天を破りて・後B15
『なにそっちばかり見てんだよクソ野郎!』
『エー先輩に手を出すなぁああああああ!』
ソータとアークがXタイプの背後から仕掛けた。
瞬時に反転するXタイプ。2機がかりの奇襲に応戦する。さながら大人と子供のじゃれ合いに見えるくらいの手捌きだ。
なぜなら、手数が圧倒的にXタイプが増えたからだ。
計10本の腕で攻防一体を成し、隙あらば蹴り上げる。原作でもそんなスタンスだったが、やはり倍速近いアジリティを得ている。
まるで別次元のアニメ映像を見ているようだ。金髪になったマッチョキャラクターたちが飛びながら敵と殴り合う、あの凄まじい作画が展開しているような。あれを思わせるほどイレイザーとタキオンが、Xタイプと戦いを繰り広げていた。
広い宇宙空間を自在に飛び回り、武器と拳がぶつかっては火花などのエフェクトが拡散する。激しい打ち合いがこれでもかと繰り広げられる。俺のリヴァイヴでは不可能な操縦だった。ソータとアークはロボットでこれほどのことができるようになった。成長の度合いを、こんな近距離で確かめることができる。ゾクゾクした。やはりソータもアークも、原作より強くなっている。この俺が、思わず笑みを浮かべてしまうくらいに。Xタイプとうまいこと吊り合っているのが現状の救いだ。さもなくば俺たちのうち、誰かがこの時点で犠牲になっている。
『硬ぇなこいつ!』
『隙を突いても傷くらいしか付けられない!』
いくらふたりがかりとはいえ、手数では劣っている。ソータのイレイザーは長物を使うので近接戦、それも高速の剣技には向かないはずが、うまく対応できていた。それでXタイプの攻撃のほんの一瞬にも満たない間隙を突いて攻撃しているというのだから舌を巻く。
こちらの攻撃は通っているが、致命打にはならない。Xタイプの装甲の厚みもあるが、剣戟に対応しているのが第二形態であるからだ。ソータの言うように全身が妙に硬いのである。そして、だからと言って銃撃戦に持ち込もうにも、剣以上に効果が薄く、ダメージは望めない。
これがラスボス。そう簡単に倒せてしまっては盛り上がりに欠ける。だからと言って苦労することが美徳とは限らない。実際にこんな化け物と戦ってみてわかる。これまで、どんなアンノウンとも交戦すれば勝てるイメージはあったが、Xタイプだけは例外だ。どの角度からアプローチしてもリヴァイヴでは届かない。これが俺たちの原作破壊行為の最後のツケだとしても、大きすぎる。
だが、勝てないのは俺が単独であった場合だ。今の俺は、ひとりではない。
『そこぉ! ケツがガラ空きィッ!!』
シーナが叫ぶ。ライラの腕を伸ばして、宣言どおりXタイプの尻へ刺突する。が、Xタイプは背後にも目があるような俊敏な動作で躱し、反転してライラに襲い掛かる。
『逃げろシーナァ!』
『あ、ちょ、こいつ早っ………ア゛!?』
アンノウン同士の戦いは見たことがない。だが同士討ちなら先程ヒナたちが誘発させていた。
Eタイプ同士なら耐久力に個別差があり、低い個体から砕けていく。Kタイプに殴られて一気に消滅したところも。
アンノウンは通常個体も硬いのだが、その比較はこちらの通常兵器によるものばかりで、アンノウン同士という例が少ないため嫌な予感しかしなかった。
シーナとライラであっても反応できない速度で接近され、ボディブローが正中線に5連続で突き立つ。
ライラは悲鳴を上げることすらできなかった。そして問題のシーナ。ライラの体内にいて、今はパイロットスーツを着用しているが、それでも俺たちと違って衝撃に強い内部をしている───とはどうしても考えられなかった。
シーナから直接聞ける時間などなかった。俺のイメージによるものだが、実際にXタイプの攻撃を食らうと、彼女へのダメージがやっと算出される。
ライラはきっと、シーナを全力で守るだろう。Xタイプの拳が突き立っても熱を遮断したはずだ。だが内部は?
『シーナ? ………おい、シーナ。シーナ! おい! 応答しろ! ………クソッ! 離れろよテメェ! パートナーでもない野郎が、いつまでも女の体を触ってんじゃねぇッ!!』
リヴァイヴが全力で加速する。斜め上に上昇、そして急降下。メテオのようなドロップキックをXタイプの直上から放つ。
Xタイプはライラにさらに突き立てようとした左腕をガードに転用する。5本の腕が重なり盾となる。直撃するもダメージは無い。それでも構わない。リヴァイヴにどのような影響が出るかは不明だが、左腕を伸ばしてライラの腰に回し、Xタイプの拳から引き抜くように離す。
『迂闊だぞ小此木! 追撃しないのであれば、そこの貧相のない女を連れて離れていろ!』
俺がライラの回収を優先したため、先手は取ったが次撃が出せなかった。Xタイプはそれを逃すはずがない。リヴァイヴもろともライラにとどめを刺そうと右腕を振り上げ───そこに多数のビームが直撃。さらに俺の周囲を飛び回る漆黒の紅葉のような小型のメカが出現。俺の後退を支援する。
『俺を援護するたぁ、殊勝な心掛けじゃないか。褒めてやるよ楠木』
『ほざけ出来損ない! 役立たずは邪魔だ! その貧相な胸をした女の無事を確かめたら復帰しろ!』
クソみたいな言動をしているが、一応味方判定をしているシーナを気にしていたというわけか。
ダークネスジャケットから分離したビットの支援攻撃と、カットに入ったソータとアークが退路を確保。離れながらシーナたちの容態を確認する。
『シーナ! おいシーナ! ライラも! 無事なのか!? ああ、クソッ………ハルモニ! シーナのバイタルをチェックしろ───』
『うるせ………ギャンギャン、騒ぐな………』
ハルモニにシーナの状態を読み上げさせようとすると、微かに応えが返る。
ライラの胸と腹の中間辺りに収容されたシーナは、外から見ればそこまで外傷は無い。ヘルメットのバイザーが割れているが、顔に怪我をしているわけでもない。破片はライラが外に吐き出していた。
『あー………意識飛んだ。マジ痛ぇ………そういや、被弾するのって初めてかも』
『怪我は?』
『大したことはない………ライラが、守ってくれた。Xタイプのパンチも、ギリギリ届かなかったしな。………ペッ』
シーナはやっと動きながら、破損したヘルメットを脱ぐ。サーモグラフィーも兼ねていたバイザーも砕かれ、このままでは視界を確保できなかっただろう。鼻血なども溜まっていたようだ。まとめて吐き出す。やがて脱ぎ捨てられたヘルメットごとライラの体外へ排出されるだろう。
『ライラ………まだ、やれるか?』
『うん………まだ、たたかえるよ。しーなと、えーすの、ちからになれるよ』
『ん。痛かっただろうに、我慢して守ってくれてありがとな。もうちょっとだけ頑張ってくれな?』
ライラは少しだけ元気のないトーンをした声だった。相当な無茶をさせてしまった。
『悪い。ライラのことも考えず、Xタイプの攻撃を通しちまったな』
『なに言ってんだ。無力な整備士なだけだった私も、今となっちゃ、こうして主戦力の一角だろ。戦えば被弾する。覚悟はできてたさ。私も、ライラも。エース。お前、今までこんな恐怖と戦ってたんだな。すげぇよ。………Xタイプが迫った時、心臓が止まるかと思うくらいビビッた。あれが本当の戦いなんだな。ライラに触れた瞬間に、私のイメージでブチ殺してやろうかと思ったけど、まさか私をダイレクトアタックしてくるとは………ヤベェな。ガチで学習してやがる』
そう。Xタイプはライラだけでなく、シーナを狙っていた。どれだけ凶悪なのか、もうすでに理解してしまっているらしい。ライラは単体でも最終決戦仕様のIタイプやJタイプのアンノウンにも匹敵するが、シーナと同化することでKタイプでさえ瞬殺できる、ある意味で頂点に君臨した。Xタイプであってもその毒は脅威に他ならない。
だからシーナを殴り殺そうとしたのだ。ライラが守っていなければ、今ごろシーナは肉片となっていただろう。
リアクションありがとうございます!
が、頑張っているのですが………思うように筆が進みません。明日も頑張って………2回になると思います。最終回って本当に難しいですね。どんなラストになるのか、道筋は決めているのですが、肉付けや表現などで苦戦しております。
ガンダムSEED FREEDOM ZERO楽しみですね。来年ですってね。私はトゥーヘァー先輩が主人公だと思っていたのですが、キャスト表を見てびっくり! ついにシンが主人公になる時が来ましたか!
作者からのお願いです。
この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!
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