天を破りて・後B21
ビーツとシーナの意外なタッグは、案外安定していた。
まずふたりは面識はあれど仲間意識がない。連携なんて壊滅で、むしろ互いに邪魔をしてXタイプに果敢に攻撃を仕掛けている。そんな滅茶苦茶なふたりだが、逆にそれが知性の高いXタイプの戦略をズタズタにしたと言えるだろう。バッテリーが切れて強化装甲の硬度が低下して、一撃でも掠めればお陀仏なのに突撃してくるという、なにをしてくるかわからないパイロットこそ、強敵が組み立てた作戦を崩壊させてしまうものだ。
第三形態となり、第二形態よりスリムになったとはいえ、まだ近接戦に特化したフォルムを保っているXタイプは、咆哮を上げながらビーツとシーナに応戦している。ビーツのブラックイレイザーならまだしも、シーナが駆るライラは触れたら即死する猛毒のような効果を持っている。防御と回避を辛うじて維持していたのは大したものだ。
『あれって、気の持ちようでなんとかしてるってこと?』
ソータが問う。この世界最強のパイロットでも、ブラックイレイザーとライラという破天荒すぎるコンビを理解できなかった。いや簡単にあの頭のおかしいふたりを理解されても困るのだが。
『モチベーションが違えばパフォーマンスにも影響が出るけど………でもあれって』
『普通じゃないのはわかるよ。でもな、俺たちにとっては価値があるんだ。ふたりは意味わからないかもしれないけど───』
アークも愕然としていた。ビーツのあれほどの変貌ぶりを見るのは初めてだったからだろう。喜悦が操縦に乗っている。ビットの扱いに関しても、キレがある。
その原因がこの世界を作ったアニメのオープニングテーマ曲だと言っても、混乱するだけだ───という認識を持っていたのは、俺だけだった。
『ちょっとわかるかも』
『うん。僕、この音楽好きかも。ビーツ艦長が叫びたくなる気持ち、少しだけわかる。ふたりともリズムに乗っているわけじゃないけど、勢いがある。それは僕にも理解できる。あの勢いに乗っていけば………ソータ!』
『なんか出てきたな。止めるぞ!』
なんとソータとアークが理解を示した。全貌は掴めていないだろう。その領域については未だ茫漠としており、ビーツやシーナが夢中になるのもわかっていない。けれど、ふたりのパッションは伝わった。
掴んだものを自分のものにするべく、操縦桿を傾けて、スラスターを強めた次の瞬間。Xタイプの後方になにかが出現した。新たに2体、Xタイプに似たアンノウンが出現する。
これがXタイプ第三形態の能力か。未知数であるがゆえなにをしてくるかわからなかったが、今やっとひとつ明らかになる。
瞬時に対応するソータとアークが、ブラックイレイザーとライラの横を抜けて、出現した黒いアンノウンと戦闘を開始。加勢を阻止した。
『なるほど。第三形態は分身を使うのか。でもそれだけじゃない。腕の代わりに展開した、円形の膜にもなにか能力があるに違いない! とっととその能力も引き摺り出して、第三形態のまま終わらせるぞ!』
いよいよ大詰めだ。第四形態まであるかは不明だが、第二形態を過ぎれば倒せるというデータもある。Xタイプも余裕がないはず。ここで止めるしかない。
リヴァイヴも戦線に突入する。オールパーパスジャケットを使用。イレイザーとタキオンが阻止した分身を、背後から発射したブレードで串刺しにする。
『こいつら、分身だからコアがない! 完全に破壊するまで止まらないのか………上! 追加で3体………俺がやる!』
高圧縮ガスを体内に注入し、半身が消し飛んでも止まらない分身は手負いとなり、攻撃手段も半減する。本体はブラックイレイザーとライラが怒涛の勢いで猛攻を浴びせ、動きを留めていたので分身に次撃を叩き込もうとするも、新たに頭上から3体の分身が追加された。オールパーパスジャケットのワイヤーがそこにも飛び交う。
有線誘導兵器として運用するワイヤーとブレード。高圧縮ガスの残量は少なくなってきた。元々、一撃必殺を想定していたので連射をする機会などなかった。それ以前にビーツ戦以降、使用を固く禁じられてきたのもある。実戦データからフィードバックした改良はできなかった。
それでもアンカーは正確に分身を射抜いた。高圧縮ガスが尽きると、ブレーキで猛追し細切れにする。二度と再生しないように。
『速ぇし硬ぇな………でも、さっきよりもやり易い!』
第三形態のデメリットが露見する。
速度の向上を目指したため、第二形態よりも装甲の厚みが薄くなり、防御力や耐久力といったものが低下している。ブレーキが第二形態の時よりも深く突き刺さるのが証拠だ。
けれど第三形態は伊達ではなかった。増援を消した途端に4体が出現して迫る。
『きりがない!』
『なら一気に消し飛ばす!』
イレイザーとタキオンがリヴァイヴの横を抜けて、新たな増援に突撃する途中、イレイザーが停止しマルチプルジャケットの銃口すべてを全面に向ける。タキオンはすぐに察して横に飛び退いた。
『消え失せろおおおおおおおお!!』
イレイザーのフルバースト。近接戦特化した機体が銃火器などで火力を爆上げした、俺の夢の姿。
フルバースト。あるいはフルオープンアタック。まさに男の夢と憧れの姿。
マルチプルシールドからライフルを展開。ビームキャノンを肩に担ぎ、ハッチをすべて開いてミサイルを露出する。様々な軌跡を描き、火力を全面に集中させた一斉射撃を行った。4体の分身はビームの直撃を受けたあとミサイルが雨のように降り注ぎ、完全に焼き滅ぼされる。
『すぐに5体が出現するかもしれねぇ!』
『それもさせない! Xタイプがビーツとシーナの攻撃を捌きながらそれをやっているのなら、まずはその余裕を奪う!』
反転するイレイザー。タキオンは俺の直掩として残る。
『退け貧乳ザル!! 主人公は俺だぁああああああああああああ!!』
『馬鹿言ってんじゃねぇぞカス! サビに入る寸前に、私こそが主人公だって証明してやるんだよぉぉおおおおおお!!』
リヴァイヴを中心に、全機に「天破のグラディオス」の第2クールのオープニングテーマ曲を爆音で流しているため、ビーツとシーナはよりエキサイトしてXタイプへ攻め入った。
Xタイプは第三形態に移行したからこそ、ブラックイレイザーとライラの猛攻を防御のみならず回避に成功している。第二形態ではライラに触れられて終わりだ。ただでさえも読み辛い連携をするビーツとシーナに混乱して紙一重を見極めている。
ソータはそこに、まだ分身を管理する思考がある余裕があると瞬時に判断した。俺はその考えには至らなかった。主人公ならではの勘が働いたのか。
『シーナ、そのまま引き付けて! あとごめん! エー先輩も! あとで何度も謝るから許して!』
そこに突入したソータのイレイザーが、マルチプルジャケットをパージ。単独で推進させると、応えこそ返さなかったが、シーナはXタイプを固定。
マルチプルジャケットがXタイプの背中に衝突する寸前、ライフルで撃ち抜くと爆発を引き起こす。
Xタイプにとっても、俺たちにとっても予想外の攻撃だった。なんていうバトルセンスをしているのかと感嘆する。
サビに突入するタイミングで、ソータがすべてを掻っ攫った。有名な歌手ふたりが全力で歌い上げる爽快感と爆発力に満ちた歌詞とメロディに合わせ、自分こそ主人公であると主張するような一撃。
見事としか言いようがなかった。
やはり俺たちでは主人公になれない。
ソータこそが最強で、頂点に君臨する者なのだ。
本人には、そんな自覚など一切ないのだけど。
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誠に勝手ながらこの物語は、あと3話で完結とさせていただきます。最終話が長すぎて3週間前から執筆しておりました。現在6000文字。まだ膨れます。いや長すぎぃ!
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この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!
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