天を破りて・後B12
俺は生きてここにいる。仲間も全員揃ってここにいる。
なんていう贅沢なのだろう。ファンとして、これだけ誇りに思うことはない。
そして俺は、この日を生涯忘れることはないだろう。
ギシリとマニュピレーターが軋む。数秒後に挑むラスボス戦に向けて、リヴァイヴも力を溜めていた。
俺にできることは限られているが、これでもオリジナルガリウスの一角だ。タキオンの後継機。ならばXタイプにもきっと対応できる。
シーナが咆哮を上げた。
ライラが通訳して、Xタイプにもこちらの闘志が伝播したのだろう。
これまで自軍を盾にふんぞり返っていた不気味なアンノウンが『ンォォォオオオオオオオッ!!』と吼える。
改めてXタイプを観察する。全長15メートル。胡座をかき、両腕を左右に広げている。頭部はこれまでのタイプとは違い、動物然としていた。どこか狐にも似ている。
これで第2形態もあるというのだから、面倒なんだけどそこはラスボス。それくらいして当然だ。同時に瞬間移動とかいう原作にないスキルも持ち合わせている。ならば、もっと奥にまだなにか、捨象とも言えるものを隠しているかもしれない。
『行くぞアークッ!!』
『ああ、ソータッ!!』
主人公とライバルだった双子が飛び出した。
左右から同時に仕掛ける。
先手は彼らに譲る。俺とビーツもテンポを遅らせて出た。
左右から迫るイレイザーとタキオンを、Xタイプは伸ばした腕をピンと張り、掌底を向ける。
『退けっ!』
途中でビーツが命令する。本当ならソータは絶対に従いたくないだろうが、転生者のひとりである事実は否定できず、アークとともに急制動をかけて全力の後退を実行。
そこにXタイプが、原作どおりの衝撃波を放つ。原作ではこの衝撃波に阻止されたイレイザーとタキオンは、遠くに突き飛ばされた。そうなる前にビーツが適切なタイミングで後退命令を出すことで、肩透かしを食らわせると同時に、すでに加速を開始したブラックイレイザーが正面から、俺のリヴァイヴが背後から接近する。
この手のひらから繰り出す衝撃波、連発は可能でこそあるが、その砲台となる腕の動きが遅く、そして背後に移動させるにも時間がかかるのだ。
ブラックイレイザーは対応されるだろうがリヴァイヴはほぼ不可能だろう。ならばと全身を右に回転することで腕を広げたまま俺たちを阻止する───かと思いきや、突然姿を消した。
『ワープか!』
『馬鹿め。俺たちを前にして、同じ手が通用するか!』
瞬間移動でブラックイレイザーとリヴァイヴの挟撃を回避したXタイプだが、それはすでに目にした。対策ができぬまま挑む俺たちではない。
俺は瞬間移動するXタイプを見て絶望したが、考えてみればワープはアンノウンの十八番である。移動について、時間を無視できるチートである。だがそのメカニズムも解明済み。
これについては掟破りが効果を発揮するだろう。熱を利用したワープに、余計な熱を与えることでワープを阻害するのだ。
ブラックイレイザーのバックパック、つまりダークネスジャケットの一部が剥離する。そして自在に飛び回る。ガンビッドのように。それが6機も。
グリップを排除した多機能ライフルのような形状をしているのがガンビッドであるが、ダークネスジャケットのそれは黒い銀杏の葉のような印象だった。
赤い粒子を撒き散らしながら俺たちの周囲を飛び回る。
『あ、見ぃっけ!』
『ぶちころぉす!』
シーナはライラのなかでバイザーをかけていた。サーモグラフィー機能があるのだろう。カイドウなら作れてもおかしくない。
熱源がより高くなった場所にXタイプが移動する。ならばこの粒子はいったい? ワープを阻害するものではないのか?
Xタイプがワープする先をいち早く掴んだシーナは、ライラを操って右腕を振り上げた。
粒子化して全身を送信しているのか、姿を現したXタイプは左の掌底で先鋭化させたライラの右腕を遠ざけるも、ライラは負けじと衝撃波のなかを進み、剣尖を突きつけんとする。ガリウスとは異なるスペックに愕然とした。
『触れたな? じゃあテメェも、肉体言語を交えて理想郷について語り合おうぜ? あ、ちなみにテメェの理想郷を聞く気はねぇから!』
酷いことを言う。なにが語り合おうだ。語る気しかないときた。
ただ、Xタイプにとっては初めて守勢に出なければならない相手だ。触れれば崩壊しかねない毒を持ち、そしてスパイとして送ったはずのライラが寝返って牙を剥く。衝撃波を放っても離れないのは、ライラもアンノウンであるためかもしれない。シーナとライラはXタイプにとっての天敵にもなり得るのだ。Xタイプはまさしく挙措を失う事態であっただろう。
『そうか。衝撃波とワープか。でもそれがわかればこっちのもんだ!』
ソータが再びXタイプに肉薄する。その背後にはアークのタキオンがいた。
俺からすれば衝撃波もワープも厄介だが、ソータにとっては簡単なことらしい。流石は世界最強のパイロット。
『オラァッ!』
マルチプルシールドから出現させたロングブレードでXタイプに剣戟を放つ。
ところがその瞬間、ライラとは衝撃波でわずかに距離を取っていたXタイプが、イレイザーのロングブレードが触れる寸前に、またもやワープした。
『………なるほど。そういうことか!』
俺はようやく理解した。ビーツが撒き散らした赤い粒子の効能について。
熱によってワープホールを自在に開閉するXタイプ含めアンノウンは、これまでどこに移動するのかまではまったくの謎であった。距離と時間を無視する瞬間移動。だがその姿をワープホールのなかに閉じ込めても、すべてを隠しきれていなかった。
ダークネスジャケットが発した赤い粒子が動く。薄くまいた粉に息を吹きかけるようなイメージ。それでどこに向かったのか、方向だけは粒子の動きで追うことができたのだ。
ワープホールの出口はサーモグラフィーで探せばいい。ここで掟破りを使っても、Xタイプは異空間に取り残されたり、出現途中だったため崩壊するワープホールとともに粉々になったりはしないだろう。
方向さえ知ることができれば、奇襲されるリスクを減らすことができる。それは例えどれだけ卑小だったとしても確かと呼べるアドバンテージである。
Xタイプはその異変にすぐに気付いて、ワープを想定よりも短く終わらせた。粒子化を再変換する途中で攻撃されれば、自らが危険に陥ると悟ったようだ。やはり知能が高い。
『ワープをやめたか。お前ら油断するなよ? Xタイプはまだ力を残しているし、俺たちも知らない能力を隠してる可能性がある。ソータ、アーク。俺ならともかく、嫌になるだろうけどビーツの指示も聞いてくれ。こういう時、ビーツは絶対に間違わない』
『………エー先輩が言うなら』
『異論ないよ』
渋々と従うことを承諾するソータ。アークはまだビーツを艦長として認めているし、すんなりと受け入れる。ちなみにシーナには特に指示はない。ライラと同化して、素体の時よりも反射神経なり向上しているだろう。元の知識も合わされば、むしろ遊撃扱いした方がより強くなる気がした。
『Xタイプが動く………むっ、これは………なんだと!?』
Xタイプの直上にいたブラックイレイザーのメインカメラで様子を観察していたビーツが驚愕する。
俺もそれを見た。Xタイプの背中から、ニュッと先鋭化した棘のようなものが生えると、一斉に射出したのだ。
『ミサイル! 各機、散開!』
ビーツが叫ぶ。
予想外の攻撃に出たXタイプ。射出した棘が加速して、俺たちに迫る。誘導弾を放つなど、もちろん原作にはない攻撃方法だった。
だが───
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