合流~最終日~裁判
集落では賢者が寝ていた。朝早く医者が出発して昼になっていた。
「お父さん遅いね」
「遅い?お父さんは歩くのが早いの」
「うん。僕の足なら二時間だけどお父さんなら一時間で着くよ」
「早いね」朝からくだらない話をする二人。待つのに飽きてくる子供は黒犬を触っていた。昼食を二人で取っていたが医者は帰ってこない。子供は我慢できなくなってきた。
「遊びに行ってくる」小さい子供に患者の世話はきつかった。黒犬を連れて外に行ってしまった。自由でいいな子供は。と賢者は足が治って自分も自由に歩きたいと思った。しばらく横になって寝むりについた。
「ただいま」声が聞こえてきた。寝ていた賢者は目を覚ました。体を起こし様子を見ると集落の医者が帰ってきた。
「ただいま」
「おかえりなさい」二人は挨拶を交わし、互いに周りを確認し合った。医者は子供を賢者は協会の人を探した。いない。気が付く二人は疑問を投げかけた。医者から。
「息子と黒犬は」
「遊びに行きました」解答者だった賢者が出題者に。
「協会の人はいないのですか」
「頼んだが、断られた。ところがちょうど手伝ってくれる人を見つけた。君もよく知っている人だ」不敵な笑みで外に出て行く医者が、勇者を連れてきた。
「勇者!」歓喜する賢者は寝ている粗末な寝台から落ちた。ほふく前進しながら勇者に近づく。勇者の足元に辿りつき賢者は顔を見た。勇者はしゃがみ賢者の頭を撫でた。猫を撫でるように。よしよしと。勇者なりに会えたことを喜んだ。賢者の目には涙が溢れた。
この場面に医者は感動した。和やかな時間が流れた。少しだけ。
勇者が賢者の頭を押さえつけて厳しいことを言う。
「がんばりすぎ」問題を一人で背負い込む賢者の癖を勇者は知っていた。それを指摘した。賢者は落ち込みながら二人と話した。勇者の冒険。協会でのやりとりの末、勇者と医者は道具屋から荷車を借りることにした話。結果、賢者を乗せて二人が協力して運ぶことになったと。
賢者は身支度をし始めた。荷車の借りられる時間は半日だったので、全員準備に追われた。
「荷車は長く借りられないのですか」
「高いんだ。道具屋が足元見やがって」途中勇者と賢者はこんな話を挟みながら準備を終わらせた。出るころには夜になっていた。勇者は荷車の前を担当。医者は発進する時と悪路は後ろ。平坦では手には松明を掲げて先導役も兼ねた、重要な位置だった。賢者は荷車に上半身起きた状況で乗った。
「出発」
「あっ。待ってください。忘れていた」荷車の後ろにいた医者が、家に帰って行った。四分後医者は帰ってきた。忘れごとは子供に書置きを残すこと。その話を聞いた賢者が子供を心配したが、何時ものことらしい。黒犬が守ってくれると。二人は荷車を動かし夜道を歩きだした。
黒い森を攻略して周辺の地域の魔物の出現率が減った。しかし、いつ魔物が出てくるか分からない。三人は警戒していた。黒い森の側道を歩いていた時。
「わん。わん」黒い森から犬の声が響いてきた。医者が松明を持って森を照らす。
「黒犬か」と言って自分の息子と黒犬がいるのかと思った。森の奥から影が、近づいてきた。
「うわ~」
影によって倒される。松明が宙を舞う。犬だ。魔犬だ。所々皮膚が剥がれ骨が出、全身血だらけに牙は尖っていた。医者の顔によだれが垂れる牙が迫る。勇者は反応が遅れる。荷車を握っていたため。医者の顔に牙の先端が触れた。皮膚がそこから裂け血が滲む。牙が深く入っていくかと思われた。
「ふう」
言葉が飛んだ。風が医者の顔の上を流れて行った。医者は体が軽くなったと感じた。上半身だけ起き上げる。木が血みどろになっている。魔物の死骸によって、まるで木が血を流しているかのように。
「おい、怪我はないか」心配そうに勇者が駆け寄る。医者は全身を見た。血が所々に付いていた。混乱する医者。体中触診をする。無意識なのか医者の本能か。医者は頬を触り怪我をしたのはここだけと分かった。
「大丈夫です。幸い頬の傷だけです。回復薬を頬に張ればいいぐらいです」と頬を抑える医者。安堵する二人。医者は何が起きたのか二人に聞いた。賢者が説明した。風系魔法を使い賢者が魔犬を切り刻んで飛ばしたと。
賢者の魔力が回復して来ていることを、三人は認識して医者の手当てを済ませた。
三人は旅路を急いだ。警戒を強めて。黒い森の側道を抜けそうなとこまで来て、また鳴き声が聞こえてきた。灯を照らす。黒い森で影が蠢いた。
「ふう」
警戒を強めていた賢者が魔法を使った。影は消えた。魔法が当たり逃げたか死んだか分からなかったが、反応が帰ってこないので、三人は協会に向かった。
無事三人は協会に着いた。協会に入ろうとするが門番に止められる。協会の営業時間は終わったと言われた。
「急患だ」機転を利かす医者が門番を説得した。門番が口を押え連絡を取り魔急が呼び出された。嫌そうに魔急は協会内にある入院施設を案内した。手術は後日と言われ個室に二人は泊まることになった。医者は家に帰ると言うので、二人は礼をした。荷車を引きながら医者は帰って行った。
次の日の朝、病室に声が響く。回診ですと、白衣の医者がぞろぞろ病室を回って行った。賢者の病室の前に白衣の看護婦が来て言う。
「・・・裁判・・です」黒衣の男が病室に入ってきた。
「ここが裁判を受ける勇者がいる病室ですか」看護婦に尋ねる黒衣の男。
「はい。勇者がいる病室です。こちらが勇者です」勇者を指さしてから、看護婦はお辞儀をして病室を去っていた。黒衣の男が前に出て来て口を開けた。
「勇者、ストーカー容疑で訴えられたぞ。裁判だ」
「また裁判かよ」寝台に倒れ込む勇者。
「痛い」思いっきり賢者の上に乗っていた。
勇者裁判女神編に続きます。




