天を破りて・後B14
『ビームを使った………これってつまり』
『第一形態が、終わる! 俺たちの攻撃が効いている! このまま傲岸不遜な狐面を歪ませ、憂き目を見せてやれ!』
Xタイプは孤立無援ながら、単身で俺たちを相手にしていた。最初こそそれが罷り通ると考えていたのだろうが、隠していた能力のすべてを使うくらいまで追い込まれ、早々に第一形態を終わらせるべく変身の準備を始めたのかもしれない。
人間のように表情を歪ませることはないし、ライラのように人語を扱うこともない。そのためXタイプの思考が読めなかったが、どうやらかなり焦っているらしい。俺たちに対抗するために備えを始めたというなら、それならさらにペースアップするべきだ。もっと焦らせてやる。
『ソータ! 撃て! 撃ちまくれ!』
『わかった!』
イレイザーはマルチプルジャケットのビームキャノンとマイクロミサイルを併用してXタイプへ長距離射撃を行う。射線上にはタキオンとライラがいたが、アークは当然避けるし、シーナはその能力がなくともライラに回避を委ねるだろう。ふたつの視点がある強みだ。差し詰め、背中にも目が付いたようなイメージ。
その火線に追従するようにリヴァイヴも移動しながらショートライフルを速射する。
タキオンとブラックイレイザーも砲撃戦に切り替える。タキオンはヘビィガン、ブラックイレイザーはダークネスジャケットの両サイドから伸ばしたレールガンを放つ。
ビームと実弾が雨のように降り注ぐなかで、Xタイプは回避運動を試みるも手数でどうしても劣る。どこに逃げようが必ず誰かが直撃させる。それを繰り返す。
『これは………おい! Xタイプの背中が肥大化してるぞ!』
『もうちょっとってことだな。凶悪な羽化を手伝ってやれ!』
遠距離攻撃の手段を持たないシーナが、Xタイプの様子を分析して告げた。
背中の肥大化といえば、第二形態へ移行する最後の変化だ。
凶悪な羽化とは、まさにそのとおり。悪夢のような変身をする。だがそれにも勝たなければ、俺たちに未来はない。
と、急にXタイプが動きを止める。その瞬間をソータは見逃さなかった。
『そこ!』
Xタイプに肉薄するイレイザー。両腕のマルチプルシールドからロングブレードを展開し、一瞬の隙を突いて斬りかかる。
イレイザーは擦れ違う瞬間に、ミサイルを放った肩口に剣戟を直撃させる。ドバッと銀色の燐光が散る。
原作でも、イレイザーがロングソードでXタイプの肩口を斬りつけた。ソータの卓越した操縦技術と、ギリギリを見極める判断力により、Xタイプの猛攻を潜り抜けながら、なんとかまともな一太刀を浴びせることができたのだ。
それが悪夢の始まりだった。凶悪な羽化が開始されたのである。
『ィギヒァアアアアアアアアアア!!』
アンノウンにしては珍しく吼えるXタイプ。第一形態から変身する時もそうだった。ソータとアークに恐怖を刻むのである。
なぜXタイプの背中が肥大化したのか。ただ単に翼を広げたかった? 違う。翼のような腕を展開したかったのだ。
第一形態では到底イレイザーとタキオンをアジリティで圧倒することができない。それを察知してか、急激な変化、あるいは進化を己が身に施した結果、悪夢の化身を連想させる禍々しい姿へと変貌した。
『こ、これって………!』
アークでさえ第二形態となろうとしているXタイプに恐怖の念を抱く。
人知を超えた化け物になった。胡座をかいていた両足は降ろされ、常に持ち上げていた両腕は降ろし、そして全体的にマッシブになる。特徴的だったのは、肥大化した背中が割れて、そこから計8本の腕が生えたこと。骨格があるなら、まずそこからより戦闘的な全貌になったと評価できるだろう。
『第二形態だ。警戒しろ。こうなったXタイプには後がない。ようやく倒せるところまで来た反面、肉体の一部をワープさせて攻撃してくる。非常に読みづらい。アーク。そのパターンを読めなかったお前が、俺たちの知る世界では死ぬことになる。背後だけではない。上下を意識しろ』
ビーツめ。もっとこう………言い方というものがあるだろうに。なにも含めずにストレートに死ぬと言い放ちやがって。
『了解。それだけわかれば十分です。ビーツ艦長』
これは多分、ビーツとアークだったから通用したのか。顔見知りってレベルのソータでは通用しなかった。数年という単位で行動を共にし、少なくとも表面上くらいの人格を知っているアークだから、このストレートな物言いに苛立ちを覚えずに応えを返せたのだろう。仮に俺やソータとシーナが同じ文言を受けたら、倍返ししてただろうしな。
『そういう敵だってわかってるなら、一気に攻め落とす!』
ソータが動く。ビーツとアークの会話を聞いた上での強引な攻撃に出た。
確かに、攻撃方法がわかっているならば、警戒すべき点も知った上でなら、必要以上に怯える必要もない。
俺たちもソータに続いた。マッシブに変貌したのはわかるが、それで俺たちを止められるとは限らない。
それぞれが異なる方向、タイミングで近接戦で挑む。
ところが───
『なっ………僕たちを、この4機を止めただと!?』
このXタイプは明らかに原作より強かった。イレイザーとタキオンの連携で、怒涛連撃を繰り出したところ、後退しながらロングソードやヒートナイフを捌いたのだ。
が、このXタイプは違う。イレイザーのロングブレード、タキオンのヒートナイフ、リヴァイヴのショートブレード、ブラックイレイザーのロングソードを、伸ばした手で受け止めた。
ガリウスG、つまり量産機を超える、ワンオフの機体。それがオリジナルガリウスである。出力は桁違いで、扱うにはさらに技術が必要ときた。イレイザーはKタイプをも薙ぎ倒したというのに、こんな全長20メートルほどのアンノウンに易々と阻止されるとは、信じ難い光景である。
『化け物め………!』
ビーツが呻いた、その時。
Xタイプが、より躍動を感じさせる動作で前進する。こちらの攻撃を受け止めて阻止してもなお進むだけの膂力があった。
各機が散開する。銃弾を失うこととは違い、刃を折られてしまっては、より戦力の低下に直結するからだ。
『うっ………!?』
散開した直後のことだった。
ビーツがさらに鋭く呻くことになる。
なんとソータのイレイザーと同格の加速を可能にするブラックイレイザー目掛けてXタイプが猛追し、それを迎撃しようとした時にはもうすでに眼前にいたのだ。迎撃は間に合わない。Xはブラックイレイザーの眼前でフィギュアスケートの回転ジャンプのように旋回し、選手も真っ青になる10回転を瞬時に行うと、猛烈な加速から回し蹴りを繰り出す。ブラックイレイザーはそれをロングソードで受け止めるも、へし折られてしまう。両腕での防御に辛うじて成功するも、蹴りを受けたブラックイレイザーは流星のように遠くへシュートされた。
『こいつ………ぐっ!』
『エー先輩!』
ブラックイレイザーの損傷は、装甲が多少陥没したくらいだろう。回し蹴りを受ける瞬間、サブスラスターも用いて、さらにダメージを軽減させた。ビーツだったらそれくらいやる。無視しても問題ない。
Xタイプへ反撃に転じようとした次の瞬間、すでに移動を完了させていたXタイプがリヴァイヴの前にいた。
ブローが来る。ビーツにできて俺ができないはずがない。脳内チップのキャパシティを削りながら軌道を読む。熱を拡散させ、迫る拳に合わせて後退───若干遅れる。衝撃。吹っ飛ぶ。
『くっ………なんて重たい拳だよ。やっぱ化け物だな。こいつ』
ビーツほど吹き飛びはしなかったが500メートルくらいは飛んだ。掠めただけでもこの衝撃。まともに受ければガリウスの装甲など貫通するだろう。
ブクマ、リアクションありがとうございます!
ええと、なんかまだ続きそうです。来週………平日くらいに完結するかもしれません。今日明日で書き溜めて、完結を書き終えたらブッパするという予定です。
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