5-7 二匹の名前は‥‥‥
「二匹、だったのですか?俺もみたかったなぁー」
観察を終えたあと、私たちはオスカーを呼び、見たことを詳しく説明した。
オスカーは、二匹いたという話を聞いた途端、驚いたように目を見開いた。
「番だと思われます。あとから現れた一匹は、お腹が大きくなっていましたし」
「それなら、近いうちに子供が生まれるのかもしれませんね」
「オスカーは、二匹いることを知らなかったのですか?」
「私が以前見たのは、一匹だけです。もう一匹は、草原の奥から出てこなかったのでしょう」
身重であれば、普段以上に警戒心が強くなっていても不思議ではない。
番の片方だけが安全を確認し、食べ物を持ち帰っていたのだろう。
「ところで、鳴き声は聞きました?」
「最初は、猫のように『にゃあ』と鳴きました」
「猫って?」
猫はいなかったのかぁー?もっと、動物についても勉強しなければと思った。
「私が声を出して驚かせてしまったら、今度は『わん』と鳴きました」
オスカーは、ますます不思議そうな顔をした。
「‥‥‥」
「ですから、にゃわんです」
「はい?」
「本当の名前が分からないので、ひとまず『にゃわん』と呼びましょう」
我ながら、ずいぶん単純な名前だと思う。
けれど、猫とも犬ともつかない姿をして、「にゃ」と「わん」の両方で鳴くのだから、これほど分かりやすい名前もない。
「二匹とも、にゃわんと呼ぶのですか?」
「本当の名前が分かるまでは、動物の種類を表す呼び名にします。一匹ずつの名前は、もう少し違いが分かってから考えます」
今の段階では、二匹が番らしいということしか分からない。ましてや、私たちが勝手に飼ってよい動物でもないと思うし‥‥‥
にゃわんたちは、この草原と陽輪花と共に生きている。
自分たちの意思でやって来て、自分たちの意思で森へ帰っていく。
「にゃわん、ですか‥‥‥」
オスカーが、確かめるように繰り返した。
「何か問題がありますか?」
「いいえ。正式な名が分かるまでの呼び名としては、非常に分かりやすいかと」
その口元が少しだけ笑っている。
どうやら、単純すぎると思っているのは、私だけではないらしい。
それでも、ほかによい名前が思いつくまでは、にゃわんで決定だ。
猫のように『にゃ』と鳴き、犬のように『わん』と鳴く、地球にはいなかった不思議な動物。
こうして私たちは、陽輪花と共に生きる二匹を、ひとまず『にゃわん』と呼ぶことにしたのだった。




