。鼻水と涙が止まらない者が二千人。皮膚が荒れるもの三千人と出た。海の生物にも被害が。汚れた個所の生物は全滅した。経済的にも影響が出た。緑青の海の猟師は一ヶ月、漁に出られず。海が改善されても風評被害で、魚が売れなかった。緑青の町も観光客が激減し、海が改善されたとはいえ、エメラルドグリーンの海は戻ってこなかった。専門家の話で十年以上は元の海にはならないと言われた。ちまたでは、緑青の海は緑錆りょくせいの海と呼ばれるように。住民は怒り冒険者協会と勇者と賢者を訴えた。


 黒い森の近くの町の宿屋に勇者と賢者はいた。宿屋の周りは看板を持った人、海に関する衣装を着た人、楽器を持った人で囲まれていた。

 「勇者出てこい」

 「俺たちの生活返せ!返せ」

 「勇者反対。冒険に出るな」宿の周辺は暴動が起きる気配が漂っていた。

 「来てやがるな。暇な奴らめ」宿屋二階の一室。カーテンが掛かっている窓から勇者は様子を伺っていた。

 「過去最高の人数かも」背を屈みながら賢者は窓の外を見ていた。

 「だろうな。明日から。ストーカー裁判だからな」

 「注目されていますね」

 「英雄になったらこんな感じかもな。有名人は困るぜ」と髪を手で整える勇者が窓際に堂々と立つ。老婆心で賢者は勇者の頭を抑えかがんだ。心に余裕がある勇者は外のことなど気にしていなかった。

 「お前は肝っ玉が小さいな」背中を叩きながら勇者は言った。賢者は、

 「肝っ玉ではなく羞恥心しゅうちしんを持っていると言ってほしいですね」と反論した。


 宿屋一階では主人が受付の机の下に身を隠していた。子犬のように震えていた。

 「泊めなければよかった」後悔していた。宿屋丸ごと勇者と賢者の貸切にしていた。料金は冒険者協会が払っていた。

 「内に泊まらなくても。他に行けばいいのに」裁判以来二人は気に入り黒の森の近くの町ではいつもここに泊まっていた。主人は様子が気になり、出入り口の横の窓から外を見た。外には屈強な警備員の男が宿屋周辺を取り囲んで防御線を築いていた。全員盾と棍棒を持っていた。主人は外の警備を見るたび安心した。国が警備員を派遣していた。


 二階から勇者と賢者が一階に降りてきた。

 「おはようございます。どうかされましたか」挨拶と様子を伺う主人。二人の行動に敏感になっていた。囚人を監視するように。

 「出て行く」

 「出て行く?今から」

 「ああ裁判所にいく。言ってなかったか」主人はびっくりする勇者の言葉に。外の状況を考えると、外出が一番困った。民衆の暴徒化で宿屋が壊されるかもしれない。と主人が思うのも至極当然だった。

 「待ってください。絶対に動かないでください」深呼吸して、主人は扉を開けた。ゼロコンマ、何秒の世界で。三十秒後主人は外から警備員と一緒に帰ってきた。

 

 「話は聞きました。お二人を脱出させます」警備員は作戦について話した。

警備員が表口から出て煙玉を使う。周りが煙で充満したら表口から主人が毛布を被って出る。裏口からはもう一人の警備員が出て行く。勇者と賢者は宿屋の屋根から隣の家に飛び移る作戦になった。

 「しかし」作戦の欠陥を賢者は指摘した。隣の家まで百五十メートルもあった。飛べる距離ではなかった。疑問に答え警備員は足の強化魔法を使えば大丈夫と言った。が、賢者は強化しても十五メートルが限界と説いた。

 「靴を使って下さい」と警備は賢者に手渡した。この靴は魔法で作られた特別性だと。

魔法の力がなくても人の力の十倍が出るらしい。作戦は実現できる数字になった。

 警備員を一人増員し、宿屋一階に五人の男が集った。五人は円を作った。一人ずつ手を中央に出す。警備Aが一番下、主人二番目、警備Bが三番目、賢者四番、勇者が一番上、全員の手が重なり合った。

 「いくぞ」勇者の掛け声で五人の手は散った。体も。


 警備Aと主人は表口へ、警備Bは裏口へ、勇者と賢者は二階へ。勇者と賢者は階段を上る。警備Aが表口に到着。主人の様子を確認。主人表口到着。警備Aと主人目で合図。扉を足で開ける警備A。開いた同時に煙玉を外に投げる。煙玉破裂。表民衆動揺。白煙。広がる。宿屋一階外に広がる。警備B裏口到着。扉の横の窓から外を確認。裏口民衆数多し。表口煙充満。警備A声、行け。表民衆反応。主人出撃。勇者と賢者屋根に到着。身を隠す。主人表口民衆の中突破。表民衆主人発見。主人激走。表民衆多数追跡。裏口民衆少々反応。裏口民衆半数追跡に表へ。警備B確認。静かに裏口扉開口。警備B煙玉を外に投下。煙玉破裂。裏口民衆動揺。白煙。広がる。表口民衆主人を捕獲。主人正体判明。警備B毛布を装着。裏口煙広がる。屋根二人両煙確認。表口民衆裏口煙確認。裏口へ表口民衆移動。警備B出撃。警備B裏口民衆の中突破。裏口民衆警備B発見。警備B激走。裏口表口民衆合流。民衆追跡。屋根二人状況確認。立つ。足に魔法発動。勇者と賢者は屋根を蹴って脱出した。


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