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第8話:親戚一同の前で公開処刑…!?

お盆の親族の集まり


 私の実家の祖父母の家に親戚一同が集まり、

和気あいあいと歓談……のはずだった。


「茜ちゃん、巧くん。ちょっと座りなさい」


座敷の真ん中で重々しい声を上げたのは、親族の長老的存在である

叔父の勝男かつおだった。

 隣には、この前の法事でバッサリ返り討ちにした順子じゅんこ叔母さんが、

勝ち誇ったような顔で座っている。


(あぁ……順子叔母さん、勝男叔父さんに泣きついたのね)


私と巧は顔を見合わせ、静かに叔父の前へと座り直した。


「順子から聞いたぞ。

お前たち、結婚して二年になるのに寝室は別々、財布も別々、挙句の果てに

夜の営みすら一度もないそうじゃないか!」


勝男叔父さんの大声が座敷に響き渡り、他の親戚たちの会話がピタリと止まった。 座敷を包む重苦しい沈黙。好奇と憐れみの視線が一斉に私たちへと注がれる。


「そんなのは夫婦とは言わん!

男の尊厳を傷つけ、女の役割を放棄したただの不真面目な同居だ!

親族の恥晒しだぞ! 恥ずかしくないのか!」


怒号のような説教。

順子叔母さんはニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながらお茶をすすり、

周りの叔母さまたちは扇子で口元を隠しながら

「あらあら……」「やっぱり形だけの仮面夫婦なのね」

とヒソヒソと囁き合っている。


「大体だな、茜!

お前がわがままばかり言って巧くんを虐げているんじゃないのか!?

 男っていうのはな、家で温かいご飯を出されて、妻に立てられて、

夫婦の営みがあってこそ外で頑張れるんだ!

それを寝室まで別にして追い出すなんて、妻失格だぞ!」


 時代錯誤も甚だしい、コテコテの昭和的説教。

親戚総出による、見事なまでの『世間の偏見』を振りかざした公開処刑の場だ。

私はすっと背筋を伸ばし、反撃の口を開こうとした――その時。


「叔父さん、失礼ですが」


私の前にスッと出たのは、隣にいた夫の巧だった。

いつも穏やかな巧が、どこか冷ややかで力強い瞳で勝男叔父さんを

まっすぐに見つめている。


「何か勘違いされているようですが、僕の男としての尊厳は、

茜によって100%守られていますよ」


「な……何だと!?」


「僕の趣味であるゲームを尊重し、仕事で疲れた時は美味しいご飯を一緒に食べて

笑い合ってくれる。

朝は最高の睡眠をとったお互いが笑顔で『おはよう』と言える。

……僕の尊厳を傷つけようとしているのは、茜ではなく、僕たちの生活を勝手に

不幸だと決めつける外野の偏見です」


巧の静かだが通る声に、座敷が一瞬で静まり返った。


「それに、勝男叔父さん」


巧は視線を少しだけ動かし、順子叔母さんへと向けた。


「『妻が男を立てて、財布も一緒にするのが正しい』とおっしゃいますが……。

『毎晩ラブラブで財布も一本化』していた順子叔母さんのお宅が、

旦那さんの隠れリボ払いやイビキによる睡眠障害で、今まさに破綻寸前だと

伺いましたが……どちらが不真面目な夫婦なんでしょうか?」


「ぶっ……!?」


順子叔母さんが盛大にお茶を吹き出した。

勝男叔父さんも

「な……リ、リボ払いだと……!?」

と驚愕して順子叔母さんを二度見する。


「う、うちの家計の話は今関係ないでしょ!? 巧くん、なんでそれを……!」


「自分たちの理想の夫婦像を人に押し付けて憂さ晴らしをするのは、やめて

いただけますか。

僕たち安藤家は、お互いを信頼し合える『世界一の共同経営者』として、

今が人生で一番幸せですので」


巧がハッキリと言い切ると、親戚一同はぐうの音も出なくなって固まった。

叔父さんも顔を真っ赤にしたまま、二の句が継げない。


 私は隣で誇らしげに胸を張り、固まった親戚たちに深々と一礼した。

そして挨拶を述べてその場を辞退することにした。


「というわけですので、余計なお心配は無用です。

自分たちの夫婦関係を見直す方に、お時間を使ってくださいね。…ね、巧?」


「うん。行こう茜、帰り道に美味しいアイス買って帰ろう」


「そうね!」


 私たちは呆然とする親戚たちを置き去りにし、

手を繋いで堂々と座敷を後にしたのだった。


(第8話・終わり)

最後までお読みいただき、ありがとうございます

親戚一同の前での説教を、巧がバッサリ一蹴する回でした

妻のために毅然と立ち向かう巧の姿に「巧、カッコいい!」

「無事に返り討ちできてスカッとした!」と思っていただけましたら、

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