6-2 見つかるかしら?
にゃわんが私たちへ完全に懐いたわけではない。
隠れ家から外へ出れば、二匹はすぐに起き上がり、一定の距離を取ってしまうし、近づこうとすれば、雄が身重の雌の前へ立ち守ろうとする。
姿を見せたまま逃げなくなったというだけで、触らせてくれるほど、まだ信用されてはいない。
だから私は、距離を縮めることを急がなかった。
同じ時間に種を置き、隠れ場所から静かに見守る。
しばらく、それだけを続けていた。
けれど、にゃわんたちが身近な存在になるほど、知りたいことも増えていった。
にゃわんは、どこで暮らしているのか?
陽輪花の種がない季節には、何を食べているのだろうか?
夜に活動するのか、昼に活動するのか?
どのくらい生きるのか?
雌は一度に何匹の子供を産むんだろうか?
雄と雌は、ずっと同じ相手と暮らすのか?
そして、そもそも本当に「にゃわん」という名前でよいのか‥‥‥?
いずれ、もっと慣れたら名前を付けたいが、名前を付けてしまうと愛着がわいてしまうし‥‥‥
にゃわんというのは、猫のように「にゃ」と鳴き、犬のように「わん」と鳴いたことから、私が勝手につけた呼び名だし‥‥‥
本当は、この世界のどこかですでに名前がつけられているのかもしれない。
ただ、私たちが知らないだけという可能性もおおいにある。
「オスカーは、これまでに調べたことがありますか?」
観察を終えたあと、私はオスカーに尋ねた。
「彼らについてですか?」
「はい。陽輪花と一緒に描かれた記録や、似た動物について書かれた本を見たことはありませんか?」
「詳しい記録は、見たことがございません」
オスカーは首を横へ振った。
「陽輪花の種を、森に住む何らかの動物が運んでいるという話は聞いておりました。しかし、どのような動物なのかまでは、誰も知らなかったのでございます」
「オスカーは以前から、姿を見ていたのでしょう?」
「遠くから、ほんの一瞬だけです。何か動物がいると思って目を向けたときには、草むらへ消えておりましたし‥‥‥」
よく似た動物を見た者がいたとしても、猫や犬を見間違えたのだと考えた可能性がある。
にゃわんは大きさも姿も、まったく違う生き物というほどではない。
猫にも犬にも似ているからこそ、珍しい動物だと気づかれなかったのかもしれない。
「それなら、家にある本で調べてみます」
「お嬢様。何という名前でお探しになるのですか?」
「にゃわん‥‥‥じゃだめですよね‥‥‥」
「その名前をつけたのは、お嬢様ではありませんか?」
確かに、この世界の本に『にゃわん』と書かれているはずはない。
名前が分からない動物を、名前から調べることはできなかった。
「では、見た目や習性から探しますか」
「公爵家の書庫には、古い書物が大量にございます。簡単には見つからないと思います」
午前中の勉強、午後の散歩、にゃわんたちの観察。
それらを続けながら、空いた時間に少しずつ調べることにした。
「少しずつ探せばよいのです」
一日で、見つける必要はない。本が見つからなければ、観察日記を日々つければいいだけだ。




