天を破りて・後B13
例え誘導弾が迫ろうと、気勢が削がれることなど決してないのだ。
むしろよくぞミサイルを撃ってくれたものだと思う。
『ビーツ!』
『わかっている!』
全機、ミサイルから逃れるために全力で飛翔する。リヴァイヴとブラックイレイザーは発砲しながらミサイルを回避した。
『高速戦闘こそ、ロボットアニメの真骨頂だよなぁああああああ!!』
大量のミサイルを避けながらハイマニューバを維持する。これができるかできないかで、腕利きのパイロットであるかどうかが決まると言っても過言ではない。ソータは絶対にできるし、アークも可能。
そして俺とビーツも、主戦力の一角を担うと判断されたのなら、なにがなんでもやり遂げなければならないだろう。
『確かにミサイルの発射と、その回避の神作画こそ華であることは認めよう。CGを駆使しても映えるが、コストと労働力が必須になるがなぁ!』
『メタいことほざいてんじゃねぇよ! とっととこの鬱陶しい棘をどうにかしやがれ!』
『言われずともやっている!』
論争になっても射撃は止めない。あえて後方に残ったリヴァイヴのショートライフルと、ブラックイレイザーの胸部に内蔵された機銃を乱射する。
弾幕によりある程度のミサイルは除去された。シーナはといえば、なんとソータのイレイザーよりも前にいる。一目散に逃げやがった。
『おいシーナ。ミサイルの除去くらい手伝えよ』
『ば、馬鹿言うんじゃねぇよ! ライラは近接戦に特化してんだ! 遠距離攻撃なんて手や足を伸ばすくらいしかできねぇし、どれだけ装甲が厚いのか怖くて試したことねぇんだよ!』
『え、マジ?』
『あ? それともなにか? ライラにミサイルぶち込んで無事かどうか実験しろってのか? それでもひとの心あんのか? ひでぇ拷問の身代わりになったくせに、えぐいこと考えるんだなぁテメェは!』
『いや別に、そこまでしろだなんて一言も言ってねぇだろ』
『じゃあライラを守りやがれよ! 戦闘シーンの神作画は私も感動したけど、実際にそれをやるくらいの技術が私にあると思ってんのか? サーカスはテメェら戦闘狂がやれや!』
過激派のくせにひよりやがって。
乱暴な言動だけれども、言わんとしていることはわかる。俺だって耐久実験だってほざきながら、アンノウン化したライラに嬉々としながら誘導弾をぶち込む趣味はない。仕方ないが、ライラのためだと思って防衛に徹する。
『退いてエー先輩!』
『え? ぅぉおおおおっ!?』
残りの誘導弾もすべて撃墜するべく、レイライトリアクターから供給されるエネルギーを武装に回そうとすると、リヴァイヴの眼前を巨大なビームが通過。ミサイル群に直撃すると、薙ぎ払う形で一掃が完了する。
ソータはこの最終決戦に挑むために、俺が考案してシーナが組み上げたマルチプルジャケットをイレイザーに背負わせていた。多数の武装を懸架することで重量が増し、イレイザーの特徴であり武器でもあった、アンノウンさえも切り裂くソニックブームを一時的に封じることになるデメリットを抱えてしまうが、それでも増設したスラスターでソータが求める水準レベルの加速を可能とし、なにより攻撃方法が3倍になるというメリットもある。
今のはIタイプでも直撃すれば無事では済まないビームキャノンだ。最初こそ不慣れそうにしていたが、もう慣れてしまったようだ。流石は世界最強のパイロット。順応も速い。
ミサイルがほぼ消滅する。Xタイプは俺たちと距離を詰められて、立て直す時間ができたとでも考えているかもしれない。だがそれは間違いだと教えてやる。
『もう一度仕掛けるぞ!』
『大丈夫。もう撃たせない』
俺が合図すると同時にタキオンが飛び出す。俺たちオリジナルガリウス部隊のなかで、唯一重荷然を背負っていないネイキッド状態だからこそ出せる初速。誰よりも身軽ゆえに、最高速度はイレイザーよりも上だ。
そんなアークに追従したのはソータ───ではない。ライラだった。
『アークのフォローは任せな!』
近接特化しているゆえに、遠距離戦闘が止むとシーナはここぞとばかりに攻勢に転じる。それがライラと組んだ強みであり、アークの末路を知っている転生者の役割だ。
『っ………任せた』
シーナに任せる他、なかったのも事実である。
この状況、誰かが誰かのフォローをしている余裕はなかった。リヴァイヴもイレイザーもブラックイレイザーも、それぞれの役割がある。シーナしか自由に動けないのだ。
『アーク! こいつの弱点は肩口の棘だ! ヒートナイフをぶっ込んでやりなぁっ!』
『了解!』
半年前は、シーナのことを「悪魔」と呼び怯えていたくせに。俺がグラディオスを強奪して去ってから、ドイツ支部でのJタイプの襲撃の際、唯一失われたガリウスG起動のためのパスコード枠の外にいたタキオンを託したことで和解したのか。
タキオンとライラ。タッグとしては意外にも悪くはない。これまでアークとシーナの因縁や、互いに隔たる意識を排したら、相性がよくなった。ライラも正しいアンノウン化をすれば高機動型になるらしく、アークのタキオンとなんら遜色のない敏捷性を発揮している。精彩を取り戻したようにも見えた。
激しく交差しながら入れ替わり、Xタイプに迫る。
『小此木。こうなれば消耗戦は無駄だ。奴の皮を一気に剥がし、次の形態にして殺すしかあるまい』
『展開的に、あの形態のまま仕留めるのは無理か。………いいだろう。奴の胡座を崩させてやる。ついて来いソータ!』
『うん!』
昂然と仕掛ける。いつまでも分析などしていらない。Xタイプに再びミサイルなど撃たせてはいけないのだ。
あの多数のミサイルは、友軍にも向かっていた。ナンバーズはうまく周囲のアンノウンを壁にして回避したが、無傷とはいかなかった。コーネリアの艦隊にも着弾し、犠牲者が出ている。早く終わらせなければ、さらに被害者が出かねない。
込み上げる瞋恚などを、グッと飲み込んで深く沈める。心はあくまでも冷静に保たなければ。冷静さを欠いた瞬間に死ぬと思えと、自らに言い聞かせる。
Xタイプはただでさえも考証が浅い。次の第二形態で終わらせなければならない。もし仮に第三形態なんてものがあれば、より俺たちが劣勢となってしまう。
止め処なく溢れる不安、緊張。浅くなる呼吸。心拍数が上がる。脳内チップのキャパシティの残量はまだ余裕があるが、次の形態で一気に使うことになるのは目に見えている。すべてが本番であることには違いないが、この第一形態と呼ぶ大仏と獣が融合した姿から変貌し、本気を出した第二形態が来るとわかっているからこそ来るプレッシャーに、精神が参りそうだった。
ラスボスを目の前にしているのだ。手を抜くわけにはいかない。辛いのはみんな同じだと、言い聞かせて鼓舞する。
タキオンとライラは高速戦闘を仕掛けていた。ミサイルを放った肩口へ、いかに正確に刃を突き立てるのかが課題であるが、Xタイプは愚鈍なくせにうまく伊那している。触れればシーナから注入される精神汚染で危機に陥ると知っているからこそ、ライラの剣戟だけは衝撃波で紙一重で回避していた。
『そろそろ………これか! アーク! シーナ!』
第一形態にはもうひとつの能力があった。砲撃である。これは本編でも使っていた。Fタイプ同様の、両腕を接続して収束したビームを発射する能力を、なんと片手で使えるのだ。
俺の合図を聞き逃さなかったタキオンとライラが、フィギュアスケートの選手のようなスピンをしてXタイプの直上から離脱する。双腕から巨大なビームが発射。合図が少しでも遅れていたら、シーナならともかく、予備知識のないアークのタキオンは半身を焼かれていたかもしれない。
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