↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

644/651

天を破りて・後B18

 Xタイプの腕が消えたのは、その能力にある。外的要因で切り離したのではない。まるで虚空のなかに突っ込んだかのような。


 そして、カウンターシステムのなかで見た未来視の、肉体の断片的なワープが現実のものとなる。背中の8本の腕がすべて消えた。ブラックイレイザーのダークネスジャケットによる無線誘導兵器にも似ているが、凶悪なのはワープしているので絶対に俺たちは見えないことにある。


『ビーツ!』


『わかっている!』


 ブラックイレイザーのダークネスジャケットが再び分離して直掩機となる。無線誘導兵器だ。俺もかつて無線誘導兵器そのものになったから、利便性は知っている。


 ただダークネスジャケットのそれは、赤い粒子を放出し、Xタイプのワープする方向を可視化する機能を備えている。


 本体すら囮にして攻撃を仕掛ける悪魔的戦略。


 それはなんの前兆もなく現れる。


『これは………!』


『実際に目にしてみると、ゾッとする光景だな』


 赤い粒子のなかを、なにかが泳いでいる。可視化してみると恐怖の度合いが増すが、回避確率が向上するのも否めない。


 とはいえ、完全な可視化が適っているとも言い難い。方向がわかる程度の把握。それがいつどこから飛んでくるのかまでは、俺たちにはわからないのだ。


 Xタイプによる必殺の攻撃。ソータは決死の覚悟で、イレイザーを半壊させながらも突撃してこれを撃破した。


 ならば───


『全員で突撃して、Xタイプの断片的なワープが追いつかなくなるくらいの余裕を奪い取りに行くべきか』


『待て………この動きの全貌が見えないのか? 俺たちはすでに、8本の腕が周回する円の内側にいる。下手に動けば、原作でのアークの二の舞だぞ。そしてXタイプが、俺たちに対策を講じる時間を与えるはずが、ない!』


 発言の途中で力むビーツ。


 始まった。腕をワープさせて攻撃する悪魔の手刀。


 どこからともなく空間を裂いて現れる。アークはソータの危機を救おうと庇った刹那、背後から現れたXタイプの手刀にコクピットを貫かれて死んだ。俺はそれを見たくない。


 空間が歪む。メインカメラにサーモグラフィーをリンク。熱源の移動と発生を分析するも、もうそこらが熱でいっぱいで、出現ポイントを察知することもできない。


 悪魔の手刀の回避は各々で行う。救いはノーヒントではなかったこと。ソータとアークには具体を伝えることができたし、超絶な覚醒を遂げて反応速度を上げていた。


 ビーツは疑似覚醒でなんとか対応している。アークのタキオンがヘビィガンで時折サポートしていなければ、四肢のどれかが貫通していただろう。


 一方で俺はといえば、覚醒を使えないのでカウンターシステムにより未来視を何度も酷使するしかない。反射速度には自信があるが、ソータとアークには及ばない。先程から脳内チップが熱を持ち、リモート操縦にもほんのわずかに支障が出始めた。


 俺だけが、ソータとアークとビーツから、ワンテンポだけ遅れているのである。


 覚醒を使えないことが原因だ。思弁するしかないが、理由はそれしか該当しない。


 割れた空間から現れては、割れた空間に去っていく手刀の数々。どれだけ複雑なステップを踏んでも、リヴァイヴだけが掠めてしまう。


『調子に乗りやがって………ブレードさえ突き刺せられれば、こんな腕………!』


『………クソが』


『シーナ?』


 必死になって回避運動に専念していると、ライラの感覚に頼ってすべてを任せているシーナが毒づく唸り声を耳にした。


 彼女はいつだって、自分に利益がなかったり、敵愾心があったりすると、こうして毒を吐く。今ではすっかりライラが学習してしまい、アンノウン化すると真似をして、無邪気な声で罵詈雑言を発するようになってしまった。


 シーナもまた、第二形態となったXタイプの鬱陶しいワープ攻撃にストレスを蓄積させていたのだろう。俺とシーナは、このなかで唯一覚醒を使えない。俺ならともかく、シーナは半年前まで非戦闘員だったのだから仕方ない。


 けれど………なんだろう。この感覚。


 俺はシーナの声を聞いて、ゾクリとした。


 それこそソータたちが本気を出した時に似ている。




『ド腐れ狐マスク野郎が………調子乗ってんじゃねぇぞハゲ。テメェ、私の帰る場所や仲間たちだけじゃなく、コウきゅんも殺そうとしやがったな? 果てにはアークきゅんを殺した攻撃を向けやがって。ソータきゅんが不安になるだろうが。ビーツのクソ野郎はどうでもいいけど。それにエースを集中的にいじめやがって………絶対に許さねえ。許さねえぞテメェ。クソが………クソがぁああああッ!!』




 なんていう口の悪さ。


 彼女の性格がまざまざと現れた文言。


 けれど重要なことは、そこではない。


 激昂するなんていつものことだけど、今回のはレベルが違う。


 俺がシーナにゾクッとした理由が、そこにあった。


『は? まさか、シーナ………お前………っ!』


『ワープがテメェだけの専売特許なわけ、ねぇだろうがぁあああああああああ!!』


『おま、ぅえ? ちょ───』


 先程とはまるで逆なことになる。


 Xタイプに襲われたライラを救うため、俺はXタイプに肉薄した。それが今は、無線誘導兵器とワープを組み合わせた悪魔的攻撃の最中に、シーナは暴走したように俺のリヴァイヴに突撃を仕掛けたのである。


『エー先輩! 危ない! 後ろ!』


 ソータが叫ぶ。


 レーダーが鳴り響いたのはその直後で、リヴァイヴの背後に右腕のひとつがワープして迫っていたのだ。


 俺はそれに反応できなかった。


 けれど、死を連想することもなかった。


 なぜなら、その手刀が触れる前に、シーナが操るライラが、これまで以上の敏捷力で突撃し、胸部装甲に触れていたのである。


『お゛っ?』


『エー先輩!?』


『消えただと!?』


 視界が加速する。あれはいつだったか。そう、俺の乗機が一時的にプロトタイプガリウスGだった時代。確か第1クールの第3話だったかな。Bパート終盤で、中破したサフラビオロスの近くでBタイプと交戦した際、ソータのガリウスG一号機がプロトタイプガリウスGを抱えて飛翔したのだ。


 あの時も意識がぶっ飛ぶかと思ったが、シーナが繰り出した謎の現象は次元が違った。変な声が出るくらいだった。


 驚愕するアークとビーツの声が遠ざかり、気付けば───俺は赤い粒子が漂う戦闘宙域の外にライラと共に脱出していた。


 シーナの言動を加味して分析する。


 ワープとはXタイプだけの専売特許ではない。アンノウン全体が多用する手段。


 で、あるならば、ライラもまた、それを使えても不思議ではない。



『お、お、お、ぉお! すごい。すごいよしーな。おなか、あつい! ちから………すごいちからが、くる………みなぎる………あふれるぅ………みなごろしにしてやるぅ』



 ライラはシーナと同化しているから、記憶までも読み取れるのか?


 自称「俺は悪魔ダァ」の旧劇場版の白目マッチョの方みたいな言動になってきた。マジで怖すぎる。


『お、落ち着けライラ。呑まれちゃいけない。戻って来い。で、シーナ? 今、お前になにが起きてるか………わかるか?』


『………なんか、すっげえXタイプを八つ裂きにしたいって怒りが溢れて止まらねぇんだけど』


『まぁ、それで合ってるんだけど。ほら、見てみ? お前の顔。いや、特に目な。コクピットがないから見えやすいだろ?』


『………は? え、いや………なに、これ………これって、まるで………覚醒?』


 ライラの前にブレードを差し出すと、表面に反射して映る自分の顔を見たシーナが愕然とする。自分のことなのにな。本当、どうなってやがるのか。


 そう。シーナが呆然と呟いたように、彼女は俺とは違い、覚醒の能力をこの最終決戦の終盤で手に入れてしまった。


 ふざけやがって。


 なんで俺じゃないんだよ。泣きそうだよ。


 ヤバいだろ。こんな過激派腐女子ハムスターに、過分な能力を与えちゃ。アンノウンを潰したあと、人類を自分の思想に染め上げるべく暴挙を起こしかねないってのに………!


評価、リアクションありがとうございます!

シーナまで覚醒させてしまいました。やっとここまで………あと一息です!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。