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勇者裁判  作者: ワンワールド
暗黒の一週間
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勇者の三日間

 賢者と別れた勇者は滝の洞窟近くの川で服を洗濯していた。

 「なかなか汚れが落ちねえ」服をごしごししていると後ろで嫌な気配がした。勇者は真横に飛んだ。


 「パリ~ン」


液体が飛び散る。またか。後ろを振り返ると魔物はいなかった。警戒しながら服の汚れを落とした。賢者が出発して二時間後に勇者も旅立った。

 

 勇者の旅路はいつも神経をとがらせて歩いていた。いつ魔物が襲って来るか。来る、来ると思っていたが魔物は来なかった。別れて一日目の夕方、無事に天空の山の麓の地上の町に着いた。町は岩肌に穴をあけて人が住んでいた。岩肌沿いに横に長い変わった町を形成していた。勇者は休憩のため宿屋に向かった。道中町の人が勇者を見かけると。

 「勇者だ。勇者が出たぞ」と魔物が出たように逃げて行った。意味が分からない勇者は町の人の行動を無視した。着いた宿屋でも奇妙なことが起こる。

 「勇者」宿の主人がびくついた顔をした。

 「一泊したいので部屋は開いているか」尋ねてみた。

 「いえ満室です」そっけない態度で断られた。勇者は他の宿屋に移動して同じ質問を宿屋の主人にするが、どこも一緒の答えが返ってきた。前来た時はどこの宿屋も空室だらけだったので、五件目の宿屋で勇者は問い詰める。

 「おい、どこの宿屋も満室なのはどうしてだ。ここらで祭か行事でもあるのか」答えにくそうに宿屋の主人は返事をする。

 「いえ。行事とかじゃなくて、あまり言いにくいのですが。勇者様の噂が、ああこれ以上は言えません。帰ってください」と勇者は宿屋から追い出された。他の宿屋も回るが結局泊まれなかった。野宿でもするか。おっと町を出る前に俺の女神にでも会っていくか。と勇者は町の中に行った。

 

 二日目の夜、黒の森に着く勇者だったが道に迷った。なかなか黒の森を抜けだせなかった。野宿を決意した勇者の前に家があらわれた。泊めてもらおうとドアを叩く。

 「すみません。誰かいないか」反応がなかった。灯もついていな。これは無人の家だと思いドアを回した。鍵は掛かってなかった。

ドアを開けると外だった。家は木造の外観と煙突だけ残っていた。思わず笑ってしまった。勇者はそこが気に入り野宿をした。


 三日目の朝を迎えた。朝になると黒の森から広い大地が見えた。五分ほど歩くと黒の森を抜けた。抜けた場所をよく見ると草がたくさん生えた荒れた土地が広がっていた。勇者は荒れた土地を抜け、黒の森の近くの町に到着した。目的地の協会に足早に向かった。

 「勇者よ」

 「勇者だわ」

 「勇者だ。最悪」鼻を押えた町の人の冷たい視線が来た。誰も近寄ってこなかった。地上の町で起きたことが繰り返されていた。鼻を押える以外は。勇者は気にしないようにしていたが、寂しさがこみ上げてきた。急に賢者に会いたくなった。先についているだろうと協会に走り出す。

 

 「どん」勇者は男と肩がぶつかった。男を吹き飛ばし倒してしまった。

 「おい怪我はないか」手を差し出して男を引き上げた。

 「ないですから、これ買ってくれません」と男は薬草を出す。男の顔に目線を合すと、顔が膨れ上がっていた。殴られたように見えた。面倒に巻き込まれると勇者は考え、薬草を買うことに決めた。

 「買ってやる。金貨何枚だ」売れたことに喜ぶ男が勇者の顔を見た。喜んでいた男の態度が変わった。

 「いいです。失礼します」お金を受け取らず薬草を握りしめて逃げて行った。追跡するかと思ったが、協会に行く用事を優先した。

 逃げて行った男は勇者を撒いて安心して独り言が出る。

 「まさか勇者がここにいるとわ。せっかく薬草が売れたと喜んだのに。親方に言われるだろうな。小言を」男は肩をおろして商売に戻っていった。

 

 黒い森の近くの町で十五階建の石造りの塔があった。町の中で一番の高さを誇る冒険者協会本部だった。勇者はその前に立っていた。協会の前には警備員が二名。門を守っていた。勇者は警備員の所まで歩き、カードを取り出して渡した。

 「通ってよし」門が警備員の手により開いた。カードを返してもらい、勇者は協会の中に入った。協会の一階には受付所があった。

 受付嬢が二人座っている。勇者は小瓶を取り出し、経緯を話し担当を聞いた。

 「少々お待ち下さい」受付が口を押え魔法で誰かと連絡を取っている。四分ほど話が続き、受付が口を押え魔法を解いた。

 「すみません。担当の者が今いません。十分ほどで出勤時間ですが待ちますか?時間がなければ伝言を残しますか」

 「待つ、ついでに賢者が、ここ数日来てないか調べてくれ」丁寧に受付が断った。冒険者の個人情報は教えられないと。あきらめて勇者は受付のロビーで待つことにして椅子に座った。勇者は口を押えようかと悩んでいた。賢者が先に来たのか自分が先なのか、連絡を取りたかった。けど勇者の自尊心が許さなかった。自分から賢者を遠ざけたのに自ら連絡する。ダメだと手を口から離した。四分ほど立って協会の門が開いた。青い格子柄の服に茶色のズボンを穿いた男が現れた。どうみても協会の担当者には見えなかった。

 「頼まれてきたものですが」ズボンから小瓶を取り出す男。受付が受け取り話し合いをしていた。三分ほどして受付が勇者を手で指す。男が振り向き勇者の顔を見てきた。なぜこっちを向くと勇者は思った。男が笑顔でゆっくり来る。

 「勇者さんですか」

 「おお。勇者だが、何だ」男は勇者だと判明すると手を出して握手を求めてきた。無意識に勇者は握手をした。男は自己紹介して来た。小さな小さな集落の医者だと。賢者との関係を勇者に説明した。お互いに理解を深めていると、協会の外で大きな声が聞こえてきた。


 「しつこいわね。ついてこないで」

 「戻って来てくれよ」

 「もう近寄らないで気持ち悪い」

 「ああ・・・ああ」

 「妻にこれ以上付きまとうなら訴えるぞ」

門が開いて紳士の男と光り輝く貴金属を身に着けた白いワンピースの女性が出現した。二人の受付が立った。

 「おはようございます。主任、副主任」紳士の男と女性に深くお辞儀をしていた。二人と話し込む受付嬢が、小瓶を渡している。勇者と医者が渡した物だ。紳士の男が小瓶を目を細めて見ていた。

 「おい。君たちこっちに来なさい」と勇者と医者を手招きしていた。俺、俺と自分の顔を指でさす勇者。手招きは続くので釈然としないが勇者は招かれた。医者も。

 「俺たち呼んで、何か用かおっさん」失礼な態度を取る勇者に対して、紳士の男は名刺を差し出してきた。

 「見たまえ」自慢げに言う紳士。勇者と医者は名刺を見た。冒険者協会薬学部門主任と書かれていた。医者はピンと来た。

 「もしかして、私たちが提出した液体を調べてくれる担当の人ですか」と尋ねた。紳士改め主任は胸を張って答えた。

 「その通り。謎の薬品類は私が担当している部門が調べている。君たちの液体も調査してあげよう。この主任がね。はっはっは」

 「パパ素敵」ヨイショする副主任の女性。

 「ママ。褒めすぎ。いや待てよ、褒めすぎてないか」満更まんざらでない主任。勇者と医者はしらけていた。この態度を見た主任は冷たく言った。

 「液体についての書類を出せよ」捨て台詞のように主任と副主任は階段を上がっていった。足蹴にされた感じがした。

 

 しかし目的のため勇者は受付に書類をもらっている。姿に医者は大事なことが頭に浮かんだ。受付に詰め寄る。

 「あぶない。忘れていた。魔法医者を派遣してくれませんか。賢者を助けてください」

言葉に反応して勇者はもらった書類を破ってしまった。

 「聞いてないよ。医者」二人は液体の話しはしていた。賢者の具合については、話す前に主任が来て話せなかった。

 「賢者を殺す気か」事情を説明すると勇者はこの言葉を使ってきた。二人が会話している隙に受付は口を押え連絡していた。五分ほどして一階の十ある部屋の一つが開いた。


 真っ白な白衣の男が登場した。

 「緊急患者がいるそうだが、どこかね」と受付嬢に聞く白衣の男。

 「あちらです」二人を手で指す。白衣の男は見た。

 「小さな小さな集落の医者」

 「魔急まきゅう」白衣の男と医者は抱き合った。不思議そうに勇者は見た。二人は会話を楽しんでいる。付いていけない勇者は割って入る。

 「うら~賢者はどうなる」強引に。その場にいた全員が笑い出す。

 「すまない。勇者。こちらを紹介する」白衣の男と医者の関係を説明してきた。

白衣の男は魔法医者“緊急対応職員”縮めて魔急と呼ばれている。魔急は医者と昔からの知り合いだと言う。三人は打ち合わせをした。結論を急ぐ勇者が、

 「集落に医者を派遣してくれるのか」せっかちに聞く。

 「無理ですね。協会としての規定があります。賢者さんの足は命に別状はないようですし、後日他の人に手伝ってもらって来て下さい」言いなれた言葉で魔急は返してきた。食らいつく医者は頼み込む。

 「俺との仲だろ派遣してくれよ。前の時見たいによ」医者の口を押える魔急。口を押えながら静かに言う。

 「その話はするな。どれだけ私に迷惑をかけたと思う。昇進の話が・・・もういい。医者に言っても意味がないな。これ以上話はないよ。早く連れてきな」忙しく魔急は部屋に戻っていった。二人は対策を考えるため協会を後にした。


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