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天を破りて・後B10

 ガンビッドは、かつて俺がタキオンがロールアウトする前に使っていた、攻撃特化したドローンカメラの改修機である。


 そもそもドローンカメラは原作では登場する機会がなかった。ファンブックになんとなく記載されていた、おまけみたいな設定である。宙域に飛ばして戦況を詳しく調べるための、実況中継機の役割をしていた。


 俺は当時、そこに着目した。


 ハルモニがすべて制御していたが、パイロットが直接操縦することも可能で、しかもガリウスよりも操縦しやすいときた。だから俺でも操縦が可能で、その頃から4機を瞬時に切り替えて操ることができた。


 役割はパイロットたちのダイレクトサポートや、アンノウンに追われている民間のシャトルの護衛や誘導、友軍機も然り。さらに時が経過し、ビーム機銃を取り付けて支援攻撃を行えるまで発展。Bタイプ程度なら倒せはしないが足止めくらいならできた。


 それらのデータをフィードバックして完成したのが本編には登場しないガンビッド。ドローンカメラとしてではなく、推進と攻撃特化改造した支援機。その頃には俺に脳内チップが移植され、フルリモートで操縦できた。Cタイプなら集弾させて倒すことができる。ただ限界数はあった。4機まで。それ以上は脳への負荷が大きく、俺が倒れてしまう。


 ところが才能で限界や制限をフル無視したのが、アイリの才能。脳波拡張。


 結果、アイリは第1クール終盤の初陣で20機ものガンビッドを同時に操ることを可能にしたのだ。俺などの偽りの技術とは違う。


 そして今、アイリは30機まで拡張して脳波で操りながら、八号機を操縦している。


 それだけでも恐ろしいが、シドウまで同じ才能を有しているとは思いもしなかったんだな。


 すごかった。計60門の砲塔が一斉に動いて、HタイプだろうがIタイプだろうが蜂の巣にしているんだもんな。Hタイプは紙切れみたいな薄さをしていて、強烈な回転をすることでビームを弾くが、弱点は中央だ。ここだけは回転が仇となる。アイリもシドウも、俺の攻略法を正確にトレースし、ビームを集弾させて自壊に導いている。


『強くなったよ。アイリ。いやマジで。笑っちまうくらいさ』


『それ、褒めてます?』


『褒めるどころじゃねぇよ。今のお前、ソータに届いてる。ソータのイレイザーが相手だって苦戦を強いられるだろうよ。それくらいの領域に達してるんだ。俺なんかとは違うよ』


 困ったものだ。アイリの急激な成長に、最上級の賞賛を送ろうにも、相応しい言葉が見つからない。「素晴らしい」なんて生温い。最強の一角であることには違いないのだ。ゆえに原作でも機体が小破したが生き残った。


『隊長も。アイリと同じタイプの覚醒を使えるとは思いもしませんでした』


『そうか………やはりこれが覚醒か。直感でアイリと同じことができると考え、予備を送ってもらったらドンピシャだったな。未知なる感覚だ。アイリの考えがよくわかる。どこにガンビッドをどう飛ばし、彼女のものと衝突せずに飛翔しながら攻撃すればいいのか、手に取るようにわかる。………しかしだな、エース。お前は自分を過小評価していると思うが? お前は主力の一角だろうに』


 シドウへも相応しい賞賛が見つからず、思い付いた感想を述べると、やっと自分に発生した現象を自覚して驚きつつも喜んでいた。シドウほどの若年ではあるが往年のパイロットと同等の経験を持つ者なら、未知なる領域に突入しても、なにかと疑問に思うばかりで、すぐには喜べなかったのだろう。


 それが子供と大人の違いというものだ。子供は柔軟な思考を持っていて、新たなスキルをすべて受け入れてしまうが、大人ではまず理屈を求める傾向にある。ポジティブに考えられないのだ。他人の評価を得て自覚するケースもある。


 だからこそ、覚醒を得たのだと俺からの評価に、少しずつ興奮している様子にも思えた。


『俺は覚醒が使えません。それが違いであり、差でもあります。これでも悔しいんですよ? 覚醒は才能だ。努力では決して手に入らない』


『それでもだ。覚醒が使えないからと言って、それで終わるお前ではない。………俺はお前に感謝している。俺の理想がすべて叶ったのは、お前のお陰だ。犠牲なくここまで進めたのはお前の陰からの活躍があったからだ。お前無くして、誰の心も折れず進めただろうか? いいや、それはない。お前は、俺たちに必要な存在だったんだ。そんなお前が主力の一角を担うことに異論はない。お前が進むために覚醒を得られたなら、俺はこの力をすべて行使してお前を送る! 行けエース! ここで恩をひとつ返させろ! アイリのことは気にするな。俺が守るとソータにも伝えておけ!』


 シーナからすべて聞いて、俺の仔細を知ったシドウは、俺の憂を消してくれる。背中を押してくれる。これまで俺がそうしてきたように。


『お前がやってきたこと、そのすべてに意味がある!』


『エー先輩のお陰でソータと繋がることができました。感謝してます。いずれ結婚とか視野に入れるので、こんなところで死なないでください!』


 さらに笑みが溢れる。泣かせてくれることをホイホイと言いやがって。


 援護するつもりでここに突入したのに、逆に背中を押されてしまった。


 ガンビッドすべてが陣形を変えて、ビームを一点に集中させる。俺にそのなかを進めと示している。


『ああ、わかってる! この戦いが終わっても、死ぬつもりなんかねぇからよ!』


 リヴァイヴはビームのトンネルを突破する。アンノウンを寄せ付けないそのなかを飛ぶ。


 なんて心地よい。信頼できる仲間に支えられている瞬間を噛み締める。


 そして最後。あと壁を1枚ぶち抜けば敵陣を突破できるポジション。しかしその壁はあまりにも厚く、圧倒的存在感を発して人類を威嚇し、立ち塞がる。


 EタイプとKタイプである。グラディランド・フルブラスターの砲撃で数こそ減ったが、艦隊戦で仕留めるというセオリーを無視して、たった3機で殲滅しようとしている頭がおかしく、そして愛おしい者たちが飛び回っていた。


『本当………お前たち、すげぇよ』


『愛ゆえよぉ!』


 アイリとシドウのペアもそうだったが、継続して笑うしかない戦いがそこにあった。


 ガリウスGでEタイプを逆に圧倒している3人。ヒナとシェリーとユリン。円錐型の陣の先端にいた。


 クスドの作戦を分析すれば、そこはもっとも重要な場所となる。潰されれば後退しなければならない。それでは総崩れとなる。必ず巨体を相手にする以上、生半可な実力者では務まらない。


 それでもクスドは、あえて彼女たちを布陣した。主力であるソータが敵の首魁を叩く以上、二番手を添える。シドウ以上のパイロットとくれば………確かにそうだ。ユリンを中心とした者たち。


 本編ではとっくに離脱した3人。それが生き残った結果、秀でた能力と抜きん出た才能と、一致した目的が調和を発揮し、彼女たちをもっとも困難な敵へとぶつけても問題ないと、むしろアンノウンを殲滅する端緒ともなり得る戦果を期待されて、判断の材料となったのだろう。


 ああ、そうだ。これが俺が愛し、俺を愛してくれる女たち。


 俺が最後まで彼女たちの命を諦めなかった結果、最初に悲惨な死を迎えるはずだったヒナも、シェリーも、予想外の形で覚醒という能力を得て俺を驚かせてくれた。


 今もそう。


 ヒナの覚醒は、認識の拡張。


 シェリーの覚醒は、狙撃能力の拡張。


 そしてユリンの覚醒は、ソータと同じく神経の加速か。


 ひとつとして同じものがないからこそ、凹凸が激しく、パズルのピースのように合致するのかもしれない。


 だからこそEタイプを3機で落とすという、連合軍本部が目にすれば唖然とするような戦果を量産できるのだ。


ブクマ、リアクションありがとうございます!

今週末にブッパできるよう頑張ります!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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