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第3話:夫視点:僕の妻が可愛くて優秀すぎる件

僕――安藤 巧(あんどう たくみ・28歳)には、世界で一番尊敬していて、大好きな妻がいる。

名前はあかね。 システムエンジニアとして働く、自立していてカッコいい女性だ。

今夜もリビングで、僕たちは背中合わせで座っている。

僕は新作RPGのレベル上げ。 茜はスマホで大好きなマンガを読んでいる。

ときどき、背中越しに「ふふっ」と茜の笑う振動が伝わってくる。

ただそれだけで、僕の心は驚くほど満たされていた。

(あぁ……今日も平和だなぁ)


「お前、マジで大丈夫なのか……?」

今日の昼休み、会社の同僚である健太けんたに、神妙な顔でそう問い詰められたのを思い出す。

「何が?」

「何が、じゃないよ! お前、奥さんと寝室別々で、夜の営みもゼロ(レス)なんだろ!? 男としての尊厳、ズタズタじゃないか……!」

健太は「男の友情」みたいな熱い瞳で、僕の肩をぽんぽんと叩いてきた。

「いいか巧。男にはな、『必要とされたい欲求』ってものがあるんだよ! 妻に拒絶されて、同じベッドにも入れないなんて、俺なら悲しくて耐えられないね!」

健太は熱弁を振るっていたが、僕は冷めた目でアイスコーヒーをすすっていた。

(拒絶って何だ……?)

そもそも、僕たちは『拒絶し合った結果』レスになったわけじゃない。

付き合っていた頃から、お互いにそういう行為への関心が薄く、結婚するときに「お互い無理して合わせるの、やめようか」と話し合って決めたのだ。

寝室を分けたのも、僕が重度のゲーマーだからだ。

「健太。僕は休日に12時間連続でゲームしたい人間なんだよ」

「おう、知ってる。重度のオタクだな」

「元カノには『ゲームと私、どっちが大事なの!?』

って怒鳴られて、ゲームの電源切られたりした」


「まあ……普通の彼女なら怒るわな」

「でもね、茜は違うんだ」

僕は遠い目をして、茜の天使のような対応を回想した。

「僕が12時間ゲームしてても、一切怒らない。 どころか、

『集中できてすごいね! お腹空いたでしょ、夕飯ピザ頼むけど何味がいい?』

って笑顔で聞いてくれるんだよ」

「神か???」

「だろ? 神なんだよ」

僕は力強く頷いた。

「僕が自分の部屋でゲームに没頭して、茜は自分の部屋で推し活を楽しんで、

お互いスッキリした状態でリビングで会う。

同じベッドで寝てイビキで起こし合うより、別々の部屋で熟睡して、

朝『おはよう!』って笑顔で挨拶する方が、100万倍幸せなんだ」

「うぐ……」

「僕にとって茜は、僕が僕のままでいられる場所をくれた、

世界でたった一人の最高のパートナーなんだよ。

男としての尊厳?

そんなものより、茜と過ごす穏やかな時間の方が遥かに大事だけど」


健太はぐうの音も出なくなったようで、

「……お前らが幸せなら、それでいいや」と呟いて引き下がっていった。


「あ、巧。ハーゲンダッツ食べよ!」

茜の声で、回想から意識が引き戻された。

茜が冷凍庫からアイスを持ってきて、スプーンを僕に差し出してくる。

「ありがと。茜、これ食べたかったやつでしょ?」

「うん! 期間限定の抹茶ナッツ! 巧、一口ちょうだい」

「はい、あーん」

「んーっ! 美味しい!!」

目を細めて幸せそうに笑う茜を見て、胸の奥がキュッと締め付けられる。

触れ合わなくたって。 同じベッドで寝なくたって。

この笑顔を一番近くで見られる権利を僕にくれた彼女を、

愛おしく思わないわけがない。

(外野は『仮面夫婦』だの『同居人』だの好き勝手言えばいいさ)

僕は茜とスプーンを突き合わせながら、心の中でフッと不敵に笑った。

(君たちがどんなに羨ましがっても、この世界一可愛くて優秀な

『共同経営者』は、絶対に誰にも譲らないけどね)


(第3話・終わり)

ご覧いただきありがとうございます

今回は夫・たくみ視点でお送りしました。


妻にベタ惚れな巧ですが、みなさんの周りにも

「一見冷えてそうだけど実は超仲良し」

なご夫婦はいらっしゃいますか?


「面白かった!」「巧、神旦那だな!」と思っていただけましたら、

ぜひ下部の【★評価】や【ブックマーク】で応援していただけると嬉しいです

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