表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢になった理由がわかりません ~王妃様の首を心配しただけなのですが~  作者: とも


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/63

3-3 お兄様のお部屋を攻略する前に

「では、本日はいかがなさいますか?」

「もちろん、今日もお掃除をするよ」

 チャチャは迷うことなく答えた。


 自室の大掃除を終えたあと、チャチャたちは二日間かけて屋敷の中を順番に掃除していた。私は、指示を出していただけ、だけれども‥‥‥

 客室をはじめ、家族が集まる居間や食堂、普段はあまり使われていない部屋まで、やり方は自室を掃除したときとほとんど同じだった。

 まずは窓を開け、部屋に溜まっていた空気を入れ替える。

 寝具や衣類、絨毯やクッションなど、外へ運び出せるものは日の当たる場所へ出した。洗えるものは洗い、洗えないものは埃を払い、素材によっては直射日光を避けて風通しのよい場所へ干す。

 この間、被っていた鬘も、毎日風に当て、しまうようにした。

 家具を運び出したあとは、普段手の届かない裏側や壁際まで丁寧に掃除する。

 長い間、動かされていなかった家具の下から埃の塊が出てくるたび、侍女たちは驚いていた。毎日きちんと掃除をしているつもりでも、重たい家具の裏側までは、なかなか手が届かなかったのだ。


 もちろん、二日間ですべてを完璧にきれいにできたわけではないし、部屋ごとに使われている布や家具が違えば、手入れの仕方も変わる。普段の仕事もあるため、侍女や使用人たちに無理をさせるわけにもいかなかった。

 それでも、大勢で役割を分けて進めたことで、屋敷の中は見違えるほど変わっていた。

 廊下を歩くたびに鼻を刺激していた、いくつもの香りが混ざった重たい空気も、少しずつ薄れている。


 残っているのは、あと二部屋だ。

 お父様の部屋と、お兄様の部屋のみ‥‥‥


 どちらも、本人の許可を得ずに物を動かすことのできない部屋である。特にお父様の執務室には、大切な書類や仕事に使う品が数多く置かれている。間違って順番を変えただけでも、仕事の邪魔になってしまうかもしれない。

 そのため、最も慎重に掃除をしなければならないお父様の部屋は、最後に残すことになっていた。

「ということで、今日はお兄様のお部屋です!」

 チャチャは元気よく宣言した。マリアネーゼの顔が、わずかに引きつる。

「‥‥‥フェリクス様のお許しは、いただいているのでしょうか?」

「まだだよ」

「‥‥‥お嬢様」

「だから、これからお願いしに行くつもり」

 勝手に部屋へ入り、何もかも外へ運び出すつもりはない。

 まずはフェリクスに話をして部屋の中を確認する。そのうえで、何を洗い、何を干し、どれほどの人手が必要なのかを考えるつもりだった。

 チャチャは椅子から立ち上がると、勢いよく扉へ向かった。

「お兄様は、今どこにいるの?」

「ご自分のお部屋にいらっしゃるはずですが‥‥‥」

「それなら、ちょうどいいわね」

 何がちょうどよいのか、マリアネーゼにはわからなかった。

 チャチャは軽い足取りで廊下へ出ると、お兄様の部屋へ向かって歩き始めた。

 その後ろを、マリアネーゼが不安そうな表情でついていく。


 二日間にわたる大掃除で、侍女たちもチャチャのやり方には慣れてきた。しかし、今日ばかりは、これまでと同じように進むとは思えなかった。

 なにしろ、これから向かうのは、流行の香水や香油を好んで集めているフェリクスの部屋なのである‥‥‥

 屋敷でも指折りの『香りの強い部屋』と言われるほどで、使用人たちの間でも有名だったようだ‥‥‥

 部屋に置かれた香炉や香料を動かすだけでも、ひと騒動起こるに違いない。

 お兄様の部屋は、自分の部屋からそれほど離れていなかった。

 ところが、その扉へ近づくにつれて、チャチャの鼻に甘く濃厚な香りが届き始めた。


「‥‥‥マリアネーゼ」

「はい」

「まだ、扉も開けていないわよね?」

「‥‥‥開いておりませんね」

 目の前の扉は、ぴたりと閉じられている。それにもかかわらず、中から染み出してくるように香りが漂っていた。

 チャチャは扉の前で足を止め、小さく息を整える。

「これは‥‥‥思っていたより、手ごわそうだね」

 チャチャは一度だけ深呼吸をした。

「でも、お兄様のお部屋も早く、気持ちよくしてあげたい」

 そう言って、扉を三度叩いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ