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天を破りて・後B19

『ああ、キレそう。キレてたわ。キレるわ。マジでブチギレ。今ならなんでもできそう………ほら!』


『ぱにっしゃああああああっ!!』


 体内にいるシーナの動きに連動し、右腕を上げるライラ。


 指先から火炎を放出し、球体にすると、なぜか握り込む。それで火球は消滅して───


『は?』


 俺は、あまりにも意味不明な光景に、目を疑った。本物の目ではないしな。リヴァイヴのメインカメラに視神経をリンクさせているから、多分だけど誤作動だと思うことにした。


 なぜなら、ライラが握って消滅させた火球がXタイプの眼前に出現し、衝突したのである。


 ワープだ。ライラはアンノウンが使うワープを利用し、攻撃に転じた。それこそXタイプが使用している悪魔的手段に近い。


『あははははは! なにこれぇ! ブチギレてるはずなのに面白くてたまらねぇや! ほらエースゥ! 今の私なら、こんなこともできるぞぉぉおお!!』


『くれいじー! あんど、くれいじー!』


 シーナがオーケストラなどで見る指揮者のごとく両手を振る。連動してライラも同じ動きを取ると、Xタイプの腕のワープ攻撃に晒されていた3機が、包囲網から離脱。意味不明な現象に声を上げながら、俺の目の前に現れる。遠隔でワープを行った。自分や熱以外にも移動を行えるということだ。


 それにしてもライラは意味がわかって叫んでいるのか? 


 多分………これは、アレだ。「ブラックメトロポリス」という週刊誌漫画が原作となったアニメの主人公───ではなく、その相棒の方の発言だったか? 前世では「天破のグラディオス」の前年に放送され、かなり面白かった印象。イケメンふたりが事件解決に奔走するという内容で、そりゃあもう腐女子の皆様のターゲットにされ、同人誌などではグチャグチャにされてたっけ。作中で相棒のメロが「伊達(クレイジー)と(アンド)酔狂(クレイジー)でいこうぜ」とか言ってたっけ? なんかダセェけど、妙にマッチしてた。多分だけど、とにかく超絶イケメンだから許される発言だよな。


 シーナの思考まで連携しているのか。また余計なことを覚えないか不安になる。


 目の前で爆発が発生したことで、Xタイプがまたライラを敵視する。空間の赤い粒子がザッと動いた。


『ぁあ? んな攻撃が当たるとでも思ってんのかよォッ!』


『なめんなてめぇ!』


 シーナとライラに差し向けられた、8本の腕の群れが、多数の方向からワープして襲い掛かる。が、それらが直撃する前に新たなワープホールを開いたライラが、腕を吸収して別の場所に飛ばしてしまった。


 お返しとばかりにXタイプの体の正中線に突き立つ。まったく予想外にして、Xタイプと同等の能力を得たシーナ。そのシーナの覚醒の能力がすべてライラにトレースされていた。


 それは恐ろしくもあり、そして原作になかった新たな可能性を示唆する光景でもあった。


 その美しさに、俺は涙を流しているだろう。


 なぜなら原作では、ライラは人間を愛してアンノウンを裏切ろうとするのだが、グラディオスの外にいる人間に拉致され、拷問と陵辱という吐き気を催す悪意を受けた影響で、闇堕ちしてしまった。そのせいで見境なく人間を殺し、その末に愛したグラディオスと敵対し、ソータによって倒される悲劇で幕を下ろした。


 俺が悪意を一身に受けて痛みを肩代わりし、シーナが最後までライラに付き添い愛を教えたから、ライラは自らアンノウンの姿へと戻り、人間と共闘する道を選んだ。


 その果ての姿が、これだ。シーナと同化し革新の道を示した。シーナは覚醒を得てライラに融和の道を示した。


 人間とアンノウン。互いにある意味では完成した生物として君臨し、殺し合った歴史を築くなかで、シーナとライラは手と手を携えた。人類とアンノウンに共存の未来があると教導するように。


 そんなふたりの姿が美しくないわけがない。俺は震えた。感動さえしている。


 まさに、俺が原作を破壊してでも守りたかったもののすべてが、そこにあるような。シーナとライラは体現してくれたのだ。


『チッ。やっぱしぶてぇなあ! まだ生きてやがる。直接私のイメージをぶち込んでやらねぇことには、決着も難しいってかぁ!』


 舌打ちするシーナ。その視線の先、自らの腕が正中線に突き立ったXタイプが傾いだあと、左右の手で体に埋まりかけた腕を引き抜いた。拳が埋没した痕があり、なかなか治らないところを観察するに、シーナのカウンターは無傷とはいかなかったし、初めてダメージがまともに通った反撃が成功したとわかる。


 Xタイプの様子がまた変化した。表情がないので感情こそまともに読み取れないが、どこか憤慨しているように感じたのだ。


『えっくすたいぷがね、にんげんでいえば………ちょうしにのってんじゃねぇぞくずども! ってかんじのこといってるよ!』


 こういう時、通訳がいると便利だ。ライラは俺たちの言葉を通訳してアンノウンに殺意を突きつけていたが、その逆も然りというわけだ。


 そりゃあ、これまで散々、シーナに煽られたのだから、微塵も苛つかないという方がおかしいよな。


『じゃあ………あのクソに教えてやらねぇとなぁ! テメェこそ調子こいてんじゃねぇぞカスがよぉ! ってなぁあ!』


 再び指揮者のごとく腕を振るうシーナ。半狂乱で雨乞いの儀式をする祈祷師のよう。されども古代の狂気を内包するそれよりも効果はすぐに出る。『う゛』と声が聞こえると、俺の目の前にイレイザー、タキオン、ブラックイレイザーがワープした。


 距離を開いて体勢を整えるため? いいや、覚醒を使うシーナが、そんなお優しいことはしない。


『前だけ見ろよテメェら! いいか、これからなにが来ようがXタイプの足掻きは全部封じてやるからよぉ! まずは、性懲りも無く飛ばそうとしてる、あの腕から処分してやろうぜぇ!』


 誰よりも原作に近いプロセスで覚醒を得たためか、口調が常時より荒々しくなるシーナ。


 そんなシーナが俺たちの背後にいることが、今は途轍もなく頼もしい。俺に至っては尻を拭ってくれるらしい。なんて至れり尽くせりのサービスだろう。


 宣言どおり、Xタイプは移動した俺たちに8本の腕を他方向からワープさせて差し向けるのだが、その前にライラが展開したワープホールが現れ、射出した瞬間に飲み込み、俺たちの前方100メートルほどの場所に空間を割るようなホールが現れ、Xタイプから分離した腕が飛び出した。


『エース、お前言ったよなぁ? 刺されば勝てるってよぉ。ほら刺していいぞぉ。目の前から来るのがわかってるなら、余裕だろテメェ!!』


『ったく………お前、神かよ!』


『最初から神なんだよぉ!!』


 謎テンションに突入した俺たち。


 方角がほぼ不明にして、バラバラだったタイミングで超高速の無線誘導兵器が飛び交っていたから当てられなかっただけで、方角が完全に一致し、ある程度統一されたタイミングで放たれた無線誘導兵器の迎撃など、さしたる問題ではない。


 リヴァイヴのオールパーパスジャケットから放たれたアンカーに接続されたブレードが、Xタイプから剥離した腕に次々と突き立っては高圧縮ガスを注入し内部から炸裂させていく。


 一気に6本の腕を落とすと、1本ずつソータとアークが切断。


『ッハハァ! やっぱ破壊されたら再生するってわけじゃないんだなぁ! そんならもう迷うこたぁねぇ。やっちまいなテメェらあ!』


 近接戦特化したXタイプがアドバンテージとしていた複数の腕を失った途端、シーナのワープが俺たち全員にかけられて、再び視界が開けた時にはXタイプの直前にいた。俺たち4機が包囲する絶好のポジションだった。


ブクマ、リアクションありがとうございます!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

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